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第三章 ― 最初の衝突

戦争は、雷鳴とともに始まったのではない。


――欠落とともに、始まった。


ある夜明け、幾柱かの神が応えなくなった。

死んだわけではない。

敗北したのでもない。


ただ、その影響だけが断たれた。


祈りは空を越えず、

兆しは地上へ降りなくなった。


誰かが――

信仰を遮断する術を、学んでいた。


その行為こそが、最終的な衝突に火を点けた。


複数の領域が交差する世界の一点で、

空はあり得ぬ層を成した。

嵐の上に嵐が重なり、

太陽は複数に分かれ、

夜はもはや時間に従わなかった。


そこで、神々による最初の公然たる衝突が起きた。


それは、栄光ある戦いではなかった。


――混沌だった。


神々は、それぞれ異なる法則で存在していた。

自然現象として在る者、

意思を持つ形として在る者、

固定された姿を持たぬ意志そのもの。


世界は、彼らが同時に在ることを想定して造られてはいなかった。


山は砕けることなく歪み、

海は消えぬまま沸騰し、

時間はある場所で引き延ばされ、別の場所で崩壊した。


人間には、それを理解することができなかった。

彼らにとってそれは神々の戦争ではなく、

原因も敵も見えぬ災厄の連続だった。


侵攻のないまま滅びる王国。

相反する神意に挟まれ、逃げ場を失う都市。


やがて、神々は一つの恐るべき事実に気づく。


――直接の衝突は、想定以上の速さで世界を破壊している。


退いた神もいた。

なお戦い続けた神もいた。


そして、次の段階が訪れる。


神々自身が戦えば世界が持たぬのなら、

彼らは、すでにそこに生きる存在を用いることを選んだ。


人間が選ばれ始めた。


刻印を刻まれ、

駆り立てられ、

複数の声で語る預言者となる者。

血統ではなく、外なる意志によって王となる者。

理由も知らぬまま、不可能を生き延びる戦士たち。


戦争は、もはや天上だけのものではなくなった。


――地上へと、降りてきたのだ。


なお原初の均衡を守ろうとしていた神々は、

はっきりと理解する。


この争いは、

もはや取り返しのつかぬ犠牲なしには止められない。


最初の神が倒れたとき――

それは破壊ではなく、分断だった。


爆発はなかった。


あったのは、沈黙だけ。


その沈黙が告げていた。


――神は、敗れる。


一柱が落ちるのなら、

すべての神が、同じ運命を共有している。


その瞬間から、戦争は「避けられぬもの」ではなくなった。


――絶対的なものへと、変質した。

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