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恋してしまった、それだけのこと  作者: 雄樹
第七章 【未来16歳/沙織28歳】
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第97話 合宿③【未来16歳/沙織28歳】

 とても綺麗なホテルだった。

 私たちは荷物を持ちながらロビーに入り…特に凛は全員の中で一番重い荷物を持っていて、その重さの大部分はイベント会場内で買った本の数々だったのだけど、他の人には決してその荷物に触らせようとはしていなかった。


「凛、大丈夫?」

「ありがとう未来、大丈夫だから、安心して」


 そう言いながら、息を切らしている凛。

 でもいつもの冷静な凛に比べて、少し高揚しているのが分かる。


「一緒に沢山まわったもんね」


 嬉しそうに語り掛けてくる結城先生に対して、「あ、ありがとうございます…」と素直にお礼を言っている凛が、そこはかとなく可愛かった。


「それじゃぁ、部屋割りを発表するわね」


 鍵を手にした結城先生はみんなを集めると、鍵を渡しながら伝えてくれる。


 結城先生と沙織さんの、大人組の部屋。

 神美羅先輩と楼蘭先輩と朝比奈さんの3人部屋。

 私と凛と葵の3人部屋。

 男の子の雪原くんは、1人部屋。


「19時に夕食になるから、それまでは部屋でゆっくりしていて。それじゃぁ、解散っ」


 手を叩く結城先生。

 それにしても、結城先生、しっかりしているなぁ、と思う。沙織さんも頑張ってくれているのは伝わるんだけど、なんていうか、結城先生には「余裕」があるようにみえる。その余裕は力になっているんだろうけど…でも、やっぱり、私は沙織さんのあの一生懸命なところがたまらなく好きだ。

 今回の合宿で、沙織さんの好きなところがたくさん増えた。前から好きだったのに、もっともっと好きになってしまった。


 それに。


(今夜…)


 胸元に隠したペンダントにつけた指輪を、ぎゅっとする。

 イベント会場内で沙織さんがぼそっとつぶやいてくれた「覚悟」っていう単語が、頭の中をぐるぐるめぐって離れない。


「ふぅ…」


 ため息をついて、緊張して、ドキドキして。

 合宿の夜は、はじまったばかりだった。



■■■■■



 鍵を開けて、部屋に入る。

 私たちの部屋は3人部屋で、見てみると、隣り合ったベッドが2つと、ちょっとだけ離れたベッドが1つあった。


「私と凛はこのベッドね!」


 そう言うと葵は駆け足でベッドに近づくと、そのままの勢いでベッドに飛び込んだ。柔らかいマットレスが沈み込み、葵の身体を優しく迎え入れる。

 当然というか、なんというか。

 葵が選んだベッドは隣り合ったベッドのひとつであり、ちょいちょいと凛を隣のベッドへと誘っていた。私はもちろん、少し離れた独立したベッドを割り当てられる。


「仕方ないわね」


 ちょっとため息をつきながら、凛はうながされたとおりのベッドに腰をかけた。手にしていた荷物を床に置く。床が少しきしんだような気がする。いったいどれだけ沢山の本を買ったのだろう。


「凛、買った本見せてー!」


 伸ばした葵の手がぱしんとはたかれる。

 いくらふたごとはいえ、譲れないものは確かに存在するのだろう。葵ははたかれながらも嬉しそうで、そのままベッドに横たわっていた。


「未来もお疲れ様」


 凛が優しく笑ってくれた。もしも私も凛の本に手を出したらどうなるのかな?という疑念が浮かばなかったといえば嘘になるのだけど、今の私はそれどころではなかったので、普通にベッドの上に座り込んだ。


「うん。凛もお疲れ様。楽しかったね」

「…うん。楽しかったし…それに…」


 ここに、みんなで来れただけで、私は満足、と凛は言った。

 一緒に、というのが、大切。

 本来なら…あの生徒会長選挙で…凛は私たちから離れていた可能性だってあったんだった。そう思うと、今でも恐ろしくなる。

 人間関係って、少しのきっかけで大きく変わることがあって、一度変わってしまったものはもう二度と同じ形には戻らない。


「私も、凛と一緒で、よかった…本当に嬉しい」

「未来…」

「あーーー!そこ!いちゃついちゃ、駄目ー!」


 絶対にいい雰囲気にさせないマンこと葵が、見つめあっていた私と凛の間に割り込んでくる。この子は、もう、本当に。

 少し笑いそうになって…ううん、実際に、私は笑っていた。


 こんな日常が…戻ってきて…失うことが無くって。


 本当に、よかった。




■■■■■



 ホテルの食事はビュッフェ形式になっていて、時間に集まったみんなで、いろいろ好きなものを取ってテーブルについた。


「すっごく美味しそうー!」


 一番テンションが上がっているのは朝比奈さんで、それ、本当に食べきれるの?というくらい沢山とってきて目の前に並べていた。


「ほらほら、雪原くんもたくさん食べて、一緒に大きくなろうよ!」

「…いや…僕は別に…」

「美味しいねー!」


 とても楽しそうで、見ているこちらも楽しくなってくる。

 あいかわらず神美羅先輩は食事ではなく飲み物ばかりとっていた。神美羅先輩がものを食べている姿…本当にみたことがないな、と思う。

 美味しそうにトマトジュースを飲みながら


「未来、凛、葵、楽しんでいるかい?」


 と手を振りながら、楼蘭先輩のお皿の上に辛そうなものばかりをひょいひょいと入れている。

 あれ、絶対に勝手にやっているよね、と思っていたら、案の定楼蘭先輩に怒られていた。


 少し離れた席で、結城先生と沙織さんが座っていた。

 手元にはお酒の入ったグラスが置いてある。


(沙織さん…お酒…飲むんだ…)


 そういえば、沙織さんがお酒を飲んでいる姿を見たことがなかった。家にはよくやってきてくれているけど、お父さんやお母さんが飲んでいることはあったけど、沙織さんはいつもソフトドリンクとか紅茶とかだった。


(いつもより…なんか…大人、って気がする)


 そう思いながら、自分の目の前にあるオレンジジュースを見て、なんとなく、差を感じてしまう。


「未来、これも美味しいよ」


 凛が柔らかそうなお肉をとってきて、私に分けてくれる。黒髪が綺麗で、落ち着いていて、やっといつもの凛に戻ってきた、って気がする。


「うん、ありがとう、凛」


 言いながら、口にする。美味しい。

 食べながら、でも視線は沙織さんに向けていた。

 お酒を飲んでいる沙織さん。

 いつもより、少し大人びている沙織さん。

 グラスにつける唇。

 紅い。


「未来?」

「あ、うん、なに?」

「また来たいね」

「…うん」


 また、来ようね。

 ワクワクと、ドキドキと、いろんな感情が胸に入り込んで。


 夜の食事は進んでいった。




■■■■■



「いいお湯だったよ…最初にいれてくれて、有難うね、凛」

「どういたしまして」


 部屋に戻り、お風呂に入る。

 疲れが取れていくのを感じていた。なんだかんだいって、朝から今までずっと緊張していたから、お湯で身体を溶かすのが気持ちよかった。


「じゃぁ、次は私が入ろうかな」

「私も!一緒に入る!」


 凛が立ち上がると、同時に葵も立ち上がってきた。

 あからさまに、凛は嫌そうな顔をする。


「えー…一人で入りなよ」

「いいじゃん。たまには一緒に入ろうよ」


 それでも、葵は譲らない。ぐいぐいと来る。あんまり近づきすぎて、凛の顔に当たっている。凛はやれやれ、といった顔をすると、


「…仕方ないなぁ。今日は特別よ」

「やったぁ」


 葵の誘いに、おれる。葵は本当に嬉しそうに飛び上がると、早く、早く、と凛の背中を押していく。


「ゆっくりしていて」

「…葵と一緒だと、長くなるんだよね…」


 葵、一時間くらいはお風呂にはいるんだから、と、そう言いながら、凛と葵は一緒にお風呂の中に消えていく。

 ゆっくりしているから、未来もゆっくり休んでいてね、という凛の声と、「早く脱いでー!早くー!」とはしゃいでいる葵の声が聞こえてきた。

 私はホテル備えつきの浴衣に着替えたまま、窓際に歩いていった。

 もう外は暗い。

 窓ガラスが鏡のようになっていて、そこには浴衣姿の私の姿が映っていた。


(…まだ私、子供だなぁ)


 さっきの夕食でみた沙織さんの姿が忘れられない。

 沙織さん…すごく綺麗で…大人びていて…私とは、全然違う。


(恋人、なんだよね)


 つい、比べてしまう。私は沙織さんの恋人で、沙織さんも私の恋人のはずなのに、でも、沙織さんはやっぱり綺麗な大人で、私はまだまだ子供の高校生なんだな、と現実に押しつぶされそうな気がしてしまう。


(こんなに好きなのに)


 私ばかりが好きなわけじゃない、とは、思う。沙織さんだって、私のことを、ちゃんと好きでいてくれる…はずだと、思う。

 月を見る。

 好きでいて…くれて…いるよね。


 鏡のようになった窓ガラスに、光が入り込んでいた。

 私の後ろ、私のスマホ。

 私のスマホが、光っているのが見えた。


(?)


 振り返り、手に取って、心臓が、どくんとなる。


『未来…いま、いい?』


 沙織さんからの、メッセージ。

 いま、沙織さんのことを思っていたばかりなのに…いや、私が沙織さんのことを思っていない時なんてないか。

 急いで返事をする。


『はい。大丈夫、です』


 既読。

 そして、返事がくる。


『今から…私の部屋…これる?』


 心臓が、なった。

 本当に、どくんって、音がした。

 私は震えながら…緊張しながら…指をスマホに伸ばし…


『はい』


 と、返した。

 そして、唾を飲み込んで、凛と葵がお風呂に入っているのを確認して、そして。

 外していたネックレスから、指輪を取り出すと。

 指にはめて、気づかれないように、そっと。


 部屋を、出た。




■■■■■



 沙織さんと、結城先生の部屋の前にきて、息を飲みこんで、そっと2回、ノックをした。

 しばらく待つと、ガチャ、という音がして、扉が開いた。


 いい匂いがする。

 ホテルに備え付けられていたソープの匂い。

 今の私と同じ匂い。


「未来」


 沙織さんだった。

 私と同じ、ホテルに備え付けの浴衣を着ている。


 私は周囲をちょっと見渡して、誰もいないのを見て、そのまま部屋の中に入った。


 部屋の中は薄暗くて、電気がつけていなかった。

 だから、沙織さんの匂いだけが私を包み込んでくれる。


「ごめんね、急に呼び出したりして」

「ううん」


 私も、会いたかったから。

 私の後ろで、扉が閉まる。

 廊下の電気も中に入ってこなくなって、部屋の中は、月明りしかなくなった。


 抱きしめられた。

 ソープの匂い。沙織さんの匂い。

 頭の奥がしびれるような気がする。


「駄目ね、私」


 耳元で、沙織さんがつぶやいた。


「先生なのに、合宿中なのに、我慢しなくちゃいけないのに」


 言いながら、身体を離す。

 沙織さんの顔がみえる。

 沙織さんの顔は、月明りの中でも紅潮しているのが分かった。


「未来に会いたくて、会いたくて、2人きりになりたくて、仕方なかったの」

「私だって…」


 同じです。

 沙織さんと、2人きりになりたかった。


 でも合宿中だし、そんな機会なんてないと思っていた。


「結城先生…は?」


 心に浮かんだ当然の疑問を口にする。

 沙織さんは、笑い顔を浮かべた。いつもの優しい笑い顔じゃなくって、ちょっと悪そうな、大人の笑い顔だった。


「結城先生…朝から運転していて疲れたから…ホテルのアロママッサージに行くって出ていったの…」


 出て行って、くれたの。

 と、沙織さんは言った。いろいろ含んだものの言い方だった。悪い沙織さんだった。でも、そんな沙織さんも、また魅力的だった。


「だから…2時間くらいは…かえってこない…よ」

「…私も…」


 凛と葵…いま…お風呂に入っていて…一時間くらいかかるって…


「うふふ」

「あはは」

「私たち…悪い子だね」


 悪い子だった。悪くて、駄目な子で、そして。

 あらがいようもなく、恋人、だった。


「私ね、いま、お酒、飲んでるの」

「…うん、沙織さん、とっても綺麗だった…なんか大人っぽくて、少し沙織さんが遠くにいるみたいで、ちょっとだけ寂しかった」

「あのね、未来」


 沙織さんの吐息が近い。

 お酒の甘い匂いが混じっている。


「私、臆病だから、お酒を言い訳にしようと思っていたの」

「言い訳?」

「うん、言い訳」


 教師なのに、年の差あるのに、女同士なのに、それでもとめられないのは、お酒のせい。


「でもね、やっぱり、違うの」

「…」

「私ね、未来が、欲しいの」


 お酒の力を借りているんじゃなくって、自分の心で、そう思うの。


「駄目な大人で、ごめんね。駄目な教師で、ごめんね。でも、駄目。もう自分に嘘つけない。未来…好き…大好き」

「私だって…大好きです…っ」


 ぎゅーって、抱き着く。沙織さんの匂いに包まれる。ううん。今の私、沙織さんと同じ匂いだから、私と沙織さんで同じ匂いが混ざり合って、どっちがどっちの匂いだったのかも分からなくなる。


「それに…私だって、悪い子です。学校でも、家でも、合宿中でも、ずっと沙織さんのことばかり考えているし、こうしたいって思ってますもん…」


 ぎゅーっとした後、指を見せる。

 そこにはまっているのは、私の大事な宝物の指輪。


 沙織さんは、そっと、その指輪にキスをしてくれた。

 沙織さんの唇が月の光を淡く反射している指輪に照らされて、紅い。


 そして、沙織さんも、手を見せてくれる。

 その指先にある、私とお揃いの指輪。

 私もそっと、その指輪にキスをする。


 沙織さんの指輪のついた指を頬にあてる。金属の冷たさが頬にあたって、気持ちいい。

 手をぎゅっと握る。

 目を見つめる。


 沙織さんの目に、私が映りこんでいる。

 たぶん、私の目にも、沙織さんが映りこんでいる。


 キスしたい、とは言わなかった。

 キスしたい、とも言われなかった。


 私たちは2人とも、同じことを思っていて、手を握り合ったまま、呼吸が近づいてきて。


 合宿中のホテル。

 みんなと一緒に泊まっているホテル。

 その中で、悪い子同士の私たちは。

 目をかいくぐって、隠れて、こっそりと。


 月明りの差し込む部屋の中で、そっと、キスをした。




 指先が震えているのが分かる。

 唇が、指先が、身体全身が、そのすべてが沙織さんを感じていた。

 胸の奥がゆっくりと引き寄せられていく気がする。


 触れた唇が、深く沈んでいくような気がする。


 気持ちいい。

 気持ちよくて、たまらない。

 頭の奥が溶けて消えてしまいそう。

 もうこれ以上の気持ちよさなんて知らない。


 そう思いながら、沙織さんを感じていたら、


(…)


 柔らかいものが。

 やわらかな感触が、そっと、沙織さんの唇を押し広げていた。


 あたる。

 入る。


 その瞬間、私は思わず肩が震えた。

 息を吸い込もうとしても、沙織さんの温度だけが先に流れ込んできた。


(沙織さんの…)

(舌先)


 口の中に広がる、自分のものじゃない柔らかな温度。湿った液体が、私のものなのか沙織さんのものなのか分からなくなっていた。

 どこまでが私で、どこまで沙織さんなのか、境界がほどけていく感覚に溺れていく。


(甘い…)


 沙織さんの…甘い。

 触れ合うたびに、舌先に柔らかな熱が絡みこんでいく。息が混ざり合う。沙織さんの息からは、少しだけアルコールの香りが混じりこんでいた。私の思考の粒も、ひとつずつ溶け落ちていく。


(私の中に…沙織さんが…入ってくれている…)


 嬉しい。嬉しくて、気持ちいい。

 絡み合う舌が、心までからめとってくれているみたいで、私はもっと強く沙織さんを抱きしめる。沙織さんの体温が伝わってくる。暖かくて、気持ちよくて、溶けあって2人で一つになるような気がする。


(沙織さんが、私を…求めてくれている…)


 それが、何よりも嬉しい。私、求められてる。私をあげたい。私の全部を、沙織さんに捧げたい。

 口元を濡らしながら、そう思いながら、その奥で、また別の想いも浮かび上がってくる。


(私だって…沙織さんが…欲しい)


 絡んだ舌先を感じながら、今度は逆に、私の方から押し込んでいく。

 沙織さんの唇を感じて。さらにその先に。

 沙織さんの、中に。


(暖かい…)


 沙織さんの口の中は暖かくて、そして、とろりとしていた。

 甘くて、美味しくて。これは。


(…沙織さんの…唾液…だ)


 と気づいた瞬間、私の中で何かが弾けるのがわかった。

 駄目なことしてる、って、分かってる。

 でも、もう止まらなかった。


 欲しい。

 全部、欲しい。


 あげたい。

 全部、あげたい。


(好きです)

(好き…好き…大好き)


 沙織さんの中に入って、入られて。

 混ざって、どろりとして。

 心までどろりと混ざり合って、それが気持ちよくて。


 ずっとずっと、私たちは月明りに照らせれながら、お互いを求めあうようなキスを続けていた。


 


 長い長いキスの後。

 ようやく、私たちは唇を離して、お互いを見つめた。


 大好きな人が、目の前にいる。

 大好きな人と、キスしちゃった。


 幸せすぎて、たまらない。



「未来…」


 沙織さんが、とろんとした目をしている。駄目な大人だった沙織さんは、さっきディナーの時にみた悪い大人とはまた違った意味で、悪い大人に見える。


 沙織さんは、そっと、唇の端に指をやった。

 その指先が濡れる。

 沙織さんは、ぺろっと舌を出す。


 …さっきまで、私の中に入っていた、舌。


 そして、指先に残っていた液体を舐めると、悪そうな笑顔を浮かべる。


「…未来の、美味しい」

「もうっ」


 すごく恥ずかしくなる。

 もう人に見せられない顔してる。

 私は顔を近づけて、またキスする。


 今度は、軽いキス。


 すぐに唇を離して、笑う。


「沙織さんだって、同じ味じゃないですかっ」


 えへへ。

 もう、私も、駄目だ。


 2人で、壁にかかっている時計を見る。

 時間を見て、それで、どちらが声をだしたのかは分からないけど、同じことを思って、言った。


「まだ…」


 時間は、あるから。


 もう一度…


 欲しい。






 この夜。


 私たちは、結局。


 7回、キスをした。









■■■■■



 翌朝。

 かえりの車の中で、みんな、さすがに疲れ切って寝ていた。


 運転を結城先生だけに任せるのは心苦しいものがあったけど、でも、もう頭がとろんと溶けていて駄目だった。


「いいわよー。ついたら教えるから、みんな、寝ていてね」


 結城先生は上機嫌にそう言うと、嬉しそうにハンドルを握って運転してくれた。

 揺られながら、夢心地の中で。


 私は幸せを感じながら。


 


 夢の中でも、また。



 沙織さんと、キスを、していた。

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