表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/116

コード「D」

「ぶすカワが

ちょうどいい


飛び出せ  

そう

いきみんさい


スニーカーなら

興奮する


しかめ面

吐息と

靴よ


3つ揃えば グッと


固い

こまい


理想さ」


「いいじゃん」


愛子が言う。


「えー。そう?」


絶対良くないだろう。


こっぱずかしさだけが残る。


悠太は適当に右手で弦をストロークしてうたった。


左手は「D」のコードをおさえたままである。


実は悠太、中学の頃、大好きな奥田民生さんの『息子』を母親のフォークギターを拝借して練習したことがあった。


神経症のせいで、完璧に「D」の音を出そうと、躍起になってしまった。


だから彼は「D」しかひけないのだ。


「ちゃんとした音になってたじゃん」


「このコードしか弾けないからね」


この即興で弾いたのが、まさか「女性の脱糞希望」のうただとは思わないだろう。


さっき演奏してる時、他校の女生徒が自転車で通り過ぎて行った。


どんな反応を示すのか。


見えなくなるまで、チャリにまたがった彼女の表情を追った。


サドルの上で、しっかり折り込まれたスカートを見て、つまらない気持ちになった。


結構なスピードで走っていた。


誰かに接触して、最悪殺してしまうことはあり得る話だ。


悠太は心配性だから、すぐに停車できる速さで進むだろう。


おそらく戦前から自転車はある。


タイヤはしっかりついている。


それが外れて転がっていく所は見たことが無い。


よく人間はあんなものをつくれたものだと感心する。


じゃあ車はどうなる。


演奏するとかどうより、最初にギターを発明したのは誰だ?


最初につくった人は天才だ。


自分よりすごい人を探すのは簡単だ。


「どうした?」


愛子の言葉で「今」に戻された。


「ぼーっとしない。集中集中」


自分でもなかなか良い歌詞だったと思う。


愛だの、恋だの、夢、希望。


応援ソングにはうんざりしている。


瞬間で自分はいろいろな事を考える。


不毛な事ばかり思考する。


現在を生きなければならない。


次はさっきより自信を持って「D」をおさえてうたえそうである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ