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便所の幽霊

作者: 明田幽谷

 私の卒業した高校には夜に兵隊の幽霊が歩くとの噂があった。その学校は戦争前は別の場所にあったのだが、空襲によって校舎が全焼したため、戦後、払い下げられた軍用地に移動した。歩く兵隊の霊はその施設から出征し、戦死した兵士の霊とも、出征前に戦争が終わってしまった兵士の無念が具現化された霊とも言われている。

 ある日私は国語教師であったM先生とたまたま学校の帰り道で出会った。先生は社交的な人であったため、当時ほとんど関わりの無かった私にも話しかけてくれた。少し話しながら歩いていると、M先生が幽霊に会ったことがあるという噂を思い出した。軽い調子で「幽霊って本当にいるんですかね」と尋ねた。先生は少し顔を曇らせると「ああ、いるさ。」と少し重い調子で答えた。少しの間先生は顔に手を当て、そのときの経験を話し始めた。以下はM先生に聞いた話をまとめたものである。

 今から20年程前までは学校には警備員はおらず、先生が1日に2人ずつ交代で宿直を行っていた。ある夏の日、M先生と霊感が強いとの噂の今は亡きK先生と宿直となった。1回目の見回りが終わり、M先生とK先生は2人で談笑しながらお茶を飲んでいた。時計が2時を指した頃、「飲みすぎちゃったよ」と笑いながら、K先生は便所にたった。しかし半時間経ってもK先生は帰って来なかった。不吉な予感を感じたM先生は様子を見に行くことにした。長い廊下を抜けて便所の前まで来ると気を失って倒れているK先生が見えるではないか。M先生は恐る恐るK先生に近づき、助け起こした。何度か揺さぶるとK先生は目を覚ました。一瞬安堵の表情が見られたがすぐさま青い顔をして便所の隅を指差した。M先生がその指差す先を見ると、何かしらがそこにいるような気配を感じた。「見えないけれど確かに誰かそこにいる」そう感じたM先生は思わず「誰だ!」と校舎の外にまで聞こえる程の声で叫んだ。その瞬間生暖かい何かが自分たちの横を通り抜ける気配を感じた。

 K先生はその後熱病にかかってあっという間に亡くなってしまった。そのため不幸か幸いか、M先生はK先生が何を見たのか未だに分かっていない。しかし、M先生は今でもあの便所のそばを通るとあの生暖かい何かを思い出すそうだ。


みんなの学校に怖い噂はありましたか?

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