引き寄せ甲子園30
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★登場人物★
悠太:A高校2年生。スピリチュアル研究家・唾、脱糞研究家・シダ植物研究家・プロレス好き。 同じクラスの愛子と接近したことで、スピリチュアルに目覚め、音楽活動を通して自分の壁を壊しつつある。 安藤の教育係。
愛子:A高校2年生。スピリチュアル・プロレス好き。男でも容赦なくシバき倒す運動神経を持つ。 悠太の素質に気づく。彼とのフィールドワーク(散歩)を通して、人を見守り、救う事が自分の生き甲斐だと気づく。 実質彼女が今の野球部を支えている。皆がやりたい放題できるのは彼女のおかげである。
辰巳:50代。元A高校野球部。当時はプロに注目される程の投手だったが、家業を継ぎ、ダルマ職人になる。 悠太と愛子から刺激を受け、地域貢献活動に目覚めた。A高校野球部を甲子園に出場させるため一肌脱ぐ。
安田:A高校野球部監督。A高校野球部OBで、辰巳の後輩。辰巳に頭が上がらない。
安藤:A野球部雑用係に甘んじているが、エース級の素質を持つ。
前田:A高校野球部のエースだが、中継ぎ・クローザーの方が向いている。
坂口:A高校クリーンナップの一角を担う。
山辺:甲子園常連B校にスカウトされたが、高校野球には肌が合わないと、A校に進学して山岳部に入る。 野球部が超変革したと噂を聞いて、中途入部する意思を固め、再テストを受け合格した。
山中:カードマジックのプロを目指している。 頻繁に野球部に遊びに来て、辰巳にかわいがられている。
木下:応援団団長。勝手に応援団を結成した。今の所、一人でやっている。
笹島:バッティングピッチャーに甘んじていた が、絶妙なコントロール、抜群の制球力を山辺に見出され、急遽先発枠に入る。
江口:元陸上部スプリンター
木村:元甲子園出場常連高、B高野球部監督
遠山:元プロ野球選手
A高のユニホーム上腕部に描く「シダ植物」を選定しデッサンするために、悠太と愛子は2人で校外を散策している。
2人きりで出歩くのは久しぶりのことである。
そもそも先行き不透明なまま着地点を定めず始まった2人の青春だが、いつの間にか野球部部員と共に甲子園を目指して奮闘というか、部に革命を起こしている。
バッタの「クビキリギス」がくっついているシダ植物をモデルにすることに決定した。
「バッタをA高のマスコットにしたらどうだろう?」
悠太が生徒手帳にデッサンしながら愛子に提案する。
「いいんじゃない?」
彼女は悠太の脇にしゃがみ、ペン先を覗き込んだ。
悠太は興奮のため荒くなった鼻息を、意識して抑える。
「ただのバッタじゃないんだ。クビキリギス。別名、血吸いバッタ」
「強そうでいいじゃない」
愛子は微笑んだ。
ああ。
悠太は彼女の口臭を感じようと匂ってみた。
彼女だって完ぺきじゃないはず。
グラウンドでは遠山と辰巳がブルペン内を見ながら夏の地方大会初戦に向けて戦略を練っている。
「先発は笹島でいこうと思うが」
辰巳は、そう提案した。
「初戦から2、3戦までは前田君を先発させていいでしょう」
遠山は辰巳を見て言う。
「それじゃあ昔のA高のまんまじゃねーか。前田はクローザーに配置転換したんだから」
「例年、地方大会の3回戦までは進出できてるじゃないですか。もちろん対戦相手によりますが、3戦ぐらいまでは前田くんで十分じゃないでしょうか。彼をクローザーとして使う機会は準決勝ぐらいまで無いでしょう。笹島君と安藤君を温存できますし」
「なるほど。きみの言う通りにしよう。俺は素直に人の意見を聞き入れる新しい男になったのだから。あなたも恥ずかしいとか言ってないで、木下の元で応援の練習もしっかりしなさい。あんたの悪い所は元プロ野球選手っていうプライドを捨てきれていない所だよ」
遠山は目頭が熱くなった。
つまらないプライドを捨てきれず、たまにくる野球関連の仕事に甘んじていた。
「辰巳さん、ありがとうございます。私からも物申してよろしいでしょうか」
「なんだね」
「グラウンドに向けて辰巳さんはマイクを使って自己啓発的な放送をしますでしょ。応援団長の木下や一部の部員は、ありがとうありがとうと、ひたすら唱えている。当初は部外者の関心をひくことができた。尚且つ、対外試合で強豪校B高に勝ったものだからマスコミにまで注目されるまでになっている。シダ植物や辰巳さんがつくるダルマはA市の宝です。本当に素晴らしい。しかし言葉は一人一人それぞれが自由に発するものです。もちろん共有しても良いのですが、押し売りする物ではないと思います。」
「私の放送とか、やめろということかね」
「生意気なこと言って申し訳ありません」
「分かった。今後そうしましょう。俺は新しい男になったって、そう言っているだろう」
辰巳は黒光りした顔に笑みをつくると、そう言った。




