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23 【シア、十三歳 身体検査】



 相変わらずな日々を過ごし、いつの間にか十三歳になってから早数ヶ月。


 最近になって授業の予定が細かく組まれるようになった。それに合わせてなのか、新しい先生たちへと代わっていた。いつものように教室へ入ると知らない人がいてとても驚いた。


 体力的にはきついけれど、嫌な先生はいなくなったし、滞っていた勉強が進むようになって私としては嬉しい変化だ。


 新しい先生と以前の授業を比べてみると、やはり辞めていった人たちは私を真面目に教える気はなかったようだ。


 自分では頑張ってきたつもりだったけれど、どうやら私の学力や知識は至って普通の平均しかなかったみたい。

 唯一、数学は褒めてもらうことができた。


 たしかにこれではお兄様の執事に嫌味を言われても仕方がなかった。その程度で遊んでいる暇などないだろう、と。


 私だって頑張っているのに、なんて思っていたのがただただ恥ずかしい。落ち込む私に先生はこれから学べばいいと言ってくれた。


 私はお兄様と同じ学園に通うことはできないと思っていた。なぜならその学園は貴族の中でも条件を満たした者しか通うことができないから。


 もちろん、魔法が使えるかどうかも条件の一つだ。


 だから私は、下位貴族や平民が通う一般の学校へ行くものだと勝手に思っていた。

 お父様の執事から学園への入学案内を渡された時は本当に驚いた。


"異例なことではありますが、侯爵様は可能性を信じておられます。シアお嬢様、頑張って下さいね"


 執事長にそう言われて、嬉しかった。

 お父様はまだ私の能力の発現を諦めてはいないということ…? 少しだけ期待してしまったと同時に、侯爵家の体裁を保つためなのかな、とも思ってしまった。

 侯爵家の人間が一般の学校へ通うなど恥だと思うんだろうな……。


 それにしても、試験も受けていないのにどうして私に入学案内がきたのか不思議だった。侯爵家の権力でもなんでも利用したのだろうか。


 お父様が何を考えているのか分からないし、私が心の内を知ることなど無理な話。


 入学案内を読んでいて、そこに書かれていた内容で分からないことがあった。

 とある一文が引っかかった。


"魔法による身体検査"


 身体検査ってなんだろう。病気がないかの検査とかかな……。そう思いながら案内の続きを読む。


「えっと……"魔法が使用されていないことへの証明が必要"って……?」


 それってどういう意味なんだろうか。魔法の使用? 何に対しての? 私には分からず、何か知っているかなと思いリリーとサラに聞いてみたけれど二人にも分からなかった。


 魔法が使用されていないかって、私は魔法を使うことが全くできないんだけれど——。


 でもその意味が何だったのかすぐに知ることになった。


 また突然、本邸の執務室へと呼ばれた。


 本邸の執事と一緒に応接室まで行くと、知らない人が数人いることにすぐ気が付いた。なぜかそこにはお兄様もフレイアさんもいて、驚きよりも少しの恐怖心を抱いた。


 ……なに? どういうこと?


 動揺していることが悟られないよう、震えてしまう手をぎゅっと握った。手を握ることがいつの間にか癖になっていた。


「お父様、お待たせして申し訳ありません」


 お父様をこんなに近くで見たのは何ヶ月ぶりなのか。見る、というのもおかしな言い方だけれど。しばらく会っていないことにお父様は気が付いているのだろうか。


 ただでさえお父様を前にして緊張しているのに、知らない人たちとお兄様。そしてフレイアさん。それに、私を見て嘲笑ってきた使用人たち。


「……そこへ立ちなさい」 


 え? このまま立っていればいいの……? 

 訳が分からなかったけれど、私は言われた通りただ動かずにじっと立っていることしかできなかった。


 お父様は私を一目見た。その表情はどこか暗く見えたけれど、お父様はそれ以上は私に声を掛けることはなかった。


 部屋の中にいた知らない人たち。そのうちの一人が私の横へと立つ。


「準備はよろしいですか? それでは魔法による検査を始めますね」


「え……?」


 私には何の説明もなく、突然だった。


「私たちは学園の魔法士です。今日はシアお嬢様が魔法を使用されていないかの確認をさせていただきます」


「え、ま、魔法……ですか? あの、私、魔法は使えません……」


「はい、それは伺っております。シアお嬢様本人が使用できなくても、他の者がお嬢様に魔法をかけている可能性もございます」


「あの、それはどういう……ことですか……?」


 さすがに動揺してしまい、声が震えてしまう。

 言葉が途切れ途切れで声に出すのが難しく感じる。


 ただただ分からなかった。この魔法士の言っている意味が。私が魔法を全く使えないということは侯爵家の者なら誰でも知っていることだ。


 それで、私が使えないなら他の者が私に魔法をかけている? なぜ? どうして?


「あの、もしかして……。あなたは何も説明を受けていないのですか?」


 動揺を隠しきれない私を見て、魔法士の人は少し困惑しているようだ。

 魔法士がお父様を見ると、お父様は一度だけ頷いた。それを見た魔法士は私に説明を始めた。



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