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3 ハーレム候補、見つかった?

 俺の高校は近い。歩いて十五分ぐらいだ。そもそも、近くて学力が適当だからこの高校を選んだ。遠くの難関校に行くほどの頭もないし、ど田舎でないと行くところがないほど成績が悪いわけでもなかった。楽なのが一番。

 にしても、今日はなんだか行き交う生徒が少ない気がする。これも魔力のせいかな。


 なんて考えながら教室に入って、突然、思い出した。普通の登校時間なのに教室に誰も人がいないわけが。

「しまったー! 球技大会の朝練だった!」

 慌てて体操服に着替えて体育館に走る。夏休み間際のこんな時期に、レクリエーションとはいえ、球技大会なんて馬鹿げてる、と思ってたから気が緩んだ。

 

 はあはあと息を切らして体育館に滑り込むと、もうみんな練習の真っ最中だった。俺の出る種目はバスケ。別に得意だからじゃない。ただのクジだ。そして、俺が出るからといって誰も喜ばない。

 体育館を練習に使えるのは各クラス順番で、今日はせっかく本番のゴールが使えるから遅刻せずに来るように、と言われてたのに、魔神騒ぎですっかり忘れていた。

 俺はこそっと外野で待ってる中に潜り込んだ。

 悲しいと言われるかもしれないが、俺は存在感がない。とりわけ特技もないし、目立つところもないからだ。でも、こういう時は役に立つ。いなくてもばれない時もあるからだ。

「おう、おはよう」

 同じように、球技大会にあんまり燃えてない、友人の小畑おばたがそっと声をかけてくれた。

「おはよう。遅刻した、やっべえ」

「ああ、いんじゃね? まだスタメンだから」

 よかった。交代要員だから、あんまり迷惑かけてなかったみたいだ。


 「日向ひゅうがすっげえ!」

 コートの周りで歓声があがった。クラスメートの日向がゴールを決めたらしい。

「高校生でダンクとかありえねえ」

 マジか。ダンクなんて、アニメかNBAでしか見たことない。

 仲間に囲まれ、ハイタッチとかしてる日向。うーん、高校生の青春の模範みたいな奴。


 日向(ひゅうが)千歳ちとせ。成績優秀でスポーツ万能、性格も明るくて生徒会長とかやってる。学校に一人ぐらいはいる、天が二物も三物も与えたような奴。

 日向が太陽なら俺は月、じゃないな。月ってのはそれなりに存在感があるもんだ。さしずめ、俺は三等星ぐらいの目立たない星ってとこか。田舎の星空じゃ星がありすぎてどれだかよくわからず、都会の空では明るすぎる電飾にかき消される、あってもなくてもいい存在。


 まあいいや。日向に活躍しといてもらおう。別に球技大会なんて勝っても負けてもどっちだっていい。行事なんてのは、疲れないうちに適当に終わってくれればいいんだ。

 と、思ってたら出番が来てしまった。

 俺の弟は何を間違えたか中学でバスケ部のキャプテンとかやってる。なんと去年は県大会まで行ってしまったらしい。夏休みに向けて毎日猛練習だ。一度、真顔で、バスケの日本代表になりたい、とか言ったことがある。

 でも、俺はまるでだめだ。

 ピーッ!

「トラベリング」

 ほら、初歩的なミスとかするし。

「・・・ごめん」


 「はあー、いい加減にしてくんない? せっかく日向君が頑張ってくれてるってのにさ」

 隣のコートから応援に来てた女子の川原かわはら麗夏れいかに思い切り睨まれた。

 川原、顔はかなり美人だ。成績もいいし、日向の女子版って感じだ。そして、ありがちなことに二人は仲がいい。まだ、彼女ってわけでもないと聞いたことがあるが、詳しくは知らない。


 「ごめんなさい」

 もめるのは苦手だ。特に女子のこういう口達者な奴は敵に回らないうちに無罪放免していただきたい。

「そうやって、すぐ謝るってのは何も考えてないってことでしょ? 何が悪かったのかわかってるの?」

「はい、すいません」

 何が女王様の逆鱗に触れたのか、練習終わってから延々と怒られた。なんで? 俺、昨日から厄日かな。

 マンガやアニメだったら、こういう時、まあまあ、と助けに入ってくれる友人やクラスメートがいるが、俺の友達にはいない。小畑がかわいそうに、という目で見てくれたが何も言ってはくれなかった。

 サンドバッグ状態の俺に助け船を出してくれたのは、くだんの日向だ。

「いいよ、川原。在田ありただって、わざとやったわけじゃないしさ。な? これから頑張ればいいさ」

「はあ」

 いかにも模範解答出しそうな奴に模範的に助けられてもあんまり嬉しくない。贅沢なのかな。

「日向君、さっきのダンクすごかったあ。もー感動だよ」

 川原、変わり身早い。さっきの表情と全然違うだろ。なんで相手によって、こんなに麗しい顔できるかな。

「ありがとう」

 はい、どうぞ。二人でやってください。

 川原の心の巨大スクリーンが日向のアップでいっぱいになっている間に俺はそうっと退出した。


 「どう? ハーレム候補見つかった?」

 教室に向かう廊下を、クラスメートたちの後ろを歩いていたら突然声をかけられて心臓が口から飛び出しそうになった。

「まだいたのか!」

 すっかり忘れてた。てっきり教室でまいたと思っていた。

「ワタシ真面目な魔神だから、雇い主のことちゃんと見てるネ」

 そうか、ハーレム候補は知り合いから見つけるもんなのか。初めて知った。

 ってことは、川原? ・・・ありえん。

 もし俺が、いや、口が裂けても言わないけど心の中で妄想したとする。

「ぬはは! 川原麗夏、おまえを俺のハーレムに入れてやる。ありがたくかしずけ」

 川原が読心術を心得ていたとして、返事は決まっている。

「はあ? 馬鹿じゃないの? その顔でハーレムとか何考えてんの、きもっ!」

 ですねー。読心術できるの、俺の方かも。悲し。


――――――――――――――


読んでくださってありがとうございます。

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