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言霊遣いの受難の日々  作者: 春間夏
第二章 日常・夏休み・カオス
11/29

夏休み〜計画〜

執筆速度復活!!



冗談です。短いだけです、今回。


四五六を虐めてると書くのが楽ですね。ボケが一人で済みますからw



お茶漬け感覚でサラっとどうぞ。

「壱声!泊まりで何処か行こうぜ!!」


四五六がそんな事を言い出したのは、夏休みまであと3日に迫る休み時間だった。


「…え、何ですか?女性に興味を持たれないのが嫌になってコッチに走ってきたんですか?勘弁して下さいよ一二三さん」


100年に一度の大津波が来る前の引き潮くらいの勢いで四五六と距離を取りながら、フラットな口調かつ敬語で返す壱声。


「んなわけ無いだろ!?もうすぐやって来る夏休み…満喫するにはお泊まりイベントは必須だろぅが!!」


「何処の世界の話してんだお前」


「壱声。お前が見ている世界が全てじゃないぜ…」


かっこよく決めたつもりになっている四五六に、壱声は嘆息して言った。


「…何だ、お前の頭の中の世界の話か」


「ただの可哀相な子じゃん、俺!?自分の殻に篭ったりしてねぇから!!」


「だったら少しくらい篭るべきだと俺は思う」


正直、壱声としては相手にするのも怠かったのだが。まぁ聞けって!と四五六が喧しいので、仕方無く耳を貸す事にする。


「…分かった。俺が理解出来る言語で説明してくれ。2文字以内」


「ちょ」


「はい終了」


「wwwすら省かれた!?」


訂正。やっぱり聞く気の無い壱声であった。


「頼むよ〜、聞いてくれよ壱声!じゃないと首吊っちゃうぞ!?」


「おや、こんな所にピアノ線が」


「んなモンで括ったら首がパージするわ!」


「あったら良かったのにな」


「またそのパターンかよ!?」


せめて自分の目で確認してからリアクション取れば良いのに…と思った壱声だが、このままの方がイジりやすいので言わない事にした。


「大体、何だよ泊まりって。どっか遊びに行くだけならともかく」


「甘い、甘いぞ壱声!夏休みといえば、学生最大の超大型連休!かぁつ!!男女の仲を進展させるのにうってつけの期間!そんな時に皆でお泊まりというイベントを逃そうなどと、お前それでもフラグ乱立に定評のある主人公か!?」


「力説は有り難いが、そんな定評は聞いた事がねぇぞコラ」


しかし、一応。四五六の言いたい事は理解出来た。壱声は一つ溜息を吐いてから、要するに、と四五六に確認を取る。


「お前の欲望に俺を巻き込もうって事か?女子と仲良くしたいなら話す相手が間違ってんだろ」


「いや、だってさぁ…」


四五六は急にシュンとして、俯いてしまった。


「…俺が誘うと、『着替えとか覗く気でしょ』とか、『存在から下心しか感じない』とか…」


「まぁ、日頃の行いとしか言いようがないわな」


普段から変態全開の四五六が声を掛けた所で、応じる女子など居るわけが無いのだ。


「だからさ…壱声が誘ってくれると嬉しいかな〜、と思いまして」


江戸の商人みたいに両手をコネコネしながらそんな事を頼んでくる四五六に、壱声は笑顔で言った。


「成る程。よし分かった。俺が誘うのは構わないとして、何処に行くんだ?スケジュールは?予算は?まさかそのくらいは考えてあるんだよな?高校生で用意出来る旅行の予算なんて高が知れてるけど、想定は出来てるんだろ?」


「申し訳ございません」


床に額を擦り付けて土下座する四五六。壱声が思った通り、その辺は全く考えていなかったらしい。


「…ったく。思い付きに付き合わされるのは遠慮したいぞ、俺は」


「予算か…はぁ。どっかにねぇかなぁ、無料で泊まれる場所」


「そんな都合良い場所があるわけ無いだろ」


と、壱声が断言した時。壱声の横の窓が開け放たれた。


「ふむ、話は聞かせて貰ったぜ」


「うわっほぅ!?」


窓の外側からひょっこり顔を出してきた実行に、壱声は奇声を上げた。


因みに此処、しっかり2階である。


「何してんですか!いやむしろどうやってんですか!?」


「梯子という文明の利器を用いたのさ」


実行の足元を覗き込むと、確かに。アルミ製の梯子で此処まで昇ってきたらしい。

下では、植木の世話をしていた用務員が梯子を返して欲しそうに実行を見上げている…ホント、何してんだろうこの人、と壱声は頭を抱える。


「…で、こんな事までして。何なんですか」


こちらに注目してしまった壱声のクラスメイトに、呑気にヒラヒラと手を振る実行に壱声が尋ねると、含み笑いを返してきた。


「フッフッフッ…聞けばお前達、無料の宿泊施設を探しているそうな」


「…まぁ、そうですが。何ですかそのキャラ」


「まぁよいではないか。…その件、俺に任せてみないかね?」


「ま、まさか生徒会長…何か心当たりがあるんでしょうか!?」


実行の意味深な発言に、四五六が思いっ切り食いついた。


「まぁ落ち着け。此処でこのまま話すのは場所が悪い…昼休み、生徒会室に来るといい。それでは」


言うだけ言って、カカカカカカンッと高速で梯子を下っていく実行。


「…じ、自由過ぎる…」


通り雨に見舞われたようなぐったり感に襲われる壱声を他所に、「生徒会長が味方…う、うおぉ!?これって無敵なのでは!?」とか言いながらテンションが振り切っている四五六。


…喧しかったので、とりあえず一発殴っておく壱声だった。


昼休みになると、早速四五六がテンションそのままに話し掛けてきた。


「さぁ壱声!生徒会室に今すぐ行こうぜ!俺ぁもう待ち切れねぇよぉ!」


「分かった、分かったからまず息を止めろ」


「おぅ!………………………ぷはぁ!いや何で!?」


律儀に10秒も息を止める辺り、ノリが良いというか何と言うか。


「五月蝿かったからつい、な。少しは落ち着けよ」


固まった背骨を伸ばすように体を反らして、壱声は立ち上がった。


「…つぅわけで、今日は騒がしくなるからな。みなもは別の場所で飯食った方が良いぞ」


「…ん、分かった」


近くで四五六が騒いでいたのを聞いていたみなもは壱声に頷くと、女子のグループに混じっていく。


「さて、と…んじゃ、会長の話を聞きに行きますかね」


「おぅ!…い、今から興奮してきた…」


「落ち着けよ。まずは心臓を止めろ」


「おぅ…いや無理だわ!せめて息までにしてくんねぇかな!?」


結局騒がしいままの四五六を連れて、壱声は生徒会室に向かう。


「…にしても、会長の思い付きか…どんな事を言い出すつもりなんだか」


実行が絡むと嫌な予感がしてならない壱声は苦笑を漏らすが、四五六は対照的に目を期待で一杯にしている。


「いやぁ、あの生徒会長の思い付きだろ?メチャクチャ楽しみだぜ」


「…まぁ、楽しみなのは確かだけどな。まともじゃない気がしてならないんだよなぁ」


と言うより、実行が考える手段がまともな筈が無い。まともな筈が無い(大事な事なので)。


「壱声…重要なのはまともかどうかじゃない。面白いかどうかだ」


「…成る程、お前と会長はベクトルが同じなんだな。格が違うだけで」


「止せよ、照れるぜ」


「無論、お前が格下だからな?」


「照れるぜ」


「どういう事!?」


四五六はキラキラしたオーラで髪を掻き上げている。意味が分からないのでそれ以上は踏み込まない事にした壱声は、ひたすら生徒会室を目指し歩き続けた。


「…壱声。ツッコんでくれないと寂しいんだけど」


「そうか。良い医者は知らんから自分で探せ」


「紹介すらしてくれないの!?新しい!!」


「知らねぇモンを紹介出来るわけねぇだろ…と。着いたか」


生徒会室の前までやって来て、壱声は立ち止まった。


「会長、入りますよ…」


そう断って、ドアを開けた壱声のその目に映ったのは。


今まさに、こちらに何かを投げようと大きく振りかぶっている実行の姿だった。

普通に考えれば、ドアを一度閉めれば防げる。

だが、タイミングを図り直された場合、入ろうとする度にあの手に持つ得体の知れない物で狙われ続ける事になる。そう判断した壱声は、別の手段で防ぐ事にして。

一番近くにあったそれをグイッと引き寄せた。


「…四五六防壁っ!!」


正確に描写すると。

呑気に突っ立っていた四五六の襟首を掴み、引き寄せて盾にした。


「うぉっ!?何すんだよ壱せぴぁんっ!?」


直後、実行が投擲したコーヒー・首領の空き缶が四五六の顔面に直撃した。


…良い子の皆は、人に向かってスチール缶を投げるのは絶対に止めよう。


「…おぉ。腕を上げたな、壱声」


「ったく、いきなり何してんですか会長。人に当たったら危ないでしょう」


堂々と言い放つ壱声に、実行の隣に立っていた仄香が苦笑しながら指摘する。


「…えっと、壱声くん。それは流石に一二三くんが可哀相だと思うんだけど」


たった一人、四五六を心配してあげる仄香だったが。

その四五六は、仄香の声を聞くなりガバァ!と復活した。


「そ、その声は副会長!!いやぁ、相変わらず…否!拝見する度に美しくなっていきますねぇ!!」


「あはは…ありがとう。いつも元気ね、一二三くんは」


「それはもう!美少女に会う為なら皆勤賞も手段の一つですから!けど〜…副会長が制服のシャツを開襟してくれたら、もっと元気になりまs」


四五六が何やら不穏な事を喋ろうとした瞬間。


シュカァンッ!


四五六の頬の薄皮一枚(出血もしないレベル)を切り裂いて、すぐ横の壁にボールペンが突き刺さった。


「………………」


横目でボールペンを確認して、その目線を動かしていくと。


「………(ニコォ)」


実行がいた。

全力で満面の笑顔を浮かべる実行が座っていた。

笑顔を浮かべているが、溢れる気配からは殺意しか読み取れない、仄香の彼氏でもある実行が泰然と存在していた。


クルクルとボールペンを弄びながら、実行はとても静かな声で四五六に尋ねる。


「…カッコイイよな、ユニコーンって。欲しくないか?一本角」


「誠に!申し訳ありませんでしたぁ!!」


人間の視認限界を超えた速度で土下座の姿勢を整え、床を掘削せんばかりに頭を擦り付ける四五六を見下ろしながら、実行は珍しく溜息を吐いた。


「…気を付けろよ?普段ユーモアセンスの塊である俺にも、通じない冗談ってのはあるんだぜ」


土下座したまま何度も頷き、ガンゴン床を鳴らす四五六。その様子を見て満足したのか、実行は視線を壱声に移した。


「んじゃ、座れよ。昼飯がてらにさっきの話の続きといこうぜ」


「そうしますか…つぅか、変なアイデアは勘弁して下さいよ?」


「オイオイ…壱声、最初くらいは人を信用しとくもんじゃないか?」


「…そんなにスムーズに会話に入れる状況だったかしら、今…」


四五六を鮮やかにスルーした二人にそう呟きながらも、仄香も平然と席に着いて昼食の準備を始めている。


「…あれ?皆もう次のシーンなの?ちょっと待った俺という役者が揃ってませn」


「「いただきます」」


「うわーん!!」


…つくづく不憫な子である、四五六。泣きながら昼食の席に混ざっていった。


「…で、会長。今回の思い付きってのはどんなものなんです?」


「うむ。実は今回の計画…最も重要なポジションは俺じゃない」


「…と、言うと?」


あぁ、と頷いて。実行が視線を隣に居る仄香に向けると。


「なぁ、仄香。透葉が別荘として所有してる島があったよな?」


いきなり話のスケールが庶民層からぶっ飛んだ。


「え?うん。それがどうかしたの?」


「生徒会の合宿…という体で、皆で遊びに行きたいんだけど、どうだ?」


「合宿…つまり、何日か滞在するのね?」


「そういう事」


「…分かったわ。別荘に連絡するから、日程と人数が決まったら教えて」


「おぅ、サンキューな」


テキパキと話を終えると、実行は壱声達に向き直って親指を突き立てた。


「交渉成立」


「「いやいやいやいや!!」」


これには、珍しく壱声と四五六のコンビでツッコンだ。


「サラっと学生の枠の外で話してましたよね、今のは!?」


「つ、つぅか、そういう別荘って、親の許可無く使えるモンなんですか!?」


「あ、それは心配しないで。私が誕生日に貰った別荘だから」


「「スケールがデカすぎるぅーーー!!!」」


まさかの所有者だった!


「それに、30分も歩けば一周出来るくらいの小さな島だし」


「いや照れ笑いされても!島単位で小さくてもそれはやっぱり島ですから!!」


何だか、格差とかの次元を超えたものを見せられた気がしたが。実行はどうだと言わんばかりに笑っていた。


「良いじゃねぇか。望み通りの無料宿泊施設だぜ?」


「いや確かにそうですけど…」


「…壱声。これは流石に俺も予想外だったわ…」


そして、その後も主に実行を中心にして。

日程や、誘う人数を決めていく。


「俺、仄香、壱声…が来る以上、陽菜ちゃんも一緒の方が良いか」


「…確かに、家に置いていくのも可哀相ですね。けどそれなら、詩葉に留守を任せるのも気が引けるんで」


「それもそうだな…じゃあ詩葉ちゃんと、みなもちゃんも誘うとして。となると……」


そこで実行が黙り込むと、壱声と仄香も言葉を詰まらせ、そして同時に呟いた。


「「四五六(一二三くん)、必要かなぁ…?」」


「発案者俺でしたよねぇ!?」


そんなこんなで、8月4日からの三日間。

合宿とは名ばかりの、お泊り会が決定した。

仄香…恐ろしい子っ!!

毎度お疲れ様です、春間夏です。


次回からお泊まり会のつもりですが…何故三日間と言ってしまったのでしょう



また長い戦いが始まりそうです…大暴れの予感です(四五六とか実行とか)


では、次回…いつになるか分かりませんが、きっとお会いしましょう

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