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走る神話は機械仕掛け  作者: 映見明日
第1章 ボーイ・ミーツ・マシーン
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簒奪されし神の奇跡

 「……ディバインエンジン。1基デ国一ツ分ノエネルギーヲ賄エルノニ無公害。ソシテ世ノ理ヲ変エル、チカラガアル」


 シャッターの締め切られたガレージの中、ノアが言った。


 そのカメラアイは、床に座り込み壊してしまったナナコの携帯の修理を開始するユウの姿を映していた。


 粉々に破壊された物などネジを締めて修理というわけにはいかない。というかそんなもの修理できる奴はこの世にいない。

 だがそれを可能とするだけのテクノロジーを持つが故にユウは神と呼ばれるのだ。ユウが砕けた破片をパズルのようにくっつけて指でなぞるとあら不思議。マジシャンが切れたロープを一つにするみたいに破片は元の姿を取り戻していく。


 それこそディバインエンジンの力の一端だった。世界の法則を超越するという現代の技術レベルを逸脱した力。

 その力を見ながらノアは呟く。


 「マサカ本当ニ、アノロボットハ……」


 最後まで言わずとも何を言いたいかは分かる。修復作業を続けながらユウは口を開く。


 「永久機関など真の能力の副産物に過ぎない。ディバインエンジンは高位次元に接続し、条件次第でどんな奇跡をも可能にする」

 「物性改竄ノヨウニデスカ?」

 「そうだ。そしてお前が魂を宿したのもきっと……」


 機械、電子、あらゆる工学知識を持つ天才が奇跡だの魂を口にするのは少々妙だが、昨晩から起きた全ては事実。ノアが流星に撃たれたのをきっかけに意志を持ったのも、あの殺人ロボットが常識外れの力を持っているのも。


 「ソンナチカラノ一端ガ、アノ殺人マシンヲ生ミ出シタ。アンナ恐ロシイモノヲ……」

 「……」


 恐ろしいなどと言うのは機械が使うには曖昧な表現だ。しかし実際にその脅威を身に受けたユウは押し黙る。作り上げた無表情の奥でユウは昨晩見た夢のことを想いだした。


 本当は最初から、あのロボットが自分の発明から生み出されたと気づいていたのかもしれない。その無意識があんな夢を見させたんじゃないかと思えて仕方なかった。

 

 ……だがそんな中、その恐ろしい存在は再びその牙をむこうとしていた。


 ◇


 ナナコとゲンの二人は山の中を歩いていた。


 ユウにガレージから追い出されたものの『少し待ってろ』と言われた手前勝手に帰るわけにもいかなかった二人はとりあえず山の反対側、破壊されたロボットのところへ向かっていた。


 これまで一度もロボットの撃破には成功していない。だから軍にも警察にも殺人ロボットの破片一つなかった。

 殺人マシンの貴重なサンプルを入手できるチャンスを逃す手はない。幸い場所は来るときに確認済みだったので回収に向かうことになった。

 道中二人は自然とユウのことについて話していた。


 「会ってみないと分からないもんだな、人は。聡明で人類愛に満ち溢れた聖人君子と聞いてたんだが……」

 「誰が言いだしたんでしょう? 全然違うじゃないですか……」


 携帯を壊されたのが余程こたえたのかナナコはまだ少し気落ちした様子だった。

 機道ユウという人物に対する世間一般の評価は、今ゲンが口にした通りだ。ナナコだってついさっきまでそう思っていた。

 だがしかし考えてみれば無理もないのかもしれない。機道ユウは実際の人となりが覆い隠されるほどの偉業は成し遂げているのだから。


 「功績が独り歩きして尾ひれがついたのかもな」


 そう自分を納得させつつもゲンは胸に引っかかる一つの違和感を吐露する。


 「ただ……奴の目は昨日今日初めて殺されかかった奴の目じゃなかった」


 ゲンは顔を合わせた時のユウの目が忘れられなかった。あの冷静極まる目つきには殺されかかった者に特有の恐怖が微塵もなかった。ああいう目をした奴をゲンは過去の刑事生活で何度か見たことがあった。


 「あれは恐怖に慣れた、何度も死線を超えた奴の――」


 言いかけたゲンが突然表情を変え、辺りを見回した。どうしたのかと聞こうとしたナナコの口も咄嗟に抑えて音を出させないようにする。

 遊歩道が整備されているわけでもない見通しの悪い中を冷や汗を流しながら睨むゲン。ただ事ではない雰囲気だ。


 もうすぐそこに目的だった破壊されたロボットがあるはずだというのに何事かと戸惑うナナコだが、やがて彼女の耳にも周囲で動く怪しい物音が聞こえてきた。


 数にして8。何かがいる。この状況、目指していた先にあったものを思えば嫌な予感が急激に膨らんだ。


 ほどなくしてその予感を裏付けるように木々の中から奴らが姿を現す。


 屈強なる鋼鉄のボディ。件の殺人ロボットが8体、ゲンたちを完全に捕捉し周囲を取り囲んでいた。


 そして、ゲンたちの歩いていた方角からもさらに一体現れる。あちこちの装甲が外れ、胴体にタイヤの走り抜けたような傷を負ったロボットがそのおどろおどろしい姿を誇示するかのようにゆっくり立ち上がると次の瞬間、ゲンたちに向かって襲い掛かってきた。

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