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IRREGULAR  作者: 陸一じゅん
観劇:砂上運行特急~魔法使いと魔女と恋する吸血鬼~
18/77

砂上の歓談

最後にしょーもないコーナーがあります。

主に本編で語る必要のない、裏設定的なアレを解答。

挿絵(By みてみん)



 ダルタンの広げた腕の中へ、エリカの切っ先が迫る。

「はぁあぁあああ! 」

 刃はダルタンの喉仏をかすり、顎下を裂いた。次の瞬間、エリカは刃を峰に反すと、ダルタンの腹を蹴り、踏み台にして跳躍する。

「なっ―――――」

 何を、そう口にする間もなく、彼女の脚が天井を捉えた。

 ダン!

 天井を蹴り上げ、エリカはくるりと宙返りした。

 ふっと、足元の影が消える。ダルタンは総毛だった。

(―――やられた! )

 空には、丸々と太った満月が輝いている。

 彼女は消えた。

 残り香も残さず、網膜に意味深な笑みだけを残して。

 加減も無く、真横の壁を殴りつける、傷一つつかない。

 謀られた。あの結界は、戦いを有利にするものではなかった。ダルタンを閉じ込めるための檻だったのだ。

 ここはもう結界の中。現世から切り離された空間は、ダルタンの怪力を以ってしても抜け出せない。術には、術しか、対抗策が無い。

 彼女は最初から戦う気が無かった。――――いや、これが彼女の戦い方なのか。

 ダルタンはうなだれた。

「ちくしょう……確かに騙されてもいいって言ったけどよ……」

 彼女のいなくなった後の空気は、乾いている上に砂っぽい。偽物の満月は、頭上の大穴に蓋をするように、ピカピカ光っている。

 ダルタンが頭を掻きむしると、砂塵が舞った。

 夜気に吐いた息が白く立ち上る。

「くっそ……死ぬまで追いかけてやる」

 恨み言を聞く者はいなかった。

 彼女にとっては不幸なことに、吸血鬼ダルタンはこれ以降、エリカを文字通り、死ぬまで想い続けることになる。



 ※※※※



 エリカは赤い絨毯に突っ伏して、安堵の息をついた。

「うまくいって良かった……」

 人知れず、にんまりとする。

 停電から時間もたったからか、オレンジ色の非常灯がついていた。飲み物が乗ったテーブルと、糊のきいた清潔なベット、簡易だがシャワーまでついているところを見ると、貴賓車両というやつだろう。

 ぼんやりとライトアップされた室内は、少しいかがわしい雰囲気と高級感が同居している。ただの乗り物の一室ではなく、構図に計算された立派な宿泊施設だからか。

 絨毯ですら指が沈むほどの逸品なので、エリカは倒れ込んだ姿勢のまま、しばし堪能した。

『僕も安心したよ。いったいどうなることかと……何より、エリカが隊長の指示をちゃんと覚えていてくれたことに感動したな』

 エリカはやっと身を起こし、椅子に腰を下ろした。

「あらニル。これからよ」

『……まだやるつもりなの? あの男はもう放っとこうよ』

 エリカは唇を尖らせる。

「出来ない相談ってやつよ。最低でも捕縛はするわ。ここまで暴れたんだもの。被害者面は出来ないわ。実刑は免れないでしょう」

『君は自分で言ったじゃないか。災害染みた強い奴は、避けるか過ぎるのを待つのに限るって』

「だ、か、ら、今回は逃げたのよ。あいつ、絶対に追ってくるわ。プライド高そうだもの。最後まで付き合ってくれるんでしょう? 」

『……僕はこれでも、君を心配してるんだけどなぁ……いい? 一人ではもう絶対にあの男と関わっちゃ駄目だ。初対面の婦女子の腰を抱いたり、あまつ、首に噛み付いてくる男なんかとは金輪際関わらないで』

「これから隊長たちと合流するわよ」

『それは最低ラインだよ。まずは安全確保。エリカ、いい? あんな、敵の懐に飛び込んで寝首を掻くような真似はもうやめてね。あいつにヒットアンドアウェイ戦法はもう通用しないよ』

「状況が許してくれたらね」

『もう! 』

 エリカは胸ポケットから、赤い革張りの本を取り出し、テーブルの上に立てた。ちょうどA4ほどの冊子は、厚みもあって立派に直立する。

 その上に、エリカは脱いだ服をかけた。

『あのね、何事も健康が第一なんだよ。ケガや病気になったら何もできなくなるでしょう? 』

 脱ぎ捨てられたスカートの下で、本はこもった声で言う。

『若いってことは、先が長いってことなんだ。ただでさえ“万が一の危険”が“十が一”くらいの確率で降りかかる仕事なんだから、何があったっておかしくない。用心しても足りないくらいなんだからね』

「……そう年も変わらないでしょうに」

 衣擦れの音に紛れて、エリカはぼやく。

 本から覆いが取り下げられる。エリカは深緑の制服姿だった。

『まったくもう! 僕だって怒らないわけじゃないんだからね』

 またテーブルにつき、下ろしていた髪を掻き上げ、高く結い上げて、いつもの黒いリボンをかけた。

 身だしなみを整えると、早くも一仕事終わったとばかりに、エリカはニルの横に頬杖を突く。


「話は変わるけど、どうやらこの特急にいる誰かさんも、結界だとかが扱えるようなのよね」

『……さっきのぐるぐる二等車両を回ってたやつのこと? 』

「そう、それと、あの青い絨毯の部屋よ。結界っていうのはね、角と角を結んで、囲いを作る。入り口と出口は必須。実際にも囲いになるような障害物があって、閉塞感のある空間ならなお良いわ。これが私の知ってる結界の基本。たぶん、最初の結界を吸血鬼に力技で突破されたから、今度はタイミングを見計らって、あの青い絨毯の部屋に繋げて誘導したのね。――――まぁでも、私が逆にあの空間は乗っ取っちゃったけど」

『実力はそうでもない? 』

「そうね、付け焼刃っていうか……私が言うのもなんだけど、土壇場の力押しって感じだったわ。技術は無い。でも、力押しできるだけのパワーはある、って感じかしら。あとここの術者は、よっぽどこの特急自体の耐久性に自信があったのかもしれないわ。技術が足りないから、そこまで手が回らなかったって可能性もあるけれど……まぁ、普通なら厚さが十五㎝もある鉄板を、素手でぶち抜く化物がいるとは思わないわよね……」


 そこでエリカはひとしきり手足を伸ばすと、ニルを手に取り、重い腰を上げた。

 部屋を見回して、入り口付近の壁を見上げる。

「ライラ。今から隊長と合流したいの。取り次いでちょうだい」

 すぐに、どこにあるかが分からないスピーカーから答えが返ってきた。

 ノイズが酷い。

【―――あ―――――りました――――りょう――いです―――――いま―――あ、―――先と―――の、管理し――――うぃ――――】

「…あら、すぐそこね」

『気を付けてね』

 ニルが釘を刺した。

 ちっとも悪びれることなく、口の端を持ち上げて頷くと、エリカはからりとドアを引いた。



 ※※※※



「分かりました。了解です。今は、先頭の管理車両にいます」

 ライラがマイクを手放すと、晴光は小さく拳を握った。

「よかった、エリカは無事なんすね」

「彼女はうまくやったようですね……こちらも、合流したら動きましょう」

「そろそろ夜明けよ。この辺の夜明けは早いんだ、あっという間に明るくなる。そうしたら、間もなく次の駅だ。ウイルスの被害も、到着までにはもつと思うけれど……」

「………」

 ビスが無数のモニターを見上げて考え込んだ。曲げた人差し指をあごに添え、視線が床を向く、こういう時のビスの目は、普段のヌボーッとした不気味なあれとは違って、ひときわ鋭い。

「そういえば気になったんすけど、ライラはどうして俺達にこんなに良くしてくれるんだ? 」

 晴光があぐらを揺らしながら言った。

「そんなの、君たちがお客様だからさ。それが第一のボクらの存在意義だからね。あとは……」

 ライラはそこで言葉を切った。

「……ううん、なんでもない。ボクみたいな人工物が言うのもおかしいけど、“なんとなく”ってやつだよ。意味のない、感情論さ。きっと」

「……でも、そういった感覚のものって、根本にはきちんとした理由がありますよね。あなたが人工の意識だとしたらなおさら」

 思いがけないビスの言葉に、ライラははっと瞠目した。

「深く掘り下げれば、理由はあるでしょう」

「………」

 ライラは二度サンドと瞬きをすると、開きっぱなしだったクチバシを閉じて黙り込んだ。今度はこちらが黙り込む番だった。

「……貴方たちが、楽しそうって思ったのよ」

 言葉を選び選び、ライラは確かめるように言う。

「うん……珍しいなぁ、楽しそうって思ったの。だから困っていた貴方たちを見て、ちょっとヒイキしちゃった」

「なぁ、ライラって、ライラ・カンパニュラのことだろ? だったら君は、この特急開発者の娘の名前がつけられてる」

 晴光もまた、言葉少なに意味を問う。

「……ボクはライラさ。カンパニュラの名前は、本当のエイダの娘のものだよ」

 鳥の顔が、やけに人間臭く笑みを浮かべたように見えた。


「でも、でもね、ボクは」

 クチバシが開いたままライラは動きを止める。

 そのまま、いとも簡単にバランスを崩し、小鳥はころんと横に転がった。


 凍結フリーズ


 間もなく、スピーカーから明るい子供の声が流れてくる。

【駄目だよライラ。規約違反、だ】

 弾んだ声は、無邪気を装っているように、空々しく耳に届いた。

 なぜだかビスも晴光も、その場から動けなかった。いや、この状況で、動く気になれなかった。

 モニタの下に膝を抱えていた車掌――――リオン、という名のシステムは、すっくと立ち上がり、帽子を取って礼をする。

「やぁ、乗客の皆さん」

 優雅な礼をしたわりにはフランクな挨拶をして、リオンは顔いっぱいで笑いかけた。

 頭にすーっと、濃い白濁が流れ込む。緩慢になってく思考で状況を必死で追いかけるうちに、二人は指先を動かすことすら難しくなっていた。

 ふと見ると、黒い革靴を履いた足が、床に転がっていたはずの小鳥を踏みにじっている。

 通っていた暖かい血の臭気に、気が付かないはずがない。ビスはただの子供のような顔をして、ぽかんと少年を見上げた。


 リオンは首を伸ばし、にっこりと“子供ビス”の蒼白の顔を覗き込む。

「君は綺麗な目をしているんだね」

 鼻がふれるほど間近に近づいたその笑顔に、見たことも無いライラの顔と声が重なる。



 ―――――ああ、ここに悪魔がいる。



 思ったとたん――――ビスは、鋭くあがった兄の制止の声も耳をふさいで、武器を放ってしまっていた。


 パン!


 少年がのけぞってモニタにぶつかる。

 額には今しがた咲いたばかりの紅の華。

 一瞬引いたかと思われた頭の中の白い靄の濁流に、ビスは武器を床に手放し、喘ぐように可笑しな息をする。

 ―――――何かが、なにかを言っている。

 白濁が雪崩れこんでくる。もとの思考が流される。内側から破裂させられる。

(頭が痛い。もうやめて。“ぼく”はもう聞きたくない―――――)


 ここは小さな地獄だ。


 救ったのは晴光の罵声だった。

「ふざけんなバカ野郎! その汚い足をどけろ! 」

 はっ、とビスは瞠目する。太い罵声に、頭の霧が大風で吹き飛ばされたような感覚だった。

 体も動く。

 素早く銃を拾って立ち上がり二人でリオンを囲むように構えると、晴光がビスに力強く頷いた。

 確かに、リオンは頭こそモニタにぶつけたが、体は斜めに足は意地悪く赤い水たまりを踏んでいる。

 とくとく額から体液を垂れ流しながらも、リオンは上目づかいに彼らを見やる。ぬらりと身を起こしたリオンは、耳まで裂けるかという笑みを顔に布いた。

 ぞくりと背筋を震わせ、晴光は震える声で言う。

「……車掌さんがおかしくなったのも、ウイルスってやつのせいか」

「ウイルス? 確かに、ボクはウイルスだけどね」


 もう―――と、リオンの体の周りに砂を孕む風がまとわりついた。二人はじりと踵を引き、袖で顔を覆う。

「あはは」

 魔法使いの爪先が軽く床を蹴った。風に押し上げられ、笑い声を共にして砂色の頭が、黒い革靴が、天井を抜けて消えた。

 砂つぶてがぶつかってキンと耳障りな音の後、あとには痛い耳と、その鼓膜で木霊する高笑いが反響する。

 長引く耳鳴りにやっと静寂が訪れた時だった。

 ずぉぉおん……

 轟音をBGMに、車両がくらくら揺れる。

 どぉぉおおん……

 二度目。

「……なんか、近づいてきてません? 」

 嫌な予感がよぎった。

 ごぉぉおおん…

 三度目。

 がぁあああん

 四度目。


 五度目、目の前の管理車両の厚い扉が、紙塵のごとく吹っ飛んだ。

 爆風にまかれてついでに膝を崩したビスの背をみやり、晴光が声をあげる。

「隊長! 」

「隊長! 」

「ん!? 」

 今、確かに聞きなれた声と自分の声が重なったように思って、晴光は括目する。

「死んでませんか! 」

 縁起でもないことを叫んで現れた影は、右手に引きずっていた汚い布袋らしきものを放り捨てるや、跪いて白い頭を膝の上に抱え上げた。

「エリカ! 」

「エリカさん! 」

 驚愕と喜色。

 ビスはいつもの冷静さに似合わず、ばたばたとエリカの膝から起き上がって、自分より幾分広い彼女の肩を掴んだ。

 晴光はそんな二人共を、腕を広げて押しつぶすように突進する。

 短い悲鳴を上げて、三人共に団子になって倒れ込んだ。

「いっ生きてたぁ~、よかったぁ~」

「筋肉が重いのよ! この馬鹿っ」

「く、くるしい……」

 エリカが向う脛を蹴り上げても、晴光はより腕の力を強くした。


※※※※



 晴光はぎゅぅと腕を締め付けてくる。ちょうどその締め付けが胃のあたりに、米神にはエリカの肩の金具が当たり、ビスは「……ぐうっ」と呻いた。

 すん、と晴光はビスの頭の上で鼻をすする。

 ご丁寧にもこの少年は、おさめた武の癖で、間接も固めてきているようで、ちっとも動けない。

 そんな緊縛状態に、紅一点がついに爆発した。

「――――はなしなさい、っての! 」

 エリカのタイツに包まれた脚が、押さえ込む晴光の右ふくらはぎに蛇の様に巻きついて、踵の硬いヒールを器用に引っかけるや、足首の柔らかい間接部分をグリンと捻りあげる。

「あいだだだだだだだっ! ギブ! ギブ! 」

 緩んだ腕の中から、慌てて逃げるように抜け出した。晴光は涙目で、右足をさすっている。

「泣くほどの再会じゃないでしょうに」

「泣いてねーし。今のが痛かっただけだしっ」

「鼻水垂らしてたくせに……」

「ちっ、違うってあれは……」

 見慣れてきた問答に、ビスはほっと、ため息をつき、ふと怪訝に首をかしげる。


「エリカさん。あなた、一人ですか。本の気配がありませんが」

「え? あっ…」

 エリカは口に手を当てた。

「『あっ』って……なんか、ヤな予感するんだけど」

 晴光も首を引いてエリカをねめつけた。

 エリカは懐から、赤皮の表紙をした本を出す。

『ニルくん、どうしたのさ……』

 ずっと黙っていたビスの本も、これには口を出さずにいられなかったようだ。

 しかしエリカの本は、沈黙を保っている。

 エリカは曖昧に笑って、視線を逸らした。

「えへ、置いてきちゃった…」

 語尾にハートマークをつけたくなるような、可愛らしい似合わない声だった。

『なんでそうなった!? 』




 ※※※




「吸血鬼をまいたところまでは良かったんですが、扉を開けていざ、というところで廊下に出ると、そこは後方二等車両といった次第だったので、『このままでは、またグルグル回る羽目になるな』と思い、結界を正統法で破る余力はありませんし、ここは先人の知恵を拝借して物理的に扉を破ろう、ということになったんです」

 エリカは涼しい顔で、道中の苦労を語った。

(……扉をぶち破る余力はあったのか)思っても、賢明な彼らは口にはしない。

「そこで、ニルはそこそこ身を守ることはできますし、私はこれがあれば、大きな魔法を使わない限りは凌げますから、私が物理で駄目だったときの保険として後方に放置するっていう方法を取りました。それで、ここの手前で彼を見つけまして―――――」

 エリカの右手が布袋――――ではない。自分のマントにぐるぐる巻きにされた、あのハヤブサと名乗ったテロリストを指した。

「――――この特急で、私たち以外の生身の人間です。どうも、話が通じそうになかったので、こん倒させて連れてきました」

 それを人は拉致という。

 恐らく、自分たちのこのややこしい現状を説明するのが、どうしようもなく面倒臭くなっただけだ。

 そこを分かってかわからいでか、ビスは頷く。―――少なくとも晴光と本は分かっていた。

「ありがとうございました。ご苦労様です。――――しかし、ニルくんを置いてきたのは少し大胆すぎましたね」

「……後々のことを、考えなかったわけではないです」

 叱られる子供のような顔をして、エリカは言う。

「ニルとも相談しました。しかしこの身動きが鈍くなっている現状で、これから後方に向かうのは難しいと思ったんです」

「確かに―――今回は、その“魔法使い”とやらのおかげで、これからのことがまったく分からなくなっていますからね。結界というものもあります。…けれども、やはり性急な判断です」

「肝に銘じます……」

 エリカは謝らなかった。ニルなら大丈夫、という説明できない保証が彼女の中にはあるからだ。しかしやはり気は落ちるようで、萎れてうつむいた。

 頑固者だなぁ、と、彼女の一面に晴光は少し微笑ましく思いつつ、気を引き締める。

 ニルと彼女の関係は、言葉にすることは難しい。難解だが強い絆である。

 晴光は、その信頼の一割でも彼女に寄せられたかった。それには、強くなる他にない。


 ビスは隼に目を向け、しばし思考する仕草をした。

「……では、彼が今回のイレギュラーだと考えますか」

 エリカは肩をすくめた。

「それは…どうでしょう。この世界に居座っているらしい、“魔法使い”とやらのおかげで、この世界の筋書きは跡形もありませんし、このテロ自体が予想不能の事態です。だからといって、この場にいるはずがない彼が、現地人でないという確証も」

「やはりそう思いますか……どちらにしろ、もう管理局の持つ“筋書き”は、この世界では通用しませんね。我々の一番の武器の情報が使えないとなると……」


 管理局は、すべての世界の筋書きを保有し、異世界から迷い込むイレギュラー要素を監視、管理、時に保護する組織である。

 彼ら所属する第六部隊は、最も設立して日が浅く、職員も無名の若者三名と特記して頼りない。

 管理局の他の部隊――――たとえば、晴光が所属していた第四部隊などは、身一つの能力を鍛え上げた戦闘特化の部隊である。人員140名、最も大所帯の花形だ。

 しかし第六部隊においては、そのように一つを極めた者が集められているわけでなく、実にばらばらな三名が選抜されている。

 職員三名、それをサポートする“本”という、生きた能力増幅装置が三名、彼らを繋ぐかなめに選ばれたのが、この小さい肩である。

 何度も繰り返して、ビスは反芻している。

(……うまく、彼らを使わなければ)

 若い故に、彼らは時に暴走する。自分も含めて、きちんと使いこなさなければ。


 “魔法使い”は願いを叶える存在だという。

 この世界の現状の一端が、この魔法使いの仕業だとすれば、その実体無い存在に、はたして善か悪かは無いのだろうか。



 ―――――考えなければならない。

 ビスは頭が痛かった。



~車掌さんの質問解答コーナー~

ちょっと真面目な質問から、シリアスブレイカーな質問まで、訊いていないことまで答えられる限りお答えします。


Q.他の乗客はどこにいるの?

 A.トラブルのため、データ化されて避難(という名の便利収納)されています。

Q.エリカちゃんはどれくらい美人?

 A.価値観がそれぞれ違う異世界で、一定の『美人』判定をもらえるくらいの美人。場合によっては、女神レベルのスゲーッ美人。

Q.隊長はどれくらい小さい?晴光はどれくらい大きい?

 A.隊長⇒146㎝。体重は30㎏台。     

   晴光⇒190㎝台(成長中)。実は腕が長く、そこそこ腰の位置が高い(=足が長い)バランスのとれた筋肉質なイイカラダ。

   ちなみにダルタンは、晴光よりちょっと身長は低いです(晴光が『天井に頭が付く』と言っているので)が、晴光より10倍美形です。

Q.そういえばお兄さん黙ってるけど、作者忘れてない?

   A.実は半分忘れて…いませんよ。本人はそう言っています。どうや、雰囲気が仕事モードに入ったので、お兄さんは空気を読んで自粛しているようです。あと彼はシリアスが苦手。

Q.作中でちょっとメタなネタが出るのはなぜ?

 A.語り部さんの知識から出してます。彼はあれで結構テキトーなので、たまに元ネタが分かってなかったりします。ようするにその場のノリです。

Q.語り部さんって誰?

 A.佐藤幸一くん(ちゅうがくにねんせい)です。彼は実は、作中に名前を変えて、必ず存在します。それを探すもまた一興かもしれません。

Q.エリカちゃん何カップ?

  A.Dです。なお、作者の意向により、作中女性は全員がサイズが設定されています。いつでも質問してください。

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