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少子化の果てのユートピアで 3話

一年半後──


研究所・中央棟の地下奥、観測エリアの一角。マットの上で、中堅研究者と二人の少女が何やら騒がしくしている。少女たちの見た目は小学校高学年ほど。


「シイナはまた同じページばかり見てないで次をめくらせて。ニコは髪の毛を引っ張らないの」


A-0417はシイナ、F-0025はニコ。管理番号を由来とするものの、篤田はより人間味のある愛称で彼女たちを呼んだ。


篤田は絵本を広げて読み聞かせをしていた。シイナは素直に膝に収まり、物語に耳を傾けている。一方のニコは落ち着きなく篤田の背中にしがみついたり、肩越しにページを覗き込んだりしていた。


「ねえ、そのお城は外の世界には本当にあるの?」

肩によじ登ったニコが、絵本の挿絵に描かれた中世の城を見ながら言う。

「あるさ。実際に王様が住んでたのは昔々だけどな」

「今は誰が住んでるの?」

「だーれも。でも見学には行けるぞ」

「行ってみたい。いつになったら外に行けるの?」

「たくさん勉強して、大人になったらだ」

ニコは「外」という言葉が好きだった。まだ一度も研究所の敷地を出たことはないが、彼女はいつも「外」を気にしている。


「この子──どうして生まれてきたの?」

シイナは、ニコとは違い、人がなぜ生まれてくるのか、その人の役割は何なのかという、ある種哲学じみたことに興味を持つようだった。

篤田は一瞬言葉に詰まるが、おどけた調子で答える。

「さあなあ。神様に楽しんで来いって言われるのかもなあ」

「神様って結局だれなの?」

「神様ってのは、この世界を見えない所から見張ってる偉いオッサンだ。悪い子にはバチが当たるぞ」

「楽しんで来いってことは、楽しめなかったら悪い子?」

篤田は少し考える間を置いてから、答える。

「うーん、そりゃあ悪い子かもな。ちゃんと楽しまないと」

シイナは何も言わずただ視線を絵本に戻す。 


観測エリアは、いくつもの区画に分かれている。被検体たちは、月齢や成長段階ごとに少人数で共同生活を送る設計になっている。もっとも、これまでは一歳を迎える前に病死してしまう被験体ばかりだったので、それ以上の月齢の子に対する設備はまだ充実していないのだが。


人工子宮で生まれる子供は、通常の人間の発育限界を越える。出生時点で、肉体はおおよそ十二歳相当。当初、通常の人間の新生児相当の状態で出産させていたが生存日数がかなり短く、ある程度の年齢まで一気に胎内で育ててしまうのが、最も生存日数が高くなることが研究で分かったからだ。その分、成長の過程での教育が実施出来ない欠点があるが、それを胎内教育によって生まれて来る前に言語、基礎学力、生活技能の多くをすでに習得することで補う。


生まれてくる子供は知性が高く、身の回りのことは数回教えれば済む。着替え、食器の持ち方、歯磨き、トイレ、風呂、そして基本的な自然言語と算術。研究員が行うのは、食事の提供と学習管理、最低限の健康観察だけ──それがこれまでの標準だった。


しかし、シイナとニコには別の管理手法が取られた。篤田の主張により、二人には異例とも言える頻度で人の手がかけられた。


絵本を読み聞かせる。一緒に食事やお菓子を作る。研究棟の外周で遊ぶ。空き地にシートを敷いてピクニックをする。夜は篤田の即興の物語で寝かしつける。


研究所の外には出られない。人工子宮由来の人間の被検体が、実験の過程で複数生まれては死亡している、という事実があまりにショッキングなため、まだ公にできない事が多いからだ。


それでも、二人は明らかに違っていた。笑う。怒る。拗ねる。甘える。喜怒哀楽が、他の被験体と比べて顔に出る。少し離れた場所から、眞壁は無言のまま、彼女たちの様子を見ていた。


絵本の読み聞かせが終わると、篤田は立ち上がる。


「よし、じゃあちょっと待っていなさい」


そう言って一度部屋を出る。少女たちは手持ち無沙汰になって辺りを見渡すと、視界に眞壁の姿を認め、声を潜める。


「シイナ、眞壁さんって、なんか怖いよね」

「大丈夫。篤田さんが悪い人ではないって言ってたよ」

「えー?篤田さん、眞壁さんは悪者だからいつかやっつけるって言ってたよ?」

「ニコ、それは篤田さんが徹夜って言うのを何回かして、変になってたときじゃない?」

「そうだっけ?でも気をつけなきゃ」

「そうだね、気をつけなきゃ」


ヒソヒソと話す二人の声は眞壁の耳には聞こえないが、自分の顔を見ながら、おおよそ良くない話をされていると言うことだけは分かる。


「ハッピィバァースディトゥユゥ〜」


篤田が部屋に戻って来た。頭には、色画用紙を丸めただけの不格好なとんがり帽子が乗っている。調子外れの歌声に二人は一瞬きょとんとし、それから一斉に歓声を上げた。


篤田がろうそくの立った小さなケーキを手に持ってやって来たからだ。


「わぁ!すごいすごい、本物のケーキだぁ!」

ニコがはしゃぐ。

「火のついた蝋燭を載せるって本当にやるんだ」

シイナも驚いた表情をしている。

「ああそうだ。本物のケーキだぞ。今日は特別だ」

ろうそくに灯る小さな炎を囲い、三人で誕生日の歌をひとしきり歌う。

「ほら、息で消すんだ。フーッてな」

二人はケーキに顔を寄せ、息を吹きかける。

火は揺れ、そして消える。

篤田につられて、二人もパチパチと手を叩く。


篤田は紙皿にケーキを取り分け、皆で食べ始める。甘さに目を見開きニコは無邪気に頬張った。シイナは未知の味に少し慎重になったが、それでも嬉しそうに少しずつ口に運んだ。


半分ほど食べ終えたところで篤田が視線を上げ、手招きをした。


「眞壁さん、遠慮しないでどうぞ」

「俺はいいよ──」

「まあまあ、そう言わずに」

小さなテーブルにもう一脚椅子が並べられる。眞壁は渋々腰を下ろす。


「こんなものを食わせたら、栄養状態のノイズになるだろうが」

「いえ、元気なもんですこいつらは」


シイナとニコは初めて食べるケーキを頬張りつつも、警戒心に満ちた目でチラチラと眞壁の方を見ている。眞壁は無言でケーキにフォークを突き立てる。


「眞壁さんからも、何か一言ないですか?」

眞壁は篤田の方に一度視線を向け、戻す。

「──俺が間違っていた、とでも言えば満足か」

「またそういうことを」

篤田は肩をすくめる。


「確かに僕の研究への熱意と、溢れ出る母性は褒めて欲しい所ですが──」

シイナとニコの顔を交互に見て言う。

「今日はお祝いなんですよ」

「──ふん」

眞壁は何とも腑に落ちない、という表情だが、しかし小さな声で言った。

「君たち、誕生日おめでとう──」

シイナとニコは顔を見合わせ、少し戸惑いながらも答えた。

「──ありがとうございます」


一歳を越えた。


これは確かに成果だ。しかし、眞壁の頭の中には、別の問題が浮かび上がっていた。

もしこれが「愛情」の結果だとしたら。もし人が人を育てるためにそれを必要とするのだとしたら。


──量産ができないのではないか?


篤田から奪ったトンガリ帽子を順番にかぶってはしゃぐ二人を横目に見ながら、眞壁は観測エリアの天井の無機質な配管を眺めていた。


────────────────────


政権が変わったのは、春の始まりの頃だった。


「人権民生党」が掲げる分かりやすい減税・給付金政策とクリーンなイメージ、旧政権で発覚した不透明な資金繰りへのマスコミの追求が、政権交代を後押しした。


聖域なき改革・国民の生活第一・税金の使途透明化──


街頭演説で繰り返されたその言葉は、ツルミ共和国の疲れ切った空気に、久しぶりにわずかな熱を与えた。熱はすぐに敵を必要とし、敵はすぐに見つかった。


国立総合生命科学研究所。


国家予算の一割以上が投入されるこの研究所の事業は、減税、給付金の財源確保の為に真っ先に精査されることとなった。


研究所の応接室は、ここ数週間で急に落ち着かない場所になっていた。


長テーブルを挟んで研究所幹部と議員が向かい合って座っている。研究者たちを追求する議員団の自信に満ちた顔は、長い野党時代に磨かれた自分たちなりの「正義感」に支えられているようだ。


対する研究所所長は、曖昧な作り笑いを浮かべ、先ほどから何度も額の汗を拭っている。


「我々は科学を否定しません。ですが──」


若い議員が、資料を机に置きながら言う。


「命を実験材料にしている、というのはいかがなものかと考えます。その点についてどうお考えでしょうか」


言葉を区切り、所長の顔をじっと見る。


「ええ──ご指摘の点につきましては──我々としても非常に重く受け止めております」


所長は歯切れ悪く応じるが、こうした態度がさらに議員たちを勢いづかせる。続けて別の議員が口を開く。中年の女性議員だ。多くの研究者も、彼女が報道番組で話しているのを一度は耳にしたことがある、聞き覚えのある声だ。


「言い方は悪いですが、出生率対策の名を借りて研究者が好きなだけ人体実験をしている、そういう印象を受けたのですが、違いますか」


所長の作り笑いが、ほんの少しだけ引きつった。


「倫理面につきましては、これまでも所内のガイドラインに沿った審査も実施しておりまして──ガバナンスについてもしっかりやっている、そう認識しています──」

「ですから──!」

若い議員が机を叩いた。

「──先ほどからお伺いしています。それはどういうガイドラインなんですか?ガイドラインの文書と、過去の審査履歴を全て出してください。そう言っているんです」


「その──研究の性質上、やはり一定の非公開性が必要でありまして──」

「それじゃあ話にならないんですよ!」


議員と研究所幹部の議論が続く応接室を、中庭を挟んで向かい側の廊下から眞壁は冷めた目で眺めていた。突如、議員たちは立ち上がると、荷物をまとめ部屋から出て行く。どうやら今日の話は終わったようだ。


憔悴しきった様子の所長が、廊下で眞壁とすれ違う。

「眞壁くん。新政権はダメだ。人間を増やすという目標の優先度があまりに低い。それが今日よく分かった」

「連中も政権をとったからには少しは現実を見るかと思いましたが、相変わらず綺麗事ばかりですか」

「ああ──だいぶ厳しい。人工子宮は事業仕分けの対象になる。減税と社会保障の財源確保に忙しいんだろう」

「人が減っている国で、人を作る研究を止める。実に賢い連中です」

眞壁は皮肉で返すが、所長はそれに付き合う元気もないようだ。

「人工子宮では、票が取れんからな──とにかく、足元で新しい被検体の生成は停止だ。来年度の予算も厳しい。君も身の振り方を考えておいた方がいいかもしれん」

「ふん──」

眞壁は眉を少し上げたまま、返事をせずにその場を立ち去った。


────────────────────


数ヶ月後には、研究部門の動きは目に見えて鈍くなっていた。複数の研究テーマへの予算が中止または一時保留とされ、多くの研究者が職場を去った。残された者は、研究の必要性をつぶさに説明する為の書類仕事に追われ、その書類の稟議を通す為にも大きな時間を割かざるを得なくなった。


予算の削減は、研究だけではなく、設備の維持管理にも容赦がないようだ。停電やセンサー類の誤動作、空調の動作不良などが目に見えて増え始め、被験体の保護・観測に割ける人手や機器類にも限界が出て来た。


そして、もうひとつ研究者たちが頭を痛めている問題があった。ニコの「外の世界」への興味がもう冗談では済まなくなっていたのだ。最初は小さな悪戯だった。区画の境界線を越えて、他のエリアを覗く。見つかって叱られ、舌を出す。


次は脱走。


夜間、監視の目が薄くなる時間帯を狙い、観測室の僅かな通気口の隙間を抜ける。非常口の誘導灯を目印に廊下を走り、中央研究棟の出口に続く長い廊下の先、観測エリアと外界を隔てる扉を開けようとしたところで、センサーが反応し赤いランプが灯る。


「ピー、ピー、ピー」


スピーカーから無機質な警報音が鳴る。ニコは耳を塞ぎ、顔をしかめる。数分後、大柄の警備員に抱えられてニコは観測エリアに連れ戻された。ニコは暴れながら叫ぶ。


「外に行きたい!外に!」


警備員から対応を引き継いだ研究員が、疲れた表情で言う。


「わかってくれ、今は無理なんだ。何回言わせるんだ」

「なんで!」

「決まりだからだ!」


その言葉は、ニコにとって何の説明にもならず、不満は日々募っていくばかりだ。


ニコはこの後もこうした脱出騒動を何度か起こしたが、その試みはセンサー類の作動によって全て阻止された。そして、何度目かの連れ戻しのあと、ニコは急に静かになった。


これまでのように、叫んだり、泣いたりせずに、ただじっと周りを観察するようになった。


扉。天井のカメラ。廊下の赤いランプ。鍵やセンサーの挙動。


就寝時間、明かりが消えると、布団に入りながらニコはシイナにヒソヒソと話しかけた。

「ねえシイナ、最近停電が多いじゃない?」

「そうだね──いきなり暗くなって怖いよね」

「停電の時はさ、あの大きい廊下に出る方法があるって今日わかったよね」

「うん──」

シイナは否定も肯定もせずに呟く。

「ニコ、そんなにここがイヤなの?」

ニコは何も言わずに暗闇を見つめている。シイナは続ける。

「篤田さんもいるし、私だっているんだよ。私たち、ずっと友達でしょう?」

しばらく間をおいて、ニコは低い声で呟く。

「──篤田さんは、最近全然遊んでくれないじゃない」

ニコは低い声でつぶやく。シイナは何も言えなかった。


「今朝だって──」

ニコは今日あったできごとを頭の中で反芻した。


────────────────────


今日も、本来であれば、篤田と恒例の、研究所内空き地ピクニックの日であった。しかし、二人の元へ篤田が中々やってこない。シイナとニコが日ごろ遊んでいるプレイルームと、廊下を隔てる扉越しに、篤田と、もう一人誰かの声がする。痺れを切らした二人は扉に耳を当て、じっとその声を聞いていた。篤田は職員と何やら口論しているようだ。


「仕方ない?仕方ないってなんですか!予算を削られたってやりようはあるでしょう!地下の換気設備が壊れたら被検体の命に関わるんですよ!」


二人はあまり聞いたことのない、篤田の怒気を含んだ声であった。対する職員も苛立った声で返す。

「だったらあなたが点検やったらいいですよ!やる人がいないんです。手が回らないんです!」

最近は研究所の誰もが苛立っている。二人は敏感にその変化を察知していた。暫く篤田と職員との口論が続いたが、

「──もういいですよ!自分でやりますから!」

篤田がそう言い放つと、その場は一応の収まりを見せたようだ。


篤田がプレイルームに入ってくると、二人は素知らぬ顔で篤田に話しかけた。

「ねえ、今日のピクニック、この前事務員の人にもらったクッキーを持って行こうと思うの」

シイナが大事そうに、缶に入った洋菓子をかざして言う。篤田は、力なく微笑むとシイナの頭をなでた。

「ああ──そうだな。水筒に紅茶も持ってきたから、よく合いそうだ」

三人がプレイルームを出て、研究所の廊下を歩き、観測エリアから中央研究棟の廊下を隔てる扉にさしかかる。篤田が磁気式のIDカードをかざす。かつてこの扉は解放されたままであったが、ニコの何度目かの脱走騒ぎの後、しっかりと施錠されるようになった。


「──ん、また解錠されないな」

IDカードを何度か読み取り機に通すが、反応しない。そこへ工具箱を抱えた技術員たちが慌ただしく通りがかる。観測エリアを通過しその奥にある電源室に向かおうとしていた。

「どうしたんですか?」

と篤田が尋ねる。

「また電源系統落ちちゃってるみたいです」

「ここ、通りたいんですが出られませんか?」

「ああ──電源が落ちてる時は、非常時なんでこちらの扉が開きます」

作業員は、通常の施錠された扉の隣の、重い鉄の非常扉を力をかけて開く。

「じゃあ僕らはこれで」

技術員たちは、普段シイナやニコが近づくことを許されていない「電源設備室」と書かれた部屋に、磁気カードをかざし入っていく。

「最近落ちてばかりだな ── ここが落ちると空調もセンサーも色々止まるから復旧後のチェックが大変だよ」

技術員がボヤく声が聞こえる。

「耐用年数過ぎた機械もそのまま使ってて危険だしな──」

電源設備室の扉が閉まると、通路に残された三人はしばし言葉を失ったまま立ち尽くした。


「さ、行くぞ」

篤田が二人を促し、非常扉をくぐる。中央研究棟の出口までの長い廊下を抜け、受付フロアを出ようとした所で、向こう側から血相を変えて走ってくる研究者が視界に飛び込んでくる。

「篤田さん!」


息を切らしたその研究者は、篤田の前で足を止め、ちらりとシイナとニコを見ると、声を落とした。


「所内幹部が集まってます。二人の例の件──」


篤田の足が止まる。

「もしかして、例の児童養護施設の──?」

篤田も声をひそめて応じると、研究者は小さくうなづく。

「冗談じゃない、本当にあんな話進んでいたのか─!」

「何か決まってしまってからでは遅いですよ。意見するなら今言っておかないと──」

篤田は短く頷くと二人の方に向き直る。ニコが顔を上げる。

「ねえ、なに?ピクニック行くんでしょ?」

篤田は一瞬だけ視線を逸らし、それから屈み込んで二人の目線に合わせた。


「──ごめん、二人とも。今日のピクニックは中止──延期にしてくれ」

ニコの顔が、みるみる歪む。

「ええ!なんで!この前も、その前も延期したよ!」

篤田は「ごめん、ごめん」と繰り返しながら、手を合わせるように謝るばかりだ。

「うそつき──」

ニコが小さくつぶやいた。シイナはドキリとしてニコのほうを振り返る。篤田の表情が硬くなる。

「うそつき!篤田さんのうそつき!」

篤田は慌ててニコの肩に手を置く。

「落ち着け、ニコ。会議がすぐに終わったら再開できるかもしれないから──」

「うわぁぁん」

ニコが泣く声が廊下に響いた。先ほどの研究者は、気まずそうに視線を下に向けた。


結局、今日ピクニックが行われることはなかった。


────────────────────


「シイナも、一緒に外に行こうよ」

布団の中で、ニコが呟く。

「私は──」

シイナは言葉を詰まらせる。

「私は、自分がどうして生まれて来たのか、知りたい。でも、今ここから出ても、それは分からないような気がする──今はただ皆が元通りになって欲しい。篤田さんがいて、ニコと遊んで、ピクニックをして、ケーキを食べて──」

「──そう、シイナは、そうだよね──」


ニコはそう言うと、それ以上何も言わず目を閉じた。


その後、研究所内ピクニックは、永遠に行われることはないのである──



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