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1 嘘と真実⑧

 宿屋の階段を上りきったところで、エセルが自分を待ちかねたように立っていた。目が合うとにっこりと微笑んで、リドゥの腕をしっかりと掴むとそのまま部屋へ引きずり込む。

「手、痛いでしょ……? ちゃんと包帯巻いて固定しておかないと。――あ、大丈夫、なるべく目立たないように巻きますね」

 事態をきちんと把握しない内にエセルのペースに巻きこまれて、気付けば手首には丹念かつ控えめに包帯が巻かれていた。

「――ありがとう」

 その白さに目を奪われつつリドゥはそう呟く。エセルはもう一度笑みを見せると、やっぱり貴方は綺麗だわ、と口にした。その心が。

 それに思わずリドゥは怪訝そうな表情を向ける。何を言っているのだろうか、この女は。

「――」

 疑問の言葉を発しようと何か言いかけた時、唐突に扉が開いた。

「あーもう何やってるかと思えばやっぱ痛かったんじゃない! なんでさっき言わなかったのよ?」

「別に平気だから」

 心の中の微かな波。これをエセルに見透かされたのかもしれない。息がつまった。

 同じであって同じじゃないものを、何度夢見たか知れない。もう戻れない場所ではなく、これからたどり着きたい場所を。隙間を埋めるだけでなく、柔らかな光で包んで、今を光り輝かせるもの。

 永遠は誓えない。永久不変のものなどありはしない。だけど、だから、今という時を全て。もう少し大人になったら鮮やかに表現する事が出来るのだろうか。

「だから、それはもうやめろって何度言わせたら気が済むのよ! あたし責任感じて心配してるのよ!」

「……」

「あ、何その顔、信じてないって言うの? もう、あたしがいつ嘘を言ったって言うのよ、いい、良く聞きなさいよ……」

 放っておくとライカの台詞は永遠に続きそうだった。追いついてきたヴァーンにエセルがそっと囁く。

「仲、良いわね」

「……そうなのか……?」

 俺にはライカがわめいてるようにしか見えねえけどな、とヴァーンは言うと、ひょい、と手を頭の後ろで組んだ。

「おーい、明日出発するんだからよ、そろそろ本格的に準備に入ったほうがいいんじゃねえの?」

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