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ラーメン食べ行こう

中学の部活で尾城愛子はソフトボール部のキャプテンだった。


当時からベリーショートな髪型は変わってない。


目が大きく二重で、鼻が高く、美少女と言えるだろう。


弱い者いじめをする男子に喧嘩を売ったことが何度かあったらしい。


隣のクラスにまで自ら声をかけ、人を集め、ギャラリーの前で、唐突にいじめっ子の顔を殴るのだった。


彼女はプロレスが好きで、本人が言うにはゴングが鳴る前の奇襲だそうだ。


男子を何人も泣かせたことがある。


ある時は、羽交い絞めにされた彼女は背後の男子の金的を蹴る、反則技を見事に決めるのだった。


男子は泣き叫びながら地面を転げ回り、翌日から不登校になってしまった。


因果応報とはいえ、やりすぎである。


同級生の子は彼女の顔色をうかがうという気の使いようだ。


同性の彼女のファンがたくさんできた。


下級生の男女は彼女とすれ違う度、頭を下げた。


周りの人間への対応が面倒臭く、つんけんした態度をとった。


以上、高校1年の時、彼女と同じ中学の女子から聞いた話である。


現在のクールさは、過去の名残だろうか。


高校のクラスの女子は彼女に挨拶や簡単な会話をするが、基本適度に距離を保っている。


男子には興味ない様で、会話を続けようとしなかった。


それでも彼女は話しかけられると、笑顔で応じるのは、少し大人になったということだろう。


彼女が悠太に近づいてきたのは意外で、仲良くなれるのなら、いじめられていることなど、どうでもよくなる。


彼女なら悠太へのいじめをやめさせることができるのでは、と期待する。


「1年のときの悠太くんは面白かったんだけどな。自分でその理由分かる?それはさておきさ、今行きたいところある?」


放課後、校門の所で待ち合わせ、唐突に言われる。


彼女はローファーにスカートは短めで、カバンは中学で使っていた物で、遊び心というのか、自然に学生生活に溶け込んでいる様に彼には見える。


悠太はEDWINの赤いリュックサックに、おニューの黄色いnew balanceを履いていた。


これから尾城愛子とデートなんて夢の様だ。


彼女はスタイル良く、バストも結構なカップあるだろう。


甘い、爽やかな香りがしてくる。


校門を出て左側に弁当のチェーン店がある。


弁当が入ったビニールをぶら下げ、眼鏡をかけた男子が2人の脇を校舎に向かって行く。


明日の予習か、3年だったら受験勉強だろうか。


悠太は優越感でいっぱいである。


これから勉強なんて、かわいそうだ。


同級生が校門を出入りするたび驚き、2人を何度見もした。


「愛子。えっ。付き合ってるの?」


クラスの女子、青田が手で口を押え固まった。


「まぁね」


「えーっ?」


しばらく2人を凝視して、それ以上言葉が出ない様で下校していった。


青田は彼の陰口を言っている人間の1人である。


「悠太が今行きたい所連れてってよ。全力で考えて」


「ラーメン食べたいかな」


「じゃあガイドして連れて行って。手抜かないで」


彼が、じゃあと言って校門を右に曲がる。


「左手の文房具店で買い物してる人見たことある?雑誌は頻繁に入れかわってるけど売れるのかな?街には、ちらほら食っていけるのかなって店あるけど、そういうのって気にならない?」


道路、歩道狭いので1列に彼が前を歩き、時々振り返りながら声をはった。


「確かに。じゃあラーメン食べたら話聞きに行こう。思い立ったら今日突撃インタビューだよ。灯台下暗しで悠太みたいに興味さえ持たず卒業しちゃうのがほとんどなんだからさ」


「本気で?いいけど。」


なんだか悠太は面白くなってきた。


この高校に入学して本当に良かった。


神様はいらっしゃる。


「ガイド続けて」


「右側のこの道行くと床屋があるんだけど、一度短く切ってもらったら、トップがスカスカでバランス悪い仕上がりでさ。失敗だよ」


「ああ、『ちょっきんちょっきん』て店ね。一応美容院だと思うよ。クラスにも行ってる子いるじゃん。よく校内に、そこの店のチラシ落ちてるよ」


「俺も誰か紹介してってチラシ持たされたわ」


「私の周りではリピーターになってる子はいないなー。そのお店の良い所って強いて言えば何?」


「うーん。熱帯魚の水槽がキレイだったな。ネオンテトラがいっぱいいて」


「今度さ、熱帯魚のエサ買って、お邪魔してみようよ」


本当に面白くなってきた。

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