見ることを許されなかった者
夜に、包囲は始まった。
告げはなかった。
前触れもなかった。
四方から、村々が一つの憎悪となって押し寄せた。
最初に燃え上がったのは外縁の区画だった。
次に悲鳴が広がり、
最後に血が流れた。
幾世紀ものあいだ戦を免れてきた黄金都市は、
死に包まれて目を覚ました。
通りは丸ごと消えた。
家族は引き裂かれた。
人々は、なぜ戦っているのかも分からぬまま倒れていった。
――だが、Itzacoatlだけは理解していた。
宮殿の高みから、彼の眼は燃えていた。
怒りではない。
“知覚”として。
彼には見えていた。
人々の間を滑る影。
意思を操る見えない糸。
時折、人の形を失う顔。
アレブリヘたちが、その呼びかけに応えた。
最初に舞い降りたのは鷲だった。
進路を示し、伏兵を告げる。
他の精霊たちは防衛者を導き、通路を封じ、攻撃を逸らした。
Itzacoatlの視線が届くかぎり、
都市は持ちこたえた。
均衡は傾き始めた。
敵は揺らぎ、
勝利は手の届くところにあるように見えた。
――そのとき、彼は見てしまった。
敵の列の中を、恐れもなく進む男。
襲撃を率いる村の長。
かつて同じ卓を囲み、言葉を交わし、誓いを結んだ者。
平和の時代に兄弟と呼んだ存在。
一瞬、Itzacoatlは油断した。
それで十分だった。
男は防衛を突破し、
不可能な速度で宮殿の中枢へ辿り着いた。
衆目の前で、ためらいもなく、
Itzacoatlの妻を貫いた。
血が黄金に散り、
叫びは生まれる前に潰えた。
続けて、
彼は一人の子を殺した。
世界が砕けた。
Itzacoatlが立ちはだかった瞬間、
真実が露わになった。
あの眼は、兄弟のものではなかった。
もっと古く、
もっと空虚で、
もっと飢えていた。
Mictlantecuhtli(死と冥界の神)が、
借り物の肉体越しに彼を見つめていた。
その腕には、
最後に残されたItzacoatlの子――
震える幼い娘が抱えられていた。
声は男の口からは出なかった。
彼を棲み処とする影から、直接響いた。
「その眼を差し出せ。
さもなくば、この子を殺す。」
Itzacoatlには、すべての未来が見えていた。
そして、そのすべてが同じ結末に至っていた。
娘を見る。
鷲を見る。
都市を見る。
彼は決断した。
この世界を捨てる。
自らを定義してきた“視る力”を捨てる。
「――やれ。」
Mictlantecuhtliは笑った。
約束は、守られなかった。
儀式のような残酷さで、
Itzacoatlの両眼は抉り取られ、
彼の“彼岸を視る力”は永遠に失われた。
苦痛は絶対だった。
それでも、彼は叫ばなかった。
そして最後の裏切りとして、
娘は殺された。
憑依されていた身体は崩れ落ち、
影は悲鳴と混沌の中へ溶け、満足したように消えた。
その夜、戦は終わった。
勝利によってではなく、
断絶によって。
Itzacoatlは死者の中に跪いたまま、
盲目で、独りで、
なお立ち続ける黄金都市の中にいた――
もはや、彼にとっては空虚な場所として。
神々は、戻ってきた。
そして、
代償はすでに支払われていた。




