シダ類を絡ませた野球部仮設トイレを太鼓代わりに叩いて「がんばれ」って言ってやる
何か物足りない、この教室に持ち込んだシダ・フェンダーギター。
クラスでバンドやってる高山は、悠太が持ってきたフェンダーのギターに興味深々である。
「これ結構いい値段したべ。悠太すげー人間かわったんでないかい」
「昔の悠太に戻った。復活だな」
高山のバンド仲間、野上もギターのネック裏、付け根付近に印字してある番号を見ていた。
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クラスほぼは悠太と愛子は付き合ってると認識している。
授業中、隙をみはからい悠太はこれから自分が何をしたいのか、あるいはすべきなのかノートに書いている。
この教室に足りないのは植物、シダ類。
自分はいじめられる対象から外れたが、まだこのクラスにも救うべき被害者が数名いる。
本人がそれで良しとしているなら、余計なおせっかいは無用。
昔悠太が小学3年ぐらいの時、教室内で異臭騒ぎがあった。
教室内の掃除用具入れロッカー裏に大便が放り込まれてたのが原因だった。
クラスの一部の悠太を含めた男子の笑いがどっと起きる。
常識ある者たちは誰がやったのかと大騒ぎの混乱。
悠太は当時クラスのマドンナT子の靴下が一瞬目に入る。
彼女の靴下の中に「糞」を詰めたい。
T子のうんこは兎のようなうんこ、あるいは軟便も交じっている。
この東北兎は腐った蛇苺を食べてしまったせいで体からもそれが染み出し、上履きもストロベリーの様な酸っぱい香りがするのだ。
誰が脱糞したのだろう。
悠太は無理やりT子の便だと思えば臭いに耐えられたし、興奮状態になれた。
高校の教室にも必要なのは「糞爆弾」大爆発。
悠太はふと後ろを振り返ると愛子の姿は無い。
トイレで「くっさいもの」でもしてるのか。
高校2年の教室は1階だから、すぐ教室の外の校庭との間の「雑草縁場」で素振りをしている隣クラスの前田をジッと立って見ている愛子をみつけた。
前田はそれを気にもせず上半身裸で素振りを続ける。
朝方降った雨しずくにより茶光りして日中蜜をすいに来たクワガタの様な日焼けの体色をしている。
「お前んとこ何で県大会でさえ良いとこ行けないのさ。あるいはたまに行くのにさ。甲子園出場してみんさい」
愛子が唐突に話しかけると、
「おい、坂口。こいつ甲子園だってよ」
前田は素振りを中止して、近くであぐらをかいてグラブのメンテナンスをしている坂口。
「無理無理」
坂口は笑って答えた。
ジャカジャカジャカジャカと悠太がギターを弾きながら
「なんで始めっから諦めてる?勝てない原因て何にあるんだろうね。俺と愛子さんで全力でサポートさせていただきましょう。前田君たちが甲子園に出場してこの街を盛り上げなきゃ他に誰やる?」
風に乗ってくる「ババ」の香りは、野球部のグラウンドに併設されている仮設トイレからである。
「校舎のトイレに来る時間を惜しんでまで練習してるんじゃないか」
悠太はギターに合わせてうたった。
「お前ギター始めたの?やっぱ面白い奴だったんだな」
前田が拍手してくれた。
「俺は本気だよ。甲子園」
悠太はそう言って、あの仮設トイレは野球部の女子マネージャーも使うのかどうか知りたくなった。
こいつらを本気にさせるのは、この街のことを第一に考え社会貢献しているダルマ店のおやっさんに会わせるのも一つの方法で、あるいはこのやり方しかない。
男は走って校舎のトイレ使うべきだ。
女子マネに仮設トイレを譲るべきである。
それがぼっとんかどうかは後程確かめるとして、トイレ内外にこの市内の苔やらシダ植物を甲子園球場に絡まるツタの様にいっぱいにしたい。
愛子は痒い痒いと言いながら、どこから出したのか青いプラスチックのスコップでシダ植物を根っこから抜いている。
「ほうら見てみろ。自分たちはシダやら苔などの偉大さを知りつつあるよ。屁理屈好きの練習好きのあなーしゃがしゃ。たくましか体を女にみせつけたいだけかよ。確かに鍛え上げられてるよ。認めるが、甲子園に行けない理由は何なのか聞かせてください」
悠太がそう言うと、やばいやばいと前田と坂口は声を裏がわせて笑った。
「お前たちどうした。面白いね」
深緑シダ色でいっぱいになった仮設トイレを緑色のスコップでならして、スティックでどんどんどんどんと鳴らして声を大にして毎日言ってやる。
「お願いです。甲子園に行ってください」
悠太は二人に深々と頭を下げた。




