真面目な変態
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「あー。お腹減った」
2人は市内の中学前を通っていて、その近くにラーメン店があった。
その前で愛子が足を止めた。
「今日もラーメンでいいの?」
「いいよ。食べたい時に食べた時の方が栄養つくの」
彼女が言う。
彼は人に気を使う性格なので、自分の欲は押し通さず、人に合わせるタイプだ。
だが性処理に関しては狂った様に自分自身で行う。
1日3回以上はしている。
おかげで寝不足になり、メンタルもボロボロである。
しすぎるとバカになる、というのは都市伝説だろうが、睡眠を削って、するとバカになるというのは彼が証明していると思う。
本能のまま女を抱ける男は勝ち組だと彼は思う。
彼女の後に続き悠太も店内に入る。
家庭をそのままラーメン店に改造した様な、昨日行った店舗とは違い、今日のは普通のラーメン店である。
レジの後ろの壁にある色紙が2人の目に付いた。
「地方のラーメン店あるあるだ。地元のテレビ局の女子アナの色紙だよね。誰だか分かんねー」
「聞こえるよ」
悠太は苦笑いで愛子に言う。
2人は靴を脱ぎ、座敷に座った。
「いらっしゃいませ」
40歳ぐらいの女性店員が水を持ってきた。
「決まったら呼びます」
悠太が言った。
「唐突だけどさー、中学の時プロレスみに行く途中小便漏らしちゃったんだ。俺」
こんなことカミングアウトすべきじゃないと思うが。
「え。どうして?」
中学の時、男友達と一緒に床屋で髪を切ってる間ずっとおしっこ我慢してたんだ。プロレス会場に移動中、もらしちゃったんだよね」
「何で美容院でトイレ借りなかったの?」
「何か言いにくいというか」
「いやいや。2人で髪切ってたんでしょ?そんだけ滞在時間長いんだから、普通トイレぐらい借りるでしょう」
「ね。なんで気使ってたんだろう。俺」
「まあ、悠太の育った家庭環境にも原因あるかもね。親厳しかったんでしょ?人に気を使いすぎなんだよ。私にも色々気を利かせたこと喋ろうと頑張ってるんでしょ?」
愛子はお見通しである。
「ちょっとトイレ行ってくる」
彼女から「トイレ」というワードを聞くだけで彼の全身に電気が走った様になる。
一般的には変態と言うだろう。
彼は物心ついてから女性の排泄に大変興味がある。
彼女は彼とは種類は違う変わり者だが、トイレから帰ってきて、このラーメン店で何を企んでいるのだろうか。
前回のラーメン店では、店内にある物干し竿の洗濯バサミに彼のハンカチを挟んで帰ってきた。
どうしてそんなことをしたのだろうか。
でも彼は彼女といるだけで幸せである。
綺麗で、痩せすぎでなく、ちょうどよく肉もついている。
ちょっと痛い女子の方が、気を使わず済む。
彼女がトイレから出てきた。
「さっき水持ってきたおばさんが一人でラーメン作ってんだね。普段はおじさんが作ってるのに」
15時ぐらいの今は、おかみさん1人で間に合う時間帯なのだろう。
近くの水槽で2匹の金魚が泳いでるのが見える。
悠太がそれをじっと見てるのに彼女が気付いた。
「悠太こういうまったりしたの好きそうだよね」
「愛子さん何か企んでるでしょう?餌あげてみたいとか思ってない?」
「あ。分かった?いい所に餌があるからちょっとあげてみようよ」
水槽の近くに金魚の餌が置いてあった。
愛子は袋に手を入れ餌をつまむと水槽にパラパラっと落とした。
悠太はそわそわして店員の方を見た。
ちょうど背中を向けていて気づいていない様だ。
「まあ何かしたくなってするのは私のルールみたいなもんだからさ。ルールって良いよね。悠太みたいに、几帳面な人見てると面白いんだよ。真面目に何かやってる悠太は好きだな。面白くて。『トランスポーター』って映画知ってる?あの主人公もさ、すごい真面目で、きっちりルールを守って仕事するんだけどさ、やってる事は結構大胆でしょ?真面目な人って変態性があって、ほんと面白いよ」
彼女が言った。
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