氷雪
地下9階へと下って行く二人は階段を降りる度に下がって行く温度に寒気を抱いていた。
《これは、、
まさか、地下に収容されている人物というのは氷を生み出すのかい?》
階段を半分程下ると、階段には霜が張ってたり歩く度にパキパキと音を立てている。
「どんな力を持っているかは知らないんだ。
ただ能力に目覚めた瞬間に実験室を一部屋崩壊させたって噂だよ」
ナリアは唇を青く染めて歯をカタカタと鳴らしながらとても寒そうに話している。
『そういえば、さっき地図を見た時に赤い✖️印が付いていたお部屋あったよね!』
{確かにね。
恐らく崩壊した部屋っていうのはあのXの部屋のことね}
意識世界でノースとアインは最初に火葬場から出てきた際に見つけたB6Fのマップのことについて思い出したようだ。
《なるほどね》
ジャックは小さく相槌を送ると二人はとうとう階段を降りきり地下9階に辿り着く。
「な、なんだあれ?」
しかし、地下9階の廊下は全て氷付いており、尚且つ不思議な機械が三体もいた。
ジャックとナリアは階段の影に隠れながらその機械を観察する。
機械の形は胴体は四角く、そこから左右にアームが生えておりそこには大きな銃のような物が二丁持たされている
胴体の上には丸い顔のパーツと真ん中に赤い瞳が装備され、足元にはギザギザのタイヤが着いている。
その機械は両手の銃からひたすら冷気を放っており、廊下全てが凍りついているのはこの機械が原因だとすぐに分かる。
「なんだ?
ポイズが来たかと思ったが、どうやら違うみてぇだな?」
一本道であるこの廊下のずっと奥の牢屋に収容されている男が呟く。
《一番奥の牢屋にいるんだよね?》
ジャック達からは牢屋の存在は視認できるが中にいる人物までは見えていないようだ。
「あぁ、そのはずだ」
ジャックからの問いにナリアが短く頷くと、ジャックは再び瞳を黒く染める。
《フゥ、、
とりあえずあの機械の電源を一体ずつ落としていくよ》
ジャックは度重なる力の使用で疲労が溜まっているようだが、機械に手を向け力を使ってゆく。
「待ってくれ。
単純に電源を落とすだけじゃ気づかれるんじゃないのか?」
ナリアがジャックの肩を軽く叩いて止めようとすると、ジャックは体勢を崩して座り込んでしまう。
《すまない、、
思っていた以上に疲労が溜まっているようなんだ。
今はあの三体の電源を落とすことで精一杯だよ、、
だから、俺が力を使い終わったら代わってくれ》
ジャックは体を震わせながら立ち上がり話す。
最後の一言は意識世界へと向けた言葉だろう。
ジャックは続けて機械へと手を向けると一体ずつ電源を落としていく。
電源を落とした機械は赤い瞳から光を失い、黒ずんでいく。
"よーし!
次こそは俺様が出るぞ!"
意識世界ではドープが指を鳴らしながら水晶に近づく。
[少し待ってくれドープ。
アイン、一回水晶に触ってみてくれないか?]
しかし、ドープの進路を遮るようにパスが左腕を伸ばすと遠くにいるアインに声をかける。
“あぁ?
なんだまたかよ?"
ドープはまたしても変わることができず不機嫌な様子を見せる。
{えっ? アタシ?
いいけど、、
そろそろドープが切れちゃうよ?}
アインは少し苦笑いを浮かべながらも水晶へと足を運ぶ。
[いや、恐らくだが大丈夫だ]
パスがメガネをあげながら話すとアインが水晶に触れてみる。
だが、紫色に輝く水晶に変化は無くアインは吸い込まれることは無かった。
【やはり、変わらんか。
なら、一度変わった者は何らかの条件を満たすまで変わらないとみて良いじゃろう。
現状まだ変わっていないのはドープ、レオン、それにワシじゃな】
ライは先ほどジャックが変わる前にパスが水晶に触れて何も無かった事を踏まえ、現状を説明する。
[あぁ、今後警備に見つかってしまって戦闘が起きてしまう時、ライさんとレオンでは対応できないであろう。だからここでドープが変わってしまうのは得策では無いんだ]
そしてパスもライの説明に同意しながらドープを説得しようと向かい合って話す。
『ドープさんは切り札って事なの!?
かっこいい!!』
ノースは今の話を理解できているのか分からないが無邪気な笑顔でドープの事を褒める。
"切り札?
俺様が?"
ドープはノースに言われた切り札という言葉を噛み締めている。
[あ、あぁそうだ!
お前は僕たちの切り札なんだ!
だから今出ていったら困るんだよ!]
パスはドープの表情が少し笑顔になった様子を見てここぞとばかりに煽てていく。
"いいだろう!
まぁヒーローは遅れて登場すると相場は決まってるからな!!”
ドープは機嫌が良くなり、両手を腰に当てて大笑いをすると水晶から離れていく。
【今回は収容されている男と対話せんといかん。
レオンよ、ここはしがない老人に任せてくれないかの?】
〈う、うん!
ライさんが変わってくれていいよ!〉
ライがレオンに優しく問いかけると、レオンは慌てたように右手をライに向けて順番を譲る。
《こっちもちょうど終わったよ、、》
現実世界ではジャックが三体の機械の電源を切り終わったようだ。
しかし、この寒さの中でジャックは汗をかいておりとても辛そうにしている。
【うむ、よくやってくれたの】
ライが水晶に触れるとライの体は吸い込まれ、代わりにジャックが水晶から吐き出される。
《ハァハァ、、
ライさん、体は大丈夫かい?》
ジャックは息を切らしながら、体の主導権を交代したライを気遣う。
【うむ。
少し体は火照ってはいるが、疲労感などはないのぉ】
ライは体を少し動かしてみるが、特に異常は無いようだ。
「ん?
口調が変わったな、また交代したのか?」
突然の口調の変化にナリアはジャックでは無くなった事に気づく。
【あぁ、ナリアよ。
ワシはライと言う。
よろしく頼むぞ】
ライは右手を差し出すとナリアはすぐに握り返す。
「はは、その姿で爺さん口調だと違和感しか無いな」
確かに今のライの姿は若い中世的な姿の女性であり、ライの口調は容姿に合っていない。
【では、行こうかの】
ライは軽くナリアに自己紹介をすると、二人は凍っている廊下を進み始める。




