天井の梁から見える世界
通りからガラス戸を通して旦那が精魂込めてダルマにニス塗りしてるのが見える。
さあ今だとばかり愛子が引き戸を開けて、中に入り悠太も後に続いた。
悠太が右手でジャカジャカ適当にギターの弦をかき鳴らす。
「なんだい、たまげるわ。だしぬけに。また来たのか。面白い連中だわ」
しわが目立つ黒光りした顔から笑みが見えて、とりあえず悠太は安心した。
愛子は前来た時に入り口に置いてある大きいダルマの底に、シールを貼るいたずらをした様だが、軽く持ち上げて、それを確認している。
「なんだ。楽器持ってきたのか」
親父さんが手をとめず悠太に聞いた。
「ええ。おやっさんとこでライブしたいからって愛子さんが、キャッシュで買ってくれたんです」
「現金で。高校生で、たいしたもんだな」
親父さんを見れば、愛子を気に入ってるのが分かる。
天井が高く、梁がとても良い味出てる。
「ジョン・レノンもお風呂場でギターを弾いて気持ちよく響くのを好んだらしいです。僕もダルマ店内に音が響くのが気持ち良いです。あの梁好きです。私も将来吹き抜けの高い天井づくりにして、室内に木を植えて、檜風呂の透きガラスからも、それを見えるように、そんな家を建てるのが夢です」
「お前何言ってんだ?うちの建物の材木とか所々、江戸時代から残ってるのあるよ」
おじさんが手をとめて天井を見上げて言った。
欲を言えば、店内に観葉植物が必要だと悠太は思った。
歴史的な梁から店内にある男女共有のトイレに興味が移った。
唐突に悠太は愛子が脱糞した後に、自分が入るところを想像し、ギターを弾く手が止まってしまった。
そう思った矢先、彼女がお手洗いを貸してくださいとおやっさんに言った。
願望がすぐ現実となり徐々に悠太の鼻息は荒くなった。
「この空間に植物が有ったら、もっと良くなりますよ」
言葉ではそう言うが、彼女がトイレに行ってからどのぐらい経ったか時間を計ることへ意識がいき、気が気でなかった。
長かったら脱糞。
彼女が出てきてからすぐ入るのは意地悪い。
「おう。よー。兄ちゃんなんか弾けんのかよ。弾いてみな」
旦那がそう言うと、
「弾いてあげなよ。悠太」
愛子の声が続いた。
ようやく彼女がトイレから出てきた。




