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彼らの転生先は被験者だった  作者: 轟号剛


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決勝

「さぁいよいよやって参りました!

 ミドル級王座決定戦決勝を行います。

 赤コーナー!

 今大会で頭角を表したダークホースのドープ・ドクダミ!!

 青コーナー!

 五年連続優勝の記録を保持しているロッキー・アドラーだぁぁ!!」


実況の男が会場を盛り上げているとドープとロッキーがリングの上にあがっていく。


「よぉ、体の調子はどうだ?」


二人がレフェリーの前で握手を交わすとロッキーが口パクで話しかけて来た。


ロッキーの容姿は金髪坊主で額に横向きの傷跡が特徴敵である。


"あぁ、お陰様で絶好調だぜ"


ドープは挑発するように目を見開きながら同じく口パクで言葉を返す。

 

ドープの脇腹の縫った後は見えづらくするためにパウダーをつけているが、それでも正面に立つロッキーからは見えている。


「じゃぁフェアプレーで行こうぜ」


ロッキーはニヤリ顔をしながらコートの端に歩いていく。


"(チッ

 どの口が言ってやがる)"


ドープは苛立ちを抑えながらも同じようにコートの端に戻って行く。


カーン


二人が定位置に着くと開始のゴングが鳴らされる。


二人は徐々にリングの中央に短いステップを踏みながら近づくと、軽いジャブを打ちながら探り合いを入れる。


(はっ、動き自体は軽やかだが無意識に右の脇腹を庇っているな)


ロッキーはドープの右腕のガードが下に落ちている事に気づくと、左手で素早いジャブをドープの顔面目掛けて放つ。


しかし、ドープはロッキーの狙いに気づくと素早く体勢を落とし拳を避け、ロッキーの隙のできた左脇腹にジャブを入れる。


「くっ、、」


ドープの拳を脇腹に入れられたロッキーは苦しい顔を見せながら後ろに下がって体勢を立て直す。


"(上手く誘いに乗ってくれたな。

 だが、この体調で長期戦はできねぇ。

 速攻でKOとって終わらせる)"


ドープは後退したロッキーを追うように素早く駆け寄ると追撃のジャブを顔面に放つ。


すると、ロッキーは何故かニヤリと笑い腕でガードをする事なくジャブを受けてしまう。


“ぐぁぁあ!!”


しかし、悲鳴を上げたのは何故かドープであった。


「1」


ドープは脇腹を抑えてリングにうずくまってしまいレフェリーからカウントを数えられる。


「2」


対するロッキーもドープのジャブをまともに受けたことでふらついてしまうが、倒れることはなかった。


「3」


ドープは脇腹を抑えながらも何とか立ち上がると、レフェリーはカウントを止める。


ジャッカルに傷口を固く縫ってもらっていたので幸い傷口が開く事はなかった。


"(こいつ防御を捨ててまで俺の傷口を狙ってきやがった、、)"


ドープは冷や汗をかきながら拳を構える。


対するロッキーは腕をクイクイと上下させて挑発をしてきている。


"(上等だ!)"


ドープはカウンターを狙っているロッキーの意図に気づくがあえて攻めていくようだ。


ドープはロッキーとの距離を縮めると今度は右脇を締めて、左手でジャブを放つ。


ロッキーは右側にステップを踏んで避け、常にドープの右側の位置をキープし続ける。


常に移動してドープを翻弄してくるロッキーは、あくまで防御に徹してカウンターの機会を伺っているようだ。


"(そっちがその気なら!)"


ドープは意を決すると、左手でジャブを放った後に右側へと自身もステップを踏んで移動する。


ドープのジャブを避けるロッキーもドープの右側に移動しており、二人は対面で同じように移動することになった。


"(くらいやがれ!)"


ドープは右脇を閉めていた腕を後ろに引き、腰を捻ると渾身のストレートをロッキーに放つ。


ロッキーは左手でのジャブを警戒していたため、予想外の右手からの攻撃に反応が遅れるが、それでもドープの右脇腹目掛けてカウンターの一撃を加える。


ドープの拳がロッキーの顔面、

ロッキーの拳がドープの傷跡に同じタイミングで入る。


ロッキーは派手に後ろに吹き飛ばされてそのまま床に倒れる。


対するドープは脇腹に手を添え苦しそうな表情をするが倒れることは無かった。


「1」


レフェリーはロッキーの側に駆け寄り床を叩きながらカウントを始める。


「2」


ロッキーはレフェリーがカウントを始めたタイミングで体を起こしており、少ないカウント数で立ち上がることができた。


カンカンカンカン!


このタイミングで1ラウンド終了のゴングが鳴らされ二人はセカンドの待つリングの角にいき、設置された椅子に座って水分を補給する。


「おい、お前ずっと脇腹を狙われてたが大丈夫か!?」


セカンドのコーチからすぐさま心配の声がかけられる。


ドープが脇腹の傷の事を話したのはジャッカルとこのコーチだけであり、他の人には心配をかけないよう伝えていない。


“あぁ、ロッキーの最後の一撃は腰の入っていなかったジャブだったからまだ平気だ。

ただ、最初のあの一撃は不味かった、、

次は耐えれるかわかんねぇ”


ドープは呼吸を整えながら小さい声で自身の状況を説明する。


「なら、最初の予定通り次のラウンドでKOするしかねぇ!

 奴の注意はお前の右半身に向いている。

 左を積極的に使ってけ!」


"おう!"


ピーー!!


休憩終了の笛が鳴らされるとロッキーとドープは立ち上がり再び二人で向かい合う。


お互いがステップを踏みながらリングの中央まで来ると再び軽いジャブを撃ち合って相手の動きの読み合いをしていく。


ロッキーの顔を見ると不適な笑みを浮かべており何かを企んでいるのが分かる。


“(後手に回ってたら勝てねぇ。

攻める!)"


ドープは右手はガードに専念しながら左手で早いジャブをロッキーの胴体と顔を続けて放つ。


ロッキーは胴体への一撃には反応して避けることができたが、続く顔への攻撃は避け切れず受けてしまう。


しかし、速さ重視のパンチだったため倒れるほどの威力では無かったようだ。


ロッキーはドープを睨みつけると素早く距離を縮めてジャブのラッシュを放って来た。


ドープは全てのパンチを避けているが、徐々にリングの角に追い詰められてしまう。


"(しまった!)"


ドープがロッキーの狙いに気づくがもう手遅れだった。


ロッキーは角に追い詰められ逃げ場の無いドープの右脇腹を左手で何度も殴りつける。


ドープは必死に右腕を下げてガードをするが、衝撃は腕を通って右脇腹まで届いてしまう。


ドープはたまらず床に倒れてしまいダウンをしてしまう。


「1」


「ドープ立つんだ!!

 やり返せ!!」


レフェリーがカウントを始めるとセコンドにいるコーチが必死に叫んでいる。


「2」


ドープは口の中に逆流してくる血液を必死に耐える。


「3」


そして、苦しそうにしながらも起き上がるために足に力を入れる。


「4」


ドープは吐き気を堪え口の中に溜まった血液を飲み込む。


「5」


"うぉぉぉお!!"


ドープが叫びながら立ち上がるとレフェリーはカウントを止める。


"はぁはぁはぁ"

「はぁはぁはぁ」


二人は再度拳を構えて向かい合う。


ドープは度重なる傷跡に受けたダメージによる疲労で息が荒くなっているが、同様にロッキーも先ほどのラッシュやドープを翻弄するために常に移動していた事による疲労が現れていた。


“フゥゥゥ"


ドープは深呼吸をして息を整えると左手を前に出して牽制しながらロッキーに近づいていく。


二人が再びパンチの届く距離に近づくとドープは何と今まで右脇腹を守っていた右腕を顔まで上げて攻撃的姿勢となる。


(何?

こいつ何を考えてやがる?)


ロッキーは自らの弱点を露わにしてきたドープに対して驚きの表情を見せるが、すぐにパンチを打ち込むことはしなかった。


(どうせこっちが仕掛けた所をカウンター狙ってんだろ?)


ロッキーはフェイントをして探りを入れてくるだけで攻めてくる様子はない。


“(乗ってこねぇか。

だったらこっちが責めるだけだ!)"


ドープは左手のジャブをロッキーの顔目掛けて放つ。


しかし、これをロッキーははたき落とすとお返しとばかりにドープの顔面にジャブを打ち返す。


"(こいつにだけは負けらんねぇんだ)"


ドープはそれを避けることができず喰らってしまったが、それでも動じる事はなく続けてジャブをロッキーの腹に打ち込む


(こいつっ!

その体でノーガードの殴り合いをするつもりか!?)


ロッキーは胴体へのダメージで息が出来なくなるがそれでもドープの空いた脇腹にパンチを繰り出す。


"ぐぁぁあ!"


ドープはあまりの痛みに叫んでしまうが、それでも下がることはなくロッキーの顔面にジャブを打ち込む。


"(こいつのやり方は気にくわねぇ、、

ここで俺様が負けちまったらこれから先もこいつは卑劣な手を使い続けるだろ)"


ロッキーとドープは至近距離でのインファイトとなるとノーガードでお互い殴り続ける。


ロッキーはドープの弱点である脇腹の傷跡を重点的に殴り続けるが、ドープは叫ぶだけで一向に倒れることはない。


「なんなんだ、、

 どうして倒れない!!

 良い加減死にやがれ!!」


ロッキーは腰の入った一撃をドープの脇腹に打ち込む。


しかし、先ほどまで脇腹にパンチが当たるたびに上げていた叫び声が聞こえなくなった。


違和感を感じドープの顔を見てみると何とドープは白目を向いていた。


"(俺様に怪我を負わせるだけならまだしも、小さなガキを利用しやがった)"


ドープは目の前が真っ暗になるが何故か意識ははっきりしていた。


"(あのガキはこれから拭いきれない枷を背負って生きていかなきゃならねぇ)"


目が見えていないはずのドープだが、自身の脇腹へとパンチが当たった直後にロッキーの胴体にパンチを繰り出す。


"(こんなやり方は気にくわねぇ)"


ロッキーは気絶して動けないと思っていたドープからの不意の一撃を受けてたじろいてしまう。


“(気にくわねぇ奴はぶっ飛ばす。

それが俺様の生き様だ!)"


続けてドープは右手でアッパーを放つと拳はロッキーの顎に綺麗に当たり、ロッキーは宙を飛んで背中からリングの床へと叩きつけられる。


「1」


ロッキーは地面に倒れたまま動く気配は無い。


「2」


対するドープは全身の力が抜けておりかろうじて立っているような状況だ。


「3」


ロッキーの指がピクリと動き出す。


「4」


(どんな事をしてでも勝つんだ)


「5」


ロッキーは握り拳を作ると力を入れて体を持ち上げ始める。


「6」


(勝てなきゃ俺に勝ちは無いんだ)


「7」


ロッキーの両膝を折り曲げて立ち上がろうとする。


「8」


「この試合に勝ってアリスを救うんだ」


「9」


ロッキーは一瞬立ち上がるがすぐに足がもつれてしまいうつ伏せに倒れてしまった。


「10」


カン! カン! カン!


勝利のゴングが鳴らされる。


「勝者はドープだぁぁぁあ!!!」


解説が声高らかにドープの勝利を宣言する。


だが、ドープは顔を地面に向けながら腕をだらんと垂直に下ろした体勢から動かない。


「ドープ!!

 大丈夫かぁ!!」


真っ先にセカンドのコーチがドープに近寄ってくると血相を変えて叫び出す。


「救急車だ!!

 救急車を呼んでくれ!!!」


ドープの脇腹からは大量の血液が流れ出ており、ドープの口からも血が流れていた。


キツく縫われたはずの傷跡であったが、度重なる脇腹へのダメージで傷口が開いてしまったのだ。


観客の悲鳴やコーチの叫び声など辺りは騒然としているが、もうドープには聞こえていない。


ドープは勝利のゴングと共にこの世を去ったのだった。


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