3話め
終わってすぐにブライアンは部屋を出て行った。
酷い抱き方だった。
もちろんエリナは他を知らないが。
それでも、抱いてくれた。
できないという可能性も考えていた。
それなのに・・・。
行為中は涙を流さなかったエリナは静かに泣いていた。
嬉しくて。
願いが。最初で最後のエリナの願いが叶ったのだ。
エリナの幸せの全てだと思った。
慣れるもんだな。
ブライアンは自室に戻って、呆れながら思った。
結婚から一年。
週に一度のお勤めは果たせていた。
国政に関わらないこともないではなかったが、所詮は騎士あがり。
君主権は自分にはないし、お飾り以下の存在だと思う。
つまり自分の仕事は、女王の子作り。
しかし行為に励めども、結果が伴うことはなかった。
さすがに女王にはできないらしいが、自分は何度も検査されていた。
要は子種があるかどうか。
クビになっていないところを見ると、どうやら素質はあるらしい。
てことは、女王に問題あり?
女王の裸を思い浮かべたブライアンは慌てて打ち消した。
何考えてんだ、俺は。
不敬罪、不敬罪。
初夜の日。
本気で死刑を覚悟して、女王に食ってかかったし、娼婦相手にすら考えられないような抱き方をした。
以前の自分なら女性をああいうふうに扱うなんて考えられない。
女王が狂わせるのか。
いや。あんなこと言われりゃ、誰でもそうなるか。
やはり女王は女王であり、一般の常識とはかけ離れているのだろう。
それにしても翌日、お咎めがまったくないことに驚いた。
それどころか朝食の席に現れ、
「昨日はよく眠れたか」
と聞いてきたのだ。
まるで昨夜の出来事などなかったかのように。
体は辛くないのだろうか。
無体を働いたのは自分なのに、思わずそんな心配をしてしまったくらいだ。
「はい。まぁ」
俺の返答に、給仕する連中が眉をひそめるのがわかったが、
当の女王は気にする様子なく、
「そうか」
むしろ満足そうだった。
抱き方が変わったのはいつだったか。
そもそも何もしないで突っ込むことに飽きたのが最初だったかもしれない。
どうせなら楽しもう。
時間をかけて、たっぷりと抱いてやったら、女王は驚いたようだった。
部屋を出ようとした俺に
「今日は・・・どうした?」
掠れた声だった。
まだ話せるのか。足りなかったかなと思いつつ、
「どう、とは?」
「その・・・いつもと違う、から」
その時、胸に湧いた気持ちは何だったのか。
「お気に召しませんでしたか?」
久しぶりに礼をとった俺に
「す、好きにしろ」
ブランケットにくるまった女王を可愛いと思ってしまい、慌てて打ち消した。