ARE
オッス、オラタロウ。決して男裸太郎なんて名前じゃないぞ。
そして、久しぶり。十ヶ月ぶり位かな? 俺の中の神様がちょっとあれでアレでAREだったせいで、召喚されてから一日も経って無いのに十ヶ月が過ぎていると言う素敵矛盾が発生してるんだ。
え? メタ発言は止めろ?
だが断る!! これが言いたかった!!
そんな訳で前回までのあ、ら、す、じ。
勇者があれで、魔王がアレで、みんながAREになっちゃったらしい。複雑怪奇である!!
と言うか、胸を張って威風堂々と言い放とう。
「覚えてNAIZE!!」
「……あ、あのターメリック様? 突然大声を上げてどうなされたのですか?」
俺を召喚間の間から謁見室に案内している長い通路の途中、脈絡のない発言を受けてそう聞いてくるビッチ姫。まるで俺がアレな人みたいに言うのは止めて欲しい。
「……私の世界の魔法の呪文が使えるのか少し試しただけです。驚かせてしまったようで、すみません(あっさり嘘が出てくる俺の面の皮の厚さが憎いZE!!)」
「まあ、ターメリック様の世界にも魔法が存在するのですね。今のはどういった魔法で?」
「主に為政者が使う防御魔法ですね」
ええ、魔法の呪文ですよ。
御偉いさんがよく唱えてる『責任逃れ』と言う経歴防御の高等魔法です。
「では、ターメリック様は元の世界では貴族ないし、王族だったのですか?」
「いえ、私は歴史研究の学者の卵みたいなものですね。その研究過程で知ることの多い魔法を習得しているんです。先祖に特別な血筋が流れていたとも聞きませんし」
まあ、父が考古学者でその息子である俺がある意味で卵であるのは間違いでは無いはずだ。
詭弁だがな!!(キリッ
「成る程。それで魔法の方は、」
「どうやら発動しなかったようですね。やはり世界が変わると法則が変化しているのか上手くいかないみたいです。もう少し、検証を続けてみないとはっきりしたことは分かりませんが」
「そうですか。ですが、そこまで気にすることはないかも知れませんよ」
ビッチ姫が廊下を先導しながらこちらに綺麗な笑みこぼす。胡散臭い。
「気にするなとは、何故でしょうか?」
「我が聖王国が長い歴史の中でこれまで召喚してきた勇者は14名になりますが、その全ての方が召喚以前に魔法を習得済み、未習得であっても、勇者召喚を境に特別な能力に目覚めたそうです。『勇者の祝福』と呼ばれるその力はこの世界の魔法以上に強力な力だったとか」
うへぇ、来たよ。中二設定乙ってやつだわ。
と言うか、俺もあれでアレでAREな中二能力授かっちゃうの? ちょっと勘弁して欲しいわ。
魔法とかも興味無いし。
「『勇者の祝福』、ですか。ーー因みに先代の勇者の能力はどういったものだったのでしょう。参考までに」
「14代目の勇者様は、今より約150年前に召喚されたキリヤ=コモリ様。『勇者の祝福』は『獅子王の砕き』と呼ばれ、黄金の大槌から繰り出される絶対破壊の一撃だそうです。当時、魔王復活を狙った魔人ガルギーとその軍勢との戦いでは、その力で奈落へと続くとさえ言われる大地割れを生み出し、軍勢を足止めしたとされていますね」
オオイ、先代勇者!! キリヤ君!!
やっちゃったよ。好き勝手やっちゃってるよ。能力的にもピンポイント過ぎるし、確かにその名前付けたいだろうけど、異世界にだって著作倫理は持ち込もうぜ!?
この調子だと、後13人分の話を聞くのも怖い。異世界間の時間関係は同列でないことが証明されてる以上、14人とも病持ちだろうと不思議じゃないぜ。
「では、私にもそれに類似、または匹敵する力を授かっていると言うことですか」
「はい、我々が勇者様方を召喚する大きな理由はそこにあります。ーー世界を超えた真なる勇者のみが授かることの出来る強大な力。その力をもって我が聖王国、ひいてはこの大陸の危機を何度も御救いいただいたのです。そしてどうかターメリック様、あなた様の秘めし御力でもって此度の魔王復活と言う悲劇から我等をお導き下さいませ」
ビッチ姫はそう言うと、長いスカートの裾を翻し、こちらへと優雅な動作で礼の形を取る。
そして、その背後には天井まで届く巨大な扉が鎮座していた。威厳と荘厳に満ちたそれはつまり謁見の間へと続く扉。
王の座す権威を示す場所だ。
それを見て俺は口角を上げる。
そう、ここから始まるのだ。
俺をこんなよく分からんファンタジーで中二病でAREな世界へと巻き込んだ連中をおちょくるための喜劇が。
「ーーええ、私の微力が及ぶ限りでご協力させて頂きます」
さあ、開幕の時間だ。嬢ちゃん坊ちゃん寄ってらっしゃい。
何番煎じになるか分からない物語を始めよう。
俺の戦いはまだまだ始まったばかりだぜ!!
久しぶりの投稿。
そして、物語は始まります。
決して打ち切り的なそんな感じではありません。打ち切らないですよ。打ち切りではないですよ。絶対に打ち切りませんから!!