世界の真実
トラブルメーカー
何度この言葉を聞いただろうか。厄介事を起こすつもりは毎度なく自分では不幸体質だとなんどもなんどもいいはった。
数学は数字の羅列を見るだけで鳥肌が立つほど好きじゃないがもし確率として数字を出してみればほんとに低確率な非日常を引き当ててしまう毎日。
また父さんに、迷惑かけちまうな。
最後にそんなことを思いながら高校生、常田ケイトは死んだ。
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金木犀の香り。長い年月をかけて少し削れて丸くなった艶のあるテーブルが見えた。
どうやら突っ伏して寝ていたようだ。
ぐったりと妙に疲れた体を糸でゆっくりと持ち上げたように上体を起こすと木製の優しい雰囲気に包まれた一室の全貌が見えた。
正面と向かいには金の意匠が施されたティーカップに入った温かそうな紅茶が置かれ、静かに湯気を放っていた。どうやら金木犀の香りはここからしていたようだ。
ここでまとまらなかった思考がゆっくりと動き始めた。
意識がある
死後の世界なんてないと思っていた。何も感知できなくなって動けなくなて寝てしまうような。そんなもんだろうと。
もしかして自分は生きながらえたのではないだろうか。そちらのほうがまだ現実味がある。
それでも、とても病院のようには見えない室内と死んだ瞬間のあの喪失感がどうしてもそうは思わせてくれんかった。
「お目覚めになられましたか?」
鈴の音の様な美しい声が聞こえた。
見れば後ろのドアが開いて美しい碧眼の女性が入ってくるところだった。
「あの、ここはどこなんですか?病院・・・ではないみたいなんですけどここにきた記憶がなくて。」
女性は少し顔を曇らせて口を開いた。
「ここはあなたの住んでいた世界ではありません。あなたは・・・残念ながら死亡しました。」
思っていたより衝撃はなかった。先ほどの予想を裏付けるものだったからだ。
「じゃあここは天国・・・なんですか?」
ここの風体で地獄、とことはないだろう。
女性は首を横に振ると入ってきたドアに手をかけた。
「その説明をするために外に行く必要があります・・・ついてきてください。」
つられてたように立ち上がると足がふらふらした。どうやら謎の脱力感はまだ抜けきっていないみたいだ。
そのまま女性の後に続いて部屋から出ると、眩しい日差しに思わず手を目の上にかざした。
見たことのない植物の数々にきれいに刈り込まれた芝生。赤レンガを漆喰でつなげたおしゃれな道に大きく雄大にそびえたつ一本の樹があった。
空の青さが眩しい。
「立派な樹ですねー。幹の色も葉っぱの色もみたことないのですが、なんていう樹なんですか?」
と素直な感想を口にする。
樹を見上げると圧倒されるような気がした。瑞々しい葉っぱから零れる日の光で女性の表情はよくわからなかった。
「この樹の名前は・・・世界樹といいます。これが、あなたが今まで生きていた世界です。」
女性は平静な口調で、そういった。