トラッカーの涙、それは異世界への導き
数年前から異世界召喚、異世界トリップなどの物語が流行っているわけだが、もしその物語で異世界に飛ばされてしまった人間の数を調べ、総計を求めたならば何人の行方不明者、またはトッラクでひき殺された人間が存在するのだろうか?
また逆説的に一体何人のトラッカーがどれほどのトリッパーを生み出しているのか、とも興味がわく。
案外、現世での死の原因No.1であろうトラックによる交通事故とは、異世界トリップにとって切っても切り離せない密接な関係があるのではなかろうか?
でなければその後、刑務所にて臭い飯を食べるトラッカーのおっちゃん達が報われないと思うのだ。
異世界への導き手とも言えるトラッカー。
しかし、彼らは主人公をひき殺し、異世界に送りだすと、人身事故で警察に捕まり、致死罪か何かで確実に人殺しのレッテルを社会からペタリと貼り付けられてしまうのだ。
その一方で、トリッパー達の多くは苦難苦行が待ち構えていようとも、ハーレムを築き、またはモフモフモンスターと戯れ、魔法の存在に狂喜乱舞し、それなりに充実した異世界生活を送っているのである。
つまりトリッパー達には知っていて欲しいのだ。
君達の異世界での喜びも、悲しみも、感動も、その全てはトッラカー達の哀しき涙の上に築かれているのだと言うことを!!
と、まあ異世界トリップ、トラック事故バージョンにおける語られることなき裏話について力説したわけだが、何故そんなことをしているのかと言えば、俺もその異世界トリップと言うやつに引っ掛かってしまったのである。
因みに、俺はいわゆる歩いていたら足元が次元の穴だったバージョンなので、これからの異世界生活でトラッカーの影に怯える必要はない。
あえて言えば、勝ち組である! 俺としてはもうそれだけで勝ち組気分である!!
何せこれから先、俺の身にどんなことが起ころうと脳裏に逞しい肉体の男達がチラつくことはないのだ。
異世界ハーレムの最中にチラリ、異世界モンスターとのムツゴロウタイムにチラリ、魔法の詠唱中にチラリ。
なんと言う苦行!!
想像するだに恐ろしい!!
とまあ、そんな訳で俺の何番煎じになるかも分からない異世界の物語は、トラッカー達の考察と言う体して意味のない、しょうもない空想から始まったのである。
トラッカー達のことを書いて少し満足している自分がいるのが悲しいです。