ラララ、言えるかな~。キ・ミは言えるかな~。ラララ、言えるかな。王様の名前~!
お食事中の方にはそぐわない表現を含みます。
苦手な方はプラウザバックを。
静寂に満ちた空間に重厚な扉を押し開く音だけが響く。
両扉ともが開いた天井にまで届く巨大な入り口をくぐり抜けた先にあるのは謁見の間。つまりはこの国の王の座す場であり、王族や貴族の集うそこは正しく国そのものとも言えるだろう。
俺はわずかに帯びた警戒の視線が集まる中、紅の絨毯が敷かれた道を歩く。
そして隣を歩くビッチ姫が一度歩みを止めるのに合わせ俺も歩を止め、彼女は俺に目礼だけを返し、数段の高みにある玉座へと向かうと、王であろう壮年の男性の横に移動する。
それを合図にして王冠を戴き厳格な雰囲気を纏った王がその威厳を揮うように低い声を漏らす。
「そなたが此度の勇者であるか?」
「……はい、ターメリック=ガラムマサーラと申します。こちらの世界の礼を知らぬ故、王に対してはいささか無礼でありましょうがご容赦を」
ひっかきまわしてやるとか言っておいてなんだけど別に最初からけんか腰で挑む気は無い。そもそも、勇者召喚の物語に置ける主人公たちは最初からよくもあそこまで無遠慮になれるものである。仮にも一国の王である。いくら日本人とは言え、他国の大統領とか法王とか首相に馴れ馴れしく出来ないのと一緒で多少は猫を被るものであろう。コンビニの店員にすら敬語を使うのはある意味常識なのだ。よく分からんおっさん相手とは言えそれくらいは俺も弁えているのである。
だが、別にあのおっさん王に対する忠義だとかそういうのはないので適当に頭を下げるだけですます。膝をつくとか、そこまで自尊心も低くはないのだ。
「よい、そもそもそなたはわが国の臣民でもなければ、この世界の住人ですらないのだ。この顔合わせの場に置いてはそなたの無礼を咎める者など居らぬ、異界の勇者よ」
つまり、次からは礼儀作法覚えてきちんと礼を尽くせと。
このおっさん地味に心狭いな、うぜー。
「はっ、ありがたく」
こりゃ、協力する気失せるわー。いや、元からこいつらに組する気は無いんだけどさ。
「うむ。して勇者よ、我が国、ひいてはこの大陸が現在脅かされている現状は理解しておるな」
「なんでも、魔王なるものが復活したとか」
「そうだ。かつて初代勇者リンリン=サトウが大陸北方に封じた巨悪である。これまでも何度か魔王復活の危機はあったのだが、此度は突然の復活とその宣言により大陸国家は後手に回っているのだ。故に世界の危機と判断した我がフィファア聖王国は代々王家に伝わる勇者召喚の儀によりそなたを呼び寄せたのである。勇者ターメリックにとっては急な話であろうが、どうか我らに力添え願えないだろうか?」
ちょっと待て、初・代・勇・者! リンリン=サトウって、リンリンってアンタそれ人の名前や無い、パンダの名前や。
何というキラキラネーム! しかも確かその名前のパンダはオスの筈だ。つまり、オ・ト・コ!?
……強く生きてくれ佐藤氏。俺だけでもあんたのことは姓で呼ぼう。頑張れ佐藤、負けるな佐藤、お前はリンリンだww
「わ、――わ、私の微力が及ぶ範囲でよろしければ、よ、喜ん、で」
笑うな俺! この異世界、歴代勇者達に負け越してるんだぞ。ここで笑ったら、不審がられる。いや、デデーンって効果音鳴る! そして黒服のお仕置き部隊が現れ、俺のケツを苛め抜くのだ。 なんだこの笑ってはいけない異世界召喚!? ある意味新ジャンルだわ!?
「おお、そう言ってくれるか勇者よ。ではこの場において余、オーグスト=ヴィス=ラテーモル=ヒュージ=クモン=グラテスドトール=モミュキュリュヒュシュジュチューム=ハーザ=ラムステルド=ギューニュノ=テテテ=グラコロ=イスーム=ケンケン=キットカット=ファマス=ユヴォン=キラステグドロム=メガマク=エルポーティ=ウーチ=ショーベ=ハナミーズ=ミミクソー=キチャーイ=ジェンジェン=ヒクワー=イイカ=ゲンヤメ=ロートイィ=タイキガツ=クカナ=フィフィアが宣言する。そなた、ターメリック=ガラムマサーラを第十五代勇者と認め、これに王命により魔王征伐の任を与える!」
え! え、ちょっと待て再び! 今なんて言った、このおっさん。無駄に長いし、なんか途中モニュモニュ言ってたし、公然と排泄物の名前言ってなかった。まさかのここにもキラキラネーム? これがウ・ワ・サの天丼か~!
こんな時、どんな顔をすればいいのか分からないよ俺。笑えばいいの? 嗤っていいの!?
「その大任ッ、ゆ、勇者の名に誓い、しかと果たして御覧入れます――クッ」
殺せー、い・い・か・ら俺を殺せー!
こうして俺の異世界第一歩は名前負けと言う意味は違うがそうとしか言いようのない結果により始まったのであった。
続く、続くったら続くのである。
はい、貴方は王様の名前を言えたでしょうか?
モニュモニュしてるとことか無理ですね。
ちょっと、あまりに遊びすぎた感が強いですが、気にしないでおきましょう。アレです、オ○ーン国際マラソンとかエ○マンガ島とか世界には不思議な謎が一杯あるということで。