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甲子園引き寄せプロジェクト~女子マネはどこ行った?彼女たちは仮設トイレを使うのかどうなのか~

グラウンドの一角にある仮設トイレの異臭。


辺り一帯には大型の葉をつけた「フキ」や黄色いこまごまとした雑草花が咲き誇っている黄金色。


「このにおいじゃあ、女子マネは校舎のトイレ使うじゃないか」


誰かに聞かせる声ではない声を悠太は、しゃがんで野花をみている二人の後ろで放った。


ダルマ店主は愛子になにやら解説しているが彼女は聞いてるんだか聞いてないんだか「写ルンです」で花々草草を撮影している。


良かき彼女の「くびれ」、大きなヒップ。


脱糞臭だの校庭を囲む土手の原っぱの香り、美しい彼女の後姿、おやっさんのたくましい肉体。


今更だがこの親父の名前は何だろう。


愛子は青色のスコップで金色の花を根っこごと抜いた所だった。


小屋の中から怒鳴り狂った男の声が聞こえてきた。


中で野球部の連中が集まってるのは知っている。


おっさんが立ち上がると愛子も続いた。


彼は肩を怒らせ歩き出すとノックもせず唐突にノブを回して扉を開けた。


愛子はその隙間から写真を1枚撮る度シャッターをしっかりと巻いた。


罵声を発していた男の声が止んだ。


男とその前でしょげている一人の部員を円の中心に20数名の部員が囲んで立ち尽くしている。


「おやおや監督。声を張っちゃってどうしたかな」


ダルマ店主がそう言うと監督が


「辰巳先輩?!。帽子をとれい!」


「礼!!」


一斉に体を店主に向けてキャプテン坂口が代表で号令をかけた。


「みんな肩の力を抜きなさい。体育座りでいいよ。あぐらをかいてもいいんだから。広田は立ってろ馬鹿この!」


店主のおやっさんの名前は「辰巳」であることが分かった。


愛子はさっき抜いた花を木製の靴入れの上に根っこについている砂ごと置いた。


湿った茶黒い土が下駄箱の上に広がった。


「このお方は当時この野球部で監督がわりに私を指導して下さった辰巳先輩だ。野球部創設以来プロのスカウトが視察に来るほどのピッチャーでいらした」


「俺の話は、どうでもいいよ。そんなことより臭いね。この部室は。あっしはね、先祖代々ダルマをつくり続け社会貢献してきましたよ。自分の稼業で精一杯だった。でもこいつらのおかげでよ、わが街のために働きかけたいと思い立ったわけ。あなたたちが甲子園出場することで、この街は相当活気づきますよ」


そう言うと辰巳は悠太と愛子を見やった。


悠太はギターを適当にかき鳴らして井上陽水さんの『最後のニュース』の替え歌をうたった。


「何で野球部にだけ仮設トイレが与えられ広い校庭をほぼ独占してるの?」


「あんちゃんの言う通りだ。他の部活をみてみろよ。全国大会に出場している所だって環境良くない中、頑張ってるんだよ。悠太を仮設トイレ担当にする」


「校舎のトイレまで走って足腰鍛えろと皮肉を言いたくなりますよ」


そんなことより野球部の女子マネも仮設トイレを使うのかどうか悠太は気になって仕方がなかった。


彼女たちはまだ姿を見せない。


愛子も仮設トイレを使ってくれるだろうか。


なんとか野球部連中を校舎の便所に誘導し、仮設トイレを女子専用にしたいと考えている。


風水など何から何まで取り入れて仮設トイレをパワースポットにしたい。


「兄ちゃん。監督がもう話済んだってよ。みんなんとこ戻りな」


監督から絞られていた彼は顔を真っ赤にしてうつむきながら円陣に入る。


「広田よ。怒鳴るだけが脳じゃねーんだよ。実際スパルタ教育で甲子園出場できそうなの?野球部が低迷してるのはみんな監督の責任なんだよ。馬鹿。お前は今日から~甲子園引き寄せプロジェクト~のメンバーに情状酌量で入れてやる。今日からリーダー愛子ちゃんの指示に従えよ」


「いくら辰巳さんでも突然来てそんなこと言われて困ります。部外者が敷地内にいるんです。警察呼びますよ」


あらためてみると白髪交じりだが髪の量は多く広田は精悍な顔をしている。


「笑いそうですよ。広田さん。女の横のつながりを甘く見ないでもらえますか?ここの女子マネに依頼して、あなたの体罰・セクハラ数々の証拠写真・音声揃ってますからいつでも部員が被害届出せるんです。女子マネもセクハラ受けてますから。諦めて私のもとで、引き寄せの法則を学びなさい。あるいは私のプロレス技の練習台しかやらせないよ。それはさておいて、女子マネ遅いな」


そう言った愛子は「広田」と書かれたマグカップの中を持ち込んだ腐葉土でいっぱいにしてシダ植物を植えた。


「そういうわけだ広田。ひとでなし。恩知らず。愛子ちゃんを野球部の室長に任命するから。面白くなってきたね。わが野球部は良くなりつつある。ありがとう。ありがとう。ありがとう。奥みかんは作家になりました。ありがとう。ありがとう。ありがとう。じゃあ俺は帰るからな。また来るよ。馬鹿この。あるいは引き寄せでお前広田が変われるかどうかだ。悠太、愛子ちゃん後はよろしくな。女子マネどこ行った?」


広田の小刻みに震えた真っ青な顔。青いシャベルに付いた湿った土。

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