15 【ソフィアの発現】
「お母さんっ!」
その時、可愛らしい声とともに姿を現したのはソフィアだった。ソフィアまでなぜここに……。
「お母さんっ! お母さんっ!」
ソフィアは泣きながらフレイアさんに駆け寄った。
「どうしてっ!? 何があったの……!?」
意識のないフレイアさんを見て、ソフィアはとても動揺している。
「ソフィアお嬢様は治癒魔法が使えましたよね!?」
あの大きな悲鳴を上げたメイドがソフィアに聞いた。
「う、うん……でもまだ私は……」
「奥様は頭を強く打ったようでこのままでは公子様が来るまでもたないかもしれません」
「そ、そんなのいやっ」
もたないかも、と言われたソフィアはさらにたくさんの涙をポロポロと流す。メイドに「治癒魔法を早く!」と言われて、ソフィアは急いで魔法を使う。
ソフィアがフレイアさんの手を握る。
そしてソフィアは大きな光に包まれた。
それはただの光ではなかった。侯爵家特有の金色の光。きらきらと輝きながらソフィアの周りを包み込んでいた。光はソフィアの胸元から広がるように、それはとても綺麗な光景だった。
「きゃっ、な、なに? この光は……」
突然のことにソフィアは驚いて小さく悲鳴を上げた。ソフィアは目をぱちぱちとさせながら、自分の周りの光をその金色の瞳を輝かせながら見ていた。
そんな、あれは。もしかして——。
集まっていた使用人たちも目の前の光景にただただ目を奪われていた。そして光がゆっくりと消えていく。
「お母さん!?」
「あぁ、私のかわいいソフィ……」
フレイアさんは意識を取り戻し、震える手でソフィアの頬を流れる涙を拭った。
「あなた、発現したのね? おめでとう……」
「え……?」
そしてそのままフレイアさんは気を失ってしまった。
「お、お母さん!?」
ソフィアは慌てて母親に声をかける。
「お嬢様、大丈夫ですよ。奥様はどこも怪我はしておりません。ソフィアお嬢様のおかげです。今は安心して気を失っているだけです」
そうメイドに言われてホッとするソフィア。
今の光で怪我を治したというの……?
周りがざわざわとしている。
ソフィアは今何が起こったのか、どうしていいのか分からないようで困った表情でオロオロとしている。
そこへ。
「ねぇ、さっき……"落とされた"って言ってなかった……?」
メイドの一人がぽつりと呟いた。その一言になぜか私への視線が集まった。
え? どうしてみんな、私を見るの?
"え、まさかそういうこと?"
"ここまでする……?"
"もしメイドが見ていなかったら……"
使用人たちのそんな声が聞こえてくる。待って、待って。どうしてそんな目で私を見るの。
「いったいこれは何の騒ぎだ!」
この不穏な空気に包まれている中、一瞬でその場を静める声がした。
執事と護衛を連れてここへ現れたのはルカお兄様だった。