植物しかない
辺りがシン…と静まり返る。それもそうだろう、トランシーバーを駒に投げ倒したものだから。
それが頭部にヒットしたのだから、正直私も驚きだ。
トランシーバーを拾い上げる。…壊れた物でも役に立つんだな。
…まぁ、これは正当防衛だ。駒が悪いんだ、そうだ、きっとじゃない、絶対だ。
「結花、すごい!!倒した!すごいよ!!」
「…ただの正当防衛に過ぎない、ここで殺されたらお終いだったからな」
「それでもすごいって!」
…すごい、その言葉はやっぱり聞き慣れない。
他人から褒められるのは親ぐらいだったから同じぐらいの奴に褒められるのは違和感。
……私は無言で歩き始める。どう返答していいか分からないから。
後から鎌都達がついてくる、一人から三人。
しばらく無言で歩いた。静かすぎて不気味な廊下を…
「なぁ瞳美、ここってなんの階層なんだ?」
「いや?知らないよ?誘拐されたばかりだし…何だろうねここ」
「瞳美ちゃんも行動力あるね…凄いね」
…私かよ、誘拐されてすぐに脱出しようと試みるなんて…
この世の中、何があるのか分からないものだ。
この階をずっと歩いたが一向に進展が無い。
かれこれ一時間は歩いていた気がするが…何も無い。
厳密に言えば、空き部屋と白骨死体しかない。
この階層って使われていないのか?不気味すぎる。
「…何も無いね」
「そうだな、空き部屋は放置されている様だし」
「骸骨しかないね、不気味不気味」
「おまけに駒も見ない、なんだこれ…」
私達の声が響く、響いたところで何も起きないけれど。
…また歩き続けていると、なんか心なしか植物が増えてきている気がする。
もしかしてこの階層は植物系の実験をやっているのか…?
「なんか変な植物ばっかり育ってるな」
「そうだね、不気味な花が多いし…先には木もある、どうなってんの!?」
「ごめん、僕にも分からない」
「そりゃそうだろう…こいつらきっと植物図鑑に載ってない新種って言うやつだろう」
「へぇ…この黄色の花も新種なんだね」
「…あのさ、鎌都。とっても言いにくいけど言うね。
ソレ…タンポポだよ、全く新種じゃ無いよ」
鎌都は摘んでたタンポポを落とし、口をパクパクさせている。
そんなに衝撃的だったのか…タンポポ。
しかも瞳美に関しては花冠を作っている。なんだこの状況、危機感なさすぎだろ。
「…す、進むぞ」
「あ、うん、そうだね」
お遊びはここまでとして、更に奥に進む。
進むにつれて植物が増えていく、ジャングルみたいだ。
……結果的に言うと、よく分からない部屋に着いた。
「え?なにここ、めっちゃ植物じゃん。どうする?入る?」
「ろくな事にならなそうだが……一応入るか」
扉は草で覆われているがなんとか入れそうだ。
あまり気が乗らないが入るしか無いんだろう。
…私達はその部屋に入った。
部屋に入って最初に目に入った物、それは…死体。
首を吊っている、腐ってる、植物が死体を覆っている、グロテスク。
私は反射的に口に手を当てる、吐きそうな位、いやもう駄目だ。
私は気持ち悪い音を奏でながら、異物を吐き出した。




