1/90
1 【プロローグ①】
ただ、愛して欲しかった
信じて欲しかった
「シア」
そう、私の名前を呼んで欲しくて
どうしてあのような事になってしまったのか
なぜ、私は死ななければいけなかったのか
もし、私が家族に歩み寄っていたのなら
もう少し、生きたいと思える何かがあったのなら
結末は違ったのだろうか
「私の娘だ」
お父様のその一言が聞きたかった
「俺たちは家族だろう」
お兄様にそう言って欲しかった
この、暗くて狭い監獄の中で思うのは
私には誰もいなかったんだと
愛してくれる人はおろか、最後ぐらい私を気にかけてくれる人さえいなかったのかと
「お姉さま!」
私を呼ぶ明るいその声は
私の全てを奪ったのはあなたなのに
優しいあなたは私が死んだ後に何を思ったのだろう