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66 俺が小さいとき、巨大なものは

 鉄の扉の間の通路はかなり長かった。ということは、すごく細い隙間を俺がすごくちっちゃくなって通ってるってことなんだろうな。床も、人間の大きさならたいしてデコボコでもないんだろうけど、ミクロの世界ではかなり荒くて、石の上を走ってるみたいだ。気をつけないとつまづきそうになる。

 そしてようやく抜けたと思ったら、また目の前に巨大な怪物が! 

 思わずまた通路に逃げ込んだ。怪物は通路までは追ってこない。

 ・・・しかし、なんか見たことがある。アリみたいだな。

 そうか。俺が小さすぎるから普通のアリが巨大に見えてるのかもしれない。アリは普通に通路の前を行きすぎてしまった。ということは、敵の怪物じゃなくてただのアリなのか。アリが行きすぎたところを待って、俺は通路から飛び出して普通の大きさに戻った。

 なんだ、ほんとにアリだったんだ。

 小さな黒アリはちょろちょろと通路を行ってしまった。

 全然、怪物なんかじゃなかったんだ。でも、自分が小さいとアリなんかでも驚異なんだな。


 入り口を入ったところは大きなホールになっていた。周りはアラブ風のアーチ型の装飾が施されているけど、窓がないので明かりは入ってきておらず、天井が人工的に光っている。

 ここのどこかに日向がいるんだろう、きっと。城だけ造っておいて自分はみんなとスキー合宿に行くとは考えにくい。

 スキー合宿。みんなを集めたのは何のためだろう。

 もし日向が計画的なら、次の日に城を造るってわかってるのに、みんなを集めてバスツアーなんて企画しないよな。


 いやな予感がする。遊びに連れてってやるんじゃなかったら、人を集めたのは何のためだ。

 おそらく、みんなもこの城の中にいるんだろう、という気がする。楽しい企画はおとりで、本当はよからぬたくらみに巻き込んでるんじゃないだろうか。

 だとしたら、一刻も早く探さなくちゃ。


 一歩踏みだそうとした途端、また出た。

 ドスンドスンと巨大な奴が。ええと、俺は今、普通の人間の大きさなんだから、俺の四倍ぐらいあるってことは、こいつが巨人なんだな。さっきから大きくなったり小さくなったりしてて、ややこしい。

 えっと、今、透明化してるから、運が良ければ巨人に発見されなくてすむはず・・・。

 と思ったが、運は悪かったようだ。

「ウルリクムミ、灰をけ。敵は姿を隠している」

 はっきりとした声が命じた。日向だ。どこにいるんだ。

 巨人が命じられたとおり、ぱっとその手から灰を撒き散らした。

 ゴホゴホと咳が出て、気がつくと巨人がこっちを見下ろしていた。まずい。すごいまずい状況。灰が体について、俺の姿がなんとなく浮き出てきたんだ。

 あっと思う間に巨大な手が伸びてきて、必死でかわしたが、もう少しでつかまりそうになる。なんとかまた灰を洗い流したい。でも、ここは室内なので、さっきの八百万の神様が雨を降らせてくれても俺にはかからないんだなあ。

 どうしよう、と思いながら、ただ必死で隠れ場所のないホールを逃げていて、鉄の扉まで来て、はっと、さっきのアリのことを思い出した。

 俺が小さいとき、アリは巨大。ということは、俺が大きくなれば巨人も普通サイズになるんじゃないか。

「よし、巨大化!」 

 だんだん自信がついてきて、テレビのヒーローもののようにつぶやいて巨大化してみた。

 だんだんと、巨人と、周りのアーチ型の壁が小さくなってきた。俺が大きくなっている。これで巨人とほとんど同じ大きさだ。

 早速、手に半月刀を構えてえいやっと切りつけてみた。

 ところが、カキーン、と金属音がして半月刀ははじかれた。なんだ、こいつ。固くて金属も歯が立たないってことなのか。

「グオオオオッ!」

 という声のような轟音がして巨人が俺を殴りつけてくる。必死でよけた。こんな刀で切っても切れないような奴に殴られたら、いくら俺が巨大でもだめだ。

 どうしたらいいんだ。


――――――――――――――


読んでくださってありがとうございます。







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