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IRREGULAR  作者: 陸一じゅん
観劇:砂上運行特急~魔法使いと魔女と恋する吸血鬼~
21/77

夢の無い子供

 

 挿絵(By みてみん)




13.


 ビスは利き手を前に突き出した。

(―――――“具現化イメージ”)

 白い帯が結びつくように、構えた小さな掌の中で白いプラスチック状の小 銃が精製される。

(“装填イメージ”)

 がちん

 薬室に銃弾がめぐる。

(“発射イメージ”)

 ビスの指が引き金を引いた。“見えない弾丸”が、ジジの耳元を滑空していく。

(―――――おそくなった)

ジジはその一瞬の違和感を、五感全てで正確にとらえていた。

(あれは銃というもの。きんぞくの弾が、すごい速さで飛び出してくる武器。弾に当たると穴があく。“かやく”を使うから、濡れるとつかえない。弾は出たら戻れない。当たるまで止まれない。でもジジのところに来た時、ちょっとだけ“弾”が遅くなった。あれじゃあ穴は空かない。それはもう武器じゃない。なぜ? )

 ジジは素早く後ろへ跳ねる。座席を楯に、側らの壁を指でなぞった。そこには、陥没したような窪んだ傷がある。ビスの弾が被弾した場所だ。

 ジジは床に靴を脱ぎ捨てる。暗闇の中で獣のように四つん這いになり、手足で座席の間を探った。

(――――ない。“弾”がない)


 ビスの銃に、薬莢とというものは存在しない。管理局員の戦闘には、痕跡というものが残らない。


 ジジはまた跳んだ。

(――――今度は曲がった! )

 確かに避けたはずの“見えない弾丸”もまた、空中でジジの左肩目掛けて跳ねた。


 “本”の恩恵は偉大である。

 能力は強化。ありとあらゆる“力”を強化する。管理局員には欠かせない防具であり、武器である。

 管理局員の戦闘の基本は、“武器の具現化”だ。

 頭の中の強力な武器を物質的に具現化する。――――もちろん、“本”の能力が“強化”である以上、もともと持っていない“能力”は“強化”することは出来ない。しかしこの“具現化”の能力は、多かれ少なかれ、異邦人たちに備わっている能力であった。

 エリカの場合は、より魔法を強化してくれる杖であり剣。晴光は、より強力な肉体そのもの。ビスの場合は銃。

 ビスの武器は、見えない弾丸を飛ばす。発射音もなく、沈黙しながら淡々と標的を抉る。

 この弾丸の軌道は、使い手のビスにしか見えない。

「――――あっ」

 ついにジジの右の肩を、“弾”が貫いた。

 

(素早いですね)

 ジジは不格好に落下したが、すぐに起き上がって座席の後ろに隠れた。

 ビスは大きく息をついく。ビスの右の眼が、煌々と金色に光っていた。

 動く標的であろうと関係は無い。ビスの“眼”は、とっくにジジをいつでも打ち抜けるように捉えている。しかしビスは、あの子供を焦りに任せて打ちたくはなかった。

『大丈夫かい』

「―――――問題、ありま、せん」

 ジジの動きは俊敏だ。衰えを見せない。消耗しているのは、ビスのほうだった。

 その気になれば、この程度の傷は一瞬で跡形もない。

 しかしそうなると、その分エネルギーは消費する。ゲームで云う、МPだ。

 また、ビスは一時的に感覚も“強化”している。これでもう、揺れる車内でふらつくことはなくなる。

 ビスの脆弱な体での戦闘は、消耗は通常の局員よりもずっと早い。

 本である兄も、力加減が分かっているのだろう。腕の傷の治癒は、表面に薄皮がつく程度で止まる。

 肉体的に頑丈な晴光や、魔法という一芸あるエリカなら、こうはならないはずだ。

 僅かに白んできた空を見あげる。車内はまだまだ暗いが、研ぎ澄まされた視界は難なく情報を収集する。

 ゲームで例えれば、ビスのパーソナルは狙撃者。視力が物を言うけれど、疲れ目は持病と言える。若い体だというのに、肩こりが酷い。

 狭い場所で動く対象を相手にするのに、相性が悪いのはビスも同じだった。いくらかマシというだけで。


(これは悪い)

 怪力、身軽、傷つくことを厭わず、恐れ知らずにジジは飛び込んでくる。弾がかすった程度では止まらない。

 ――――いや、実際恐れを知らないのだ。

(……もしかして痛みが無いのでしょうか)

 強化された身体能力は、軽くジャンプするだけで二mは飛び退ける。体勢が無茶苦茶なくせに、当たれば粉砕骨折確実の威力の蹴りを、ビスは後ろに跳ねて避けた。

 ジジに触れるだけで、ビスの細すぎる骨は脆く崩れるだろう。ビスとしては、たっぷり距離を取りたいところだ。

 また、ジジは隠れることもうまい。ビスの攻撃のタイミングは、対象が出てくるのを待つしかない状態になっている。

(動物を相手取っている気分ですよ……)

 動物なら、いざ戦うとなったらなりふり構わず止まらない。――――飼い主が、止まれと命じない限りは。

 ビスのスタミナは、早くもイエローゾーンに突入している。


『ビス、これもしかしてヤバくない? 』

 兄が言った。語尾を持ち上げ、やけに軽薄そうに聞こえる。

「……言わないでくださいよ」

 対する弟の返事は、がちがちに硬い。

 明日はきっと、ベットで点滴コースだ。


 ……明日が無事に来ればいいのだけれど。



「……ちょっと待って、晴光。もう、いいから」

 晴光は足を止め、細い手首を放した。珍しく顔を強張らせている。

 エリカはその場で胸に手を当て、ゆっくりと深呼吸すると、顔を上げた。それはもう、いつもの凛々しい顔だ。

「行くわよ」

 先導して走り出すエリカに、晴光もほっと息をつく。


 この扉は、どうやらエリカの魔の手にはかかっていないようだった。開けた扉の先では、良く似た二人の子供が、肩を寄せ合っている。

「あの子がライラ……? 」

 エリカが眉根を寄せる。座席に座る少年の方は、確かに車掌だ。

「眠ってる」

 確認した晴光が、怪訝に首をかしげた。良く似た双子の姉弟が互いを枕に眠る情景は、絵画の様にとても微笑ましい。

「起こさないでやってね」

 元凶が忍びもせず、目の前に降り立った。

 魔法使いは相変わらず、リオンの姿をしている。

「お前が何かしたのか? 」

「ウン。願いを叶えるために」

 二度まみえた魔法使いは、一度目と違い、純真そのものに見える笑顔を浮かべた。

『今日の夕食は貴方の大好物よ』と言われたような、クリスマスにプレゼントを見つけたような、そんな幸せそのものの子供の顔だ。

 リオンの十四歳の姿には、言葉も態度も子供っぽい。

「眠って、彼らはどうなるの」

「五十年ぶりの夢を見てるんだ。まるで、生きていた時のような――――」

 魔法使いは無邪気にはしゃぐ。

「もうすぐだよ。キミたちには特別に見したげる」

 今度は、百点満点を差し出す時のような照れ笑い。

「ボク君たちのこと、なんとなく好きになったから。サービス」


 何かが激しく壊れる爆音が、晴光とエリカを貫く。

 比ではないほど、床と壁とがシェイクされ、二人は床に投げ出された。

 頭が痛くなるような耳鳴り。

 場は暗転した。



 大きく揺れた車内に、ビスは膝をついた。身を立て直しながら、視界の端でジジが天井から転げ落ちているのが見えた。

 彼もすぐにおっかなびっくり身を起こし、首を大きく振っているので、怪我は無いようだ。驚くほどタフである。

 そして次に襲う酷い耳鳴りに、ビスは頭を覆う。瞼の奥がチカチカした。

 視界が狭まってく一瞬、ジジもまた、頭を抱えて蹲っていた。



 ママ!

 ボクやったよ!

 ねぇ褒めて!



 ※※※※



 ボクはゆったりと身を起こした。頭がぼんやりとする。

 そういえばさっき酷い目にあった気がするのだけれど、それのせいだろうか。

 身体のあちこちが痛い。えーと、まず何をするんだっけ……。

 まだぼんやりとする。あんまり気分は良くは無い。

 立ち上がると、ふらりとした。瞬きを繰り返すうち、少し良くなる。

 うん、これは良い。耳も目も鼻も、ずっと良くなったようだ。少し肌寒いのは難だけど、寒さや暑さは気にしなければどうってことはない。

 まずはそう、ダルタンを助けなきゃ。

 何かおかしい気がしたけれど、それは今はいい。

 何か怖いことがある気がするけれど、気にしないことにする。

 天井に穴をあけた気がするけれど、どこだったか忘れてしまったようで見当たらない。仕方なく、新しい穴を開けて外に出た。

 外は真っ赤な暁だった。


 不思議なことに、ここだけお月様が居残ってる。

 ダルタンはお月見をしていたようだ。

 ずいぶん暴れたらしく、絨毯が剥げていたりと色々跡がある。

 ダルタンは怪訝な顔をしていたから、ボクがにっこりすると、驚いた顔をした。

「お前、ジジか? 」

「ジジ? 」

 そうか、ボクはそういう名前だったか。自分の名前を忘れるなんて、変なことだ。ちょっと怖い。自分のオッチョコチョイに笑えてくる。

「……お前は、魔法使いか」

「魔法使い? 」

 そういえばそうだった、という感じだった。ああ、そうだ。ボクは魔法使いだ。

 あれ? と思う。

 ボクは確か、願いを叶えなきゃならないんじゃなかったけ。

 誰の? 子供のだ。一番近くにいる子供。

 それは誰? この、ジジという身体の子のことだ。

 あれ?

 ……あれ?


 ※※※※


「お客さん、こんなところで寝られちゃ困りますよ」

 肩をゆすられて、エリカははっと目を覚ました。やけに良い夢を見ていた気がする。

 睡眠を趣味とするエリカにも、そう体験したことの無い上質の睡眠をとれたようだ。素晴らしい満足感。

「ふはっ、よだれ垂れてますよ! お姉さん美人なのに」

 惜しみつつも、エリカは身を起こして口元を拭う。下は毛皮の様なふさふさの何かだった。何だろう。――――絨毯だ。

 よくもまあ、こんな固いところで、と自分に呆れる。懐には、ちゃんと“本”も収まっていた。隣になぜか、晴光も気持ちよさそうに寝そべっている。目の前の少女は、まだ腹を抱えて笑っていた。

(……あれ? )

 この少女の顔は、見覚えがある。

「ライラー! 終わったならこっちを手伝ってよ。今日は若い酔っ払いが多くてさー」

 少女とそっくりの顔をした少年が顔を出した。双子か。

「早く早く」と、少女を手招いている。

「デートは良いですけど、うちをホテルにはしないでくだいね! 」

 少女は下世話なことを去り際に言って、少年の背を追っていった。勘違いも甚だしいが、不快にならないのは、彼女がとても健康的な雰囲気を振りまいていたからだろう。

 エリカはどこか釈然としないながらも、とりあえず、忌むべき惰眠を貪る晴光を蹴り飛ばした。

「――――なっ、なんだ! 」

 晴光は大げさに飛び起きて、目を擦る。「な、なんだここ……」

「さあ? 」

 エリカは肩をすくめた。そういえば、ビスがいない。

「とりあえず、隊長を探しましょ」

 晴光は半分目を閉じたまま、頷いた。


「ぎゃーん! ママー! 」

 耳をつんざくような甲高い泣き声に、ビスはのそりと目を開けた。

「……ここは」

 周囲には、べそをかく子供、積み木をする子供、乗り物のおもちゃで遊ぶ子供、ぬいぐるみを取り合う子供、ようするに子供ばかりが取巻いている。

『あっ、ビス起きた? 起きたよね? ぷぷーっ、くっくっくっ……』

 兄は何やら楽しそうに笑っているし、ビスは首を傾げ傾げ、記憶を探る。まだ近くで怪獣のように子供が泣いていた。

(……こんなに子供がいたら、魔法使いが―――――)

 ビスはハ、とフカフカのピンクの絨毯の上で立ち上がった。

(――――そうだ、魔法使い! )

 いきなり身を起こしたビスに、泣きべそをかいていた少女が、鼻水を垂らしながら目を剥いている。自分の外見に驚かれているのだろうか、と、ビスは申し訳なく思った。

 彼女はべそをかくのも忘れ、ビスを凝視している。

「……お兄ちゃん、おおきいのに迷子なのー? 」


『ぶほっ……ぶくくくく……』

 酸素不足になった兄が、腹のあたりで痙攣していた。





 そびえ立つは、堂々たる黄金の巨体。レリーフは獅子と星。

 青空を背に『特別特急リオン号』は、威風堂々と汽笛を鳴らす。

 第六部隊の面々は、その雄姿を見上げて顔を険しくした。

「なんで私たちはこんなところに……」

「起きたら駅構内で雑魚寝だもんな……隊長にいたっては、迷子センター ――――」

「出発してしまう前に、もう一度乗車しますよ」

 心なしかビスの血色がいつもより良いことに、エリカは目敏く気が付いた。


 乗車して最初に気が付いたのは、車内の変化だった。

「窓があるわ」

 装甲車としても機能していた特急には、一つも窓は無かった。それが今は、青空が演出する陽気を四角く切り取る大きな窓がある。

【出発します】

 少女の声のアナウンス。ゆっくりと走り出した景色は、どこまでも続く穏やかな田園風景を見せた。

 荒廃した砂漠はどこにもない。座席では子供を膝に乗せた母親が、笑顔で窓の外を眺めている。

 牧歌的な光景は、むしろ焦燥を駆り立てる。

 エリカが親子連れに笑顔で近づき、尋ねた。

「すいません。次に停車する駅はどちらでしょう」

 母親は快く答えた。

「ホラント駅よ」

 晴光がポケットから地図を取り出して、座席テーブルに広げる。“前”の、砂漠地帯で埋め尽くされた地図だ。

「ホラント……? どこだ」

「この地図じゃ国境も曖昧だけど……このへんね」

 エリカが指先で指す。現代で言う、オランダの位置だ。

「確か、我々が乗っていた特急も、正午にはホラント駅に停車する予定でした」

「でも、そのホラント駅周辺だけがこんなに緑豊かってことはありえません。それに、なんで私たちが正午に停車する駅で寝ていたのか」

「サッパリだな……これも魔法使いのせいっすかね? 」

 ビスは渋顔でうなる。

「原因で上げられるのは、現時点でそれしかないですね。“魔法使い”というものが、これほどまでに跡形もなく筋書きを改変できるのなら……荒廃したあの世界の状態も、説明できるかもしれません」

「でもそんな、世界を変えるくらいの存在だったんですか、あれが? 」

 “魔法”という一分野から、魔法使いの力に触れたエリカは首をかしげる。

「確かに、あの特急まるごとを操るエネルギー量はすごいです。でもあれは――――」

 エリカは言葉を切った。しばしの沈黙の後、白い手がテーブルを叩く。

「どうしたんだ、エリカ」

「―――――そうか」エリカは大きく頷いた。「……隊長、魔法使いは“呪い”をかけます」


『人間もな、頭を動かすだけでもエネルギーを使う。魔法使いは、それに使うエネルギーをちょっと拝借するんだ。それで代わりといってはなんだが、心の底の自分でもわからなかった願いでも、掘り起こして叶えてくれる』

『しかしだな、願いによっては、それだけじゃちょっと足らんこともあるんだ。そうすると魔法使いは、宿主から“大事なもの”を奪っちまうんだ。呪いをかけてな』


「魔法使いっていうシステムのプロセスは、たぶんこうです。【寄生】【乗っ取り】して、宿主の願いを認識します。そして最後に【願いの成就】です。人体のエネルギーを奪って、【願いの成就】をする。けれど、それだけではエネルギーが足らない場合、【呪い】という過程を加えて、【願いの成就】をします」

 呪い。

 その文字に付きまとう、負のイメージとその意味。

 魔女の考察に、男性陣の顔色が白くなる。管理局が最も恐れる『最悪の結果』だ。

「では、最悪の事態が起こっているかも…と」

「現地人のリオンに被害が出てるってことか? 」

 管理局が異世界人を取り締まる一番の理由は、異世界人による、現地人への被害の、最悪の前例があるからだ。

「魔法使いは、自称して子供好きです。だから恐らく子供を―――宿主を殺しはしません」

「それは、確実に? 」

「【魔法使い】が、私の知っている本当の意味での【魔法】を司る存在なのだとしたら…99%確実に」

 エリカはきっぱりと言いきった。

 彼らはそっと、息をついた。


「あの特急に乗車していた子供は、自分を含め、あとはジジ少年です」

「ライラは除外か? 」

「ライラの享年は三十六歳よ。十分大人の範疇だわ」

 晴光とエリカの目がビスに向く。


「自分は寄生されていません」

 いつになく強く、ビスは言った。


『寄生されてるやつからそう言うんだよ……』

「そんな、兄さん……」

「お兄さん、茶番は結構です。“隊長は大丈夫”と、私が保証します」

「なんで? 」

「女の勘です! 」

 エリカはさっ、と、地図を裏返してペンを走らせる。

「リオンは生きています。そしてこの特急が“リオン”である限り、たぶんまだここにいます。“データ化”で、形は無いにしても、いわゆる成仏はしていません」

「えっ、それも――――」

「そう、これも魔女の勘よ! ……いいですか、次の宿主はジジくんです。これはほぼ確定した仮説です。魔法使いは、私たちに『特別に見せてあげる』と言いました。あのオチャラケたサービス精神旺盛な子供っぽい性格からして、魔法使いは私たちをまだ監視しています――――いえ、この場合は、観察もしくは観劇と言いましょう。奴は、願いの成就を慈善活動のつもりです――――大好きなものに、幸せになってほしいんです。だから奴は、まだこの特急を“観察”しています―――――もちろん、今この時も――――――しかし、それをするには――――――できた! 」

 エリカがペンのキャップをはめる。

 テーブルいっぱいの地図の裏には、円模様と妙な文字と文様とが、雑多に描かれている。

「雑ですが、これで探します」

「魔法陣ってやつか? ……殴り書きにしても雑じゃね? 」

「いいのよ! どうせ特急は一本道だもの。前か後ろか、それさえ分かればいいわ」

 晴光がしたり顔で頷いた。

「……で、これで魔法使いを探すのか。すげーな。さすがエリカ」

「いいえ、探すのは吸血鬼ダルタンよ! 不本意なことに、私の体に奴の体液が残ってるはずだから」

「えっ、それどういう意味――――」

「こっちも効率のためには手段を択ばないってこと! 魔法使いが見ていると仮定するなら、奴らは私たちと同じ空間に居ます。そのほうが効率的ですもの。いい? 魔法を扱うっていうのはね、後にも先にも効率、効率、効率なのよ。いかに少ないエネルギーで、現象を具現するか。科学の上を行く『使える』技術でなくてはならないの。魔法とは、小さな奇跡の積み重ね。でも奇跡は、待ってたって起こらないわ。『起こすべくして起こす』。それが、魔女の業。魔法って技術。いわば【魔法使い】は、そんな【魔法】っていう技術を自動で行使するマシーンよ。マシーンと言っても、暴走しがちの、ね。」

 晴光は分かったような分からないような顔をして、「へえ」と首を傾げた。

「―――――――さぁ、行きましょう隊長! 」

 エリカはビスの背を押す。




 殴り書きの陣は、うっすらと一方を示していた。




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