引き寄せ甲子園4
悠太:A高校2年生。スピリチュアル研究家・唾、脱糞研究家・シダ植物研究家・プロレス好き。
同じクラスの愛子と接近したことで、スピリチュアルに目覚め、音楽活動を通して自分の壁を壊しつつある。
愛子:A高校2年生。スピリチュアル・プロレス好き。男でも容赦なくシバき倒す運動神経を持つ。
悠太の素質に気づく。彼とのフィールドワーク(散歩)を通して、人を見守り、救う事が自分の生き甲斐だと気づく。
辰巳:50代。元A高校野球部。当時はプロに注目される程の投手だったが、家業を継ぎ、ダルマ職人になる。
悠太と愛子から刺激を受け、地域貢献活動に目覚める。A高校野球部を甲子園に出場させるため監督の座をのっとった形。
安田:A高校野球部監督。A高校野球部OBで、辰巳の後輩。辰巳に頭が上がらない。
安藤:A野球部雑用係に甘んじているが、エース級の素質を持つ。
前田:A高校野球部のエースだが、中継ぎ・クローザーの方が向いている。
坂口:A高校クリーンナップの一角を担う。
ピッチャーとしての覚醒には、安藤の足腰をもっと鍛える必要があると愛子が本人に助言した。
ジョギングを徹底して行い、ウェイトトレーニングをする様に伝えた。
時々、安藤の教育係の悠太は、走っている彼を呼び止め、一緒にしゃがんで校庭の土手で植物観賞をした。
悠太は自分の芸術的な感性を育む原動力となる特殊性癖を安藤にさらした。
安藤も悠太に心を開き、何でも話せる関係をつくることができた。
「校庭にトンボの数も増えてきたね」
「うん。校庭で雑用係をしていた時は、トンボや蝶が飛んでいること、こんなにいろんな植物に囲まれていることとか気づけなかったよ」
「植物にも感謝しなきゃだよ。これらの植物のおかげで、巡り巡って、自分たちがあの教室で授業を受けられて、食べられて、関わりがあるんだから」
「植物ありがとう。ありがとう」
「『唾のこ』って知ってるか?まあ俺がつくった言葉なんだけど。垢抜けてない、ちょいワル可愛いヤンキー女が唾を吐く。その唾が雑草にかかり、糸を引いて落ちるところを表現した言葉である」
「わあ、悠太君ってやっぱ、やばいね」
校庭の片隅では、野球部員が素振りをしたり、ティーバッティングをしている。
校庭には野球部員がリクエストした音楽がかかっている。
音楽に関してはいつのまにか校長も公認している。
校長が校庭へ巡回に来た時、辰巳と会話をよくかわしている。
毎年正月にはダルマを購入していますとか、あんな大きなダルマを頂いて、ありがとうございました。早速、校長室に飾らせていただきました、なんとか。
ときたま辰巳自身が吹き込んだ声も流れる。
「グラウンドよ、仮設トイレよ。ありがとう。ありがとう」
そこで辰巳が思い出した様に、仮設トイレの掃除をする様、安田に伝えてくれと、坂口に言伝を頼んだ。
辰巳は腕組みして全体を見渡しているだけだったが、愛子は一人一人の素振りをチェックし、指導している。
「あの女はたいしたもんだ」
「こんにちは。お疲れ様です」
ガタイの良い、少し小太りな男が、辰巳の前で深く腰を折って、挨拶した。
「なんとなく読めたね。野球部入部希望だろう?それか、だるまをつくってみたいか?」
「自分野球がやりたかった者です。野球部の様子がだいぶ変わったと耳にしました。勇気を持って本日参りました」
そこに愛子が戻ってきた。
「なんで最初から野球部に入らなかったの?山辺って山岳部だよね?」
「監督が気に食わなかったから」
「確かに安田は、ろくでもないやつだった。でも今いる人間は野球が好きで、あいつの暴力などに耐えてきた、いわゆる野球部を支えてきた功労者だよ。お前を入れてもいいけど、途中から入ったお前だけを特別扱いはできない。最初からバットやボールに触れられるとは思うなよ」
「まあとりあえず入団テストしてみようよ」
愛子がそう言い、バッティングから守備練習など、テストを実施したが、とてつもない運動神経を見せつけた。
山辺の打ったボールが、今、悠太と安藤がいる土手、場外まで飛んでいったが、それに気づかない2人もすごい。
「スイングスピード半端なく速いね。てか、あの2人相変わらず周りが見えてない」
そう言って愛子が珍しく笑った。
「さすがR中の山辺だな。こいつ本当は私立B高に推薦されてたんですよ。中学の時から体が大きくて打ったら遠くに飛ばせるし、器用だからピッチャーとかキャッチャーもできたから」
坂口が辰巳にそう説明した。
私立B校とは甲子園の常連校である。
「今日からお前は野球部員だ。夏まで時間がないから、早速今日からバットとボールに、時間が許す限り触れて向上し続けなさい」
「さっきと話が違うじゃん」
愛子がそう言うと
「当たり前だ。新しい時代のできる男は、融通を利かせないといけないんだよ。今日から入れてあげるが、その前にまず野球部室から仮設トイレ掃除、グラウンドのゴミ拾いなど、ありがとう、ありがとうと感謝の言葉を声に出しながら取り組んでこい。それから野球部員一人一人に挨拶回りをしろ。俺は改めてお前のことを全体に紹介するから」
「これから校庭のゴミ拾いをすると思うけど、その時、インスピレーションを感じた、シダ植物を根っこからぬいてきてほしいの。部室内に飾りたいから」
愛子は、そう指示した。
「それからだるまに色つけをしろ。安田と一緒に」
「安田とですか?今日からバットとボールに触れさせてくれないんですか?」
「バットとボールに触れるのは明日からだよ。馬鹿野郎。理屈を言うんじゃないよ。お前は、もう少し謙虚になりなさい。俺と再会して、安田は変わったぞ。あいつの人間としての変化を目の当たりにして涙してこい。今日の最後にテープにお前の声を吹き込ませてあげるから。後日校庭で流してやるよ。素晴らし日々が待ってるぞ」
「ありがとうございます」
山辺は嗚咽した。
同じ校庭にいるが、悠太と安藤には、山辺たちの動きが一切見えていない。
目の前のことにいっぱいいっぱいになってしまう所は二人の共通点である。
「僕は女のお尻が普通に好きですね」
二人しゃがんでシロツメ草を手でなでながら、安藤は悠太に自分の尻フェチをカミングアウトした。




