こいつはヤバい奴かもしれない
あのゲーム機(?)に向かって歩き出したのは
あのどこかお嬢様気取りの美夏だ。
「…お前の実力は知らないが……死ぬぞ」
「フン。まぁ、私に任せなさいよ」
とりあえず、任せてみるか。
美夏はゲーム機(?)の前に立つ、彼女の目つきが変わった気がした。
「さて、どんな面白いものか…お手並み拝見よ」
…何だろう、彼女はこの罠を楽しもうとしているのか。
さっきまで怯えていたが…
例えるなら、ハンドルを持つと性格が変わる…まるでそんな様だ。
なんだか、期待できる。期待できると思ったのは何年ぶりだろう。
「強気でいるのも今のうちなのさ!覚悟しやがれ!」
ゲームスタート。それと同時に爆音。耳を塞いでも音楽が聞こえる、
そんなのでろくにプレイできる訳がない。
爆音のせいなのか分からないが全身が痛い。
「…」
美夏は無言だ。いや…爆音で声が届いていないだけかもしれない。
なによりも…なにもかもが正確だ、軽く画面を見たら鬼畜難易度。
だが、彼女の顔をみれば余裕というのが分かる。
私達はしばらく爆音に耐え続けた。
…爆音が止んだ、どうやら終わったらしい。
「フフン、どうよ」
「うぅ……
…
……クックク……
これで終わりとでも!?まだまだゲームはある!
全てクリアしてみるがいい!!」
…だと思った。
あのゲーム機(?)は消え、今度はリングらしきものが出てきた。
美夏の手にはよくあるゲームのコントローラー。
そしてそのコントローラーで操るものは…
「な!体が勝手に!?何でだよ!」
「私がコントローラーで動かしてるからよ」
「や、やめろよ美夏!」
「黙れ、それとも敵の前で死にたいのかしら?」
「わ、分かった…」
恐ろしい、ホントに恐ろしい…
…またゲームスタート。
コントローラーをカチャカチャと動かし彼を操る。
華麗に敵の攻撃を避ける、そして攻撃を当てる。
結果、簡単に敵を倒した。
その後、パズルゲームやらレーシングゲームやら…ジャンルを変えてきた。
私も巻き込まれたが、美夏は次々にクリアしていった。
「…そこまで難しく無かったわね。さぁ、次のゲームは?!」
「う…そんなに簡単にクリアするなんて…
も、もうゲームなんてないよ…」
急に弱気になった、こいつはそういうタイプだな。
勝てたことには変わりは無い。この部屋から出られるだろう。
おかしな空間は元の部屋に戻った。
ドアを開けて様子を見る。見張りなどはいない、大丈夫だろう。
「…早く行くぞ」
「ま、待ってくれ!」
アホが私を呼び止める。
「この子も連れて行こうよ」
「…バカだな、こいつは奴らの手駒だ。
こいつが仲間になったとしても裏切るだろう」
「裏切るって決まった訳じゃないだろ!元々は俺たちと同じ
この研究所から脱出しようとした仲間じゃないか!!」
…ものすごい迫力だ。いつものアホじゃないみたいだ。
「…好きにしろ。これで奴が裏切って大変な事になっても私はしらない」
「あぁ」
広太は奴の駒に優しく声をかける。
「なぁ、お前。俺たちと一緒にここから脱出しないか!?」
「…いいの…?」
「あぁ!もちろんだ!」
広太は奴の駒に手を伸ばす。
「そういえば、お前の名前は?」
「あたしの名前は…」
奴の駒の名前を言おうとしたときだった。
美夏は何かを感じ取った。そして力いっぱいこう叫んだ!
「広太!!!ここから離れて!危険よ!!!」
「どっどういうk」
この言葉を言い切る前だった。
爆発が起きた。
私の頬に血が付いた