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「竹取物語は宇宙人が地球を侵略しようとする物語だよ」  作者: unnamed fighter


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第11羽 かいと

 こんな日に限って担任のベーヤマ(山辺先生)の話は長かった。終礼が終わると同時に一目散に学校を出たオレが病院に着いたときには午後四時を一〇分過ぎていた。

 

 エレベーターを待っていられず五階まで階段を駆け上がり、501号室のドアを開けると前回来ていた鈴木とかいうCIAの……、ではなく児童福祉職員がルナと話しているところだった。

 アキ姉や看護師の姿はなく、彼女の他にも施設関係者と思しき二人の男が後ろに手を組んで立っていた。

 その男たちはやたらガタイの良い体格をしていて、さながら葬儀屋みたいに黒いスーツを着ている。児童福祉施設の職員にしては、なんだか威圧的な雰囲気の彼らは病室に入ってきたオレに対して無遠慮に警戒するような鋭い視線をくれてきた。


「さあ、行きましょう」


 鈴木さんがベッドに座るルナを手を取り、手を引かれて立ち上がったルナが男たちの陰に隠れていたオレに気付く。彼女は鈴木さんの手を振り払うと黄金色の瞳を輝かせて駆け寄ってきた。

 ついでに、なぜかオレは施設職員たちにじろりと睨まれてしまう。


 なんか邪魔者みたいな雰囲気だな……。


「あの、少し彼女と話をしてもいいですか?」


「あなたは確か……、第一発見者の高校生でしたね?」鈴木さんが言った。


「え? はい、そうです」


 あれ? なんでオレが第一発見者だってことを知っているんだ? アキ姉が言ったのかな?


「あまり時間がありません。お別れは手短にお願いします」


「分かりました……」


 時間がないって、なにをそんなに急ぐことがあるんだ? 


「ルナ、ここからお引越しするって」


 ルナは笑顔で言った。


「うん、退院おめでとう。会いに行くよ。どこに引っ越すの? 施設の名前は?」


「うん?」と小首を傾げて「知らない」と彼女は答える。


「え? 聞いてないの? あの、すみません。彼女がどこの施設に行くか教えてもらえますか? 会いに行きたいので」


「施設間で調整中ですので決まり次第ご連絡致します」


 そう答えたのは鈴木さんだ。簡潔であまりにも業務的な言い方だった。


「わかりました……。それじゃあ決まったらこの病院のクラハシ先生に連絡をお願いします。


「承知しました」


「ルナ、これオレの携帯の番号だから」


 オレはあらかじめ用意しておいたメモをルナに手渡した。メモ用紙を嬉しそうに握りしめてルナが微笑む。

 

「ありがとうハル。これ大事にする」


 やはり紙に記された数字の意味を理解していないようだ。


「うん、大事にしてくれるのにありがたいけど、そこに書いてある番号に電話をかけてくれるともっと嬉しいかな。電話の掛け方は施設の人に――」


「時間です」


 突然、鈴木さんがオレたちの会話を遮って「それでは失礼します」と告げた。なにかに追われるように彼女はルナの手を引いて病室から出ていってしまう。黒服の男たちも彼女に続いて去っていき、オレだけが残される。


「なんだよ、あの態度……。なんかムカつく」


 どこの施設かまだ決まっていないなら急いで連れていかなくてもいいじゃないか。そりゃ元気になったルナを病院に置いておく訳にもいかないけどさ。

 それにしてもあの鈴木って職員、なんでオレが第一発見者だって知っているんだ。警察から聞いたのか? それに今の時点で入る施設が調整中ってどういうことなんだ? なにより後から連絡するつもりなんて端からなさそうな感じだった。


 お別れは手短に――、鈴木さんのセリフに妙な引っ掛かりを覚えてしまう。


 そのときだ。開けっ放しの窓から一羽のトンビが病室に飛び込んできた。


「うわっ!? びっくりした!」


 トンビはバサバサと翼をはためかせて点滴を吊るすスタンドの上に止まり、翼を休めた状態でジッとオレを見つめている。


「……こわっ、トンビって近くで見るとさらにデカいよな……」


 どうしよう……、追い出そうとすれば鋭いクチバシで突かれてしまうかもしれない。放っておけばそのうち出ていくよな。触らぬ神に祟りなしだ。

 トンビを刺激しないように徐々に後退しようとしたら、


『あの少女を奴らに引き渡してはならない』


 バリトンのイケメンボイスがどこからともなく聞こえてきた。


「は?」


 オレは病室を見回す。当たり前だけどオレしかいない。

 じゃあ今の声はどこから? 天井のスピーカーか? ああ、なんだよ、誰かがナースコールでいたずらしたんだな――、なんて解釈するも『早く後を追うのだ』と再びそいつの声が聞こえてきた。


 そしてオレとトンビの目が合う。


「……」


 わかっている、インコじゃあるまいしトンビがしゃべるなんてそんなことはあり得ない。だけど目が合ってはっきりと確信したのだ。こいつの眼には意思が籠もっている。間違いない、しゃべったのはこのトンビだ!

 

「トンビがしゃべった!?」





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