監視室
「ガハッ!」
しかし突如アインの周囲の地面から大きな鉄の針のような物が急激に伸びると狼男の両肩を貫き動きを止めた。
アインと狼男のいる地面は鉄の絨毯のような物で覆われており、いつの間にかアインの手に持っていた鉄の棒が無くなっていることから鉄の棒を変形させたのだろう。
「舐め、、るな!!」
狼男は苦しみながらも力の入らない筈の両手で自身を貫いている鉄を握ると徐々にヒビが入っていく。
{後は頼んだわよ}
アインは最後の力を振り絞ったようで気絶するように目を閉じる。
そのタイミングで狼男は自身を貫く鉄を握りつぶす。
まだ肩を貫く鉄は残っているが地面に固定されていた状態からは解放された。
すると間髪入れず狼男の首元にタコの触手のような物が巻きつくと一気に締め上げる。
「なっ、なんだ!?」
その触手は目の前のパスの両腕から伸びており、狼男は触手を両腕で離そうとするが振り切れる程の力はもう残っておらず、そのまま白目を向いて気絶してしまった。
《やった!!
倒したよ!》
〈た、助かった、、〉
意識世界ではジャックが両手でガッツポーズを決める中、レオンはホッと胸を撫で下ろしている。
しかし、下の階の地下6階からドタドタと複数の足音が向かって来ており、休む暇なくこの場から逃走をしなければいけなくなってしまった。
[点検口の中に戻る時間はないか、、
レオン交代だ!]
パスは地下4階へと上がる階段に走り始めると意識世界のレオンに向けて言葉を送る。
〈え!?
あぁもう出番がくるの早すぎるよ、、〉
意識世界にいるレオンは頭を抱えながらも黄色く輝く水晶の元へ駆け寄ると、戸惑いながらも触れる。
しかし、レオンが水晶に吸い込まれる事はなく主人格はパスのままのようだ。
〈だ、ダメだ!
入れ替わらない!!〉
レオンは焦ったように大きな声で叫んで伝える。
[くっ!
交代にはある程度の時間のインターバルが必要だったのか!]
「ウェアさんが倒れている!?
いや、侵入者の確保が最優先だ!」
地下6階から上がって来た白服の男達が気絶した狼男の存在に気づくが、構わずパスの事を追ってきた。
[(俺のこの触手は限りなくタコのものに近い。
なら'あれ'もできるはずだ。
喉の奥に何かが溜まっている違和感がずっとあったからな)]
パスは近づいてくる白服の男達の方に振り返ると、思い切り息を吸い込む。
「捕えろ!!」
白服の男達は構わず刺股を前に突き出しながら階段を登ってくる。
対するパスは大きく口を開けて黒い墨のような液体を白服に向けて階段の上から吐き出した。
「な、目が!!」
白服の男達は全員顔に墨がかかってしまいその場で立ち止まってしまう。
その隙にパスは急いで階段を駆け上っていった。
「ほ、報告です。
地下5階で戦闘の形跡あり。
交戦していたと思われるウェアさんが気絶しておりました」
白服の一人が目を閉じながらも腰に差してあったトランシーバーを取り出してどこかへ連絡をしていた。
白服の通信先は地下3階に存在する警備室の監視室に繋がっており、ウェアとアイン達が戦っていた一連の映像は警備室にいる全員に見られていた。
「あぁ、監視カメラーで一部始終は確認していた。
新入者は透明化、鉄生成、体の触手化など複数の能力を持っているようだ。
対峙する際は重々気をつけるように」
監視室の中央に座るガタイの良い男性が白服にマイク越しに連絡すると通信を切った。
男の名前はフィジー・ランタナ。
なぜか上裸で仕事をしており、周りの人間もその事には触れていない。
警備員達の取りまとめを行っており、白と黒の混ざった髪色に全てを見透かすような凛とした瞳を持っている。
「あらあら、ウェアちゃん意気揚々と侵入者の捜索を買って出たと思ったらやられちゃったじゃ無い」
フィジーの真後ろに立つ女性のような話し方をする人物が顎に手を当てながら話す。
しかし、その口調とは裏腹に容姿はイカついスキンヘッドの男である。
彼(彼女?)の名はアシド・アザレア。
オカマだが、作務衣と言うお坊さんが来ているような服を着ている。
「だから、一人で行くなってあれ程言ったのよ!
それなのにあのバカ犬は言うこと聞かずにすぐ飛び出すんだから」
アシドと同じようにフィジーの背後で監視カメラを見ていた身長の小さな可愛らしい女性が続けて口を開く。
この女性はアミー・ルコウソウ。
左目に眼帯をつけており、軍服を身に纏っている
見た目は20歳程であるが実年齢は30を超えている。
「ただ、侵入者とナリアは一緒にいなかったわねぇ」
「侵入者が出て来た点検口に一緒にいた可能性が高いな」
「まぁナリアに戦闘能力は無いから捕まえるのは楽勝よ」
アシド、フィジー、アミーの順に口を開いて現状を整理する。
「侵入者とナリアを二手に別れて追うことにする?
私は侵入者退治に行きたいけどね」
アミーは腰に刺した軍刀を抜いて空を切りながら素振りをしてヤル気を見せる。
「いや、あの侵入者は危険だ。
それにナリアは俺らでは無くても捕えられる。
三人であの侵入者を始末するぞ」
「はぁい」「分かったわ」
フィジーは椅子から立ち上がると監視室から出ていくとアシドとアミーも同じく監視室から出て行く。
「(ふふふ)」
その際に、アシドは監視カメラを一瞥して微笑みを浮かべていたが、フィジーとアミーは気づくことは無かった。




