材料探しの旅。その2
俺たちは無我夢中で階段を駆け上がる。
逃げることしか考えなかった。奈子の手をしっかり引っ張って…
ずっとずっと階段を駆け上がった。
気がついたら行き止まりだった、もうそんな階までたどり着いたのか。
荒くなった息を整える。あの熊はもう追ってきていない、良かった…
「奈子…もう大丈夫だヨ…危なかったネ…奈子…どうしたの?」
「ヒヒッ、ヒッ、ヒヒヒ、ヒヒッ」
「奈子…」
…壊れた?奈子が?
さっきのがショッキングだったから?いや、違うよね?
きっト、きっと俺が散々奈子をおどろかしてるカラ。その仕返しだよネ?
そう信じたいヨ、そうであってほしいンだよ!
「奈子、しっかりしてヨ!いつもの奈子に戻っテ!
いつも驚かせてるからソレの仕返しなんだよネ!?
俺が悪かったカラ、ネ、もうやめてヨ…」
奈子の肩を揺さぶれせながら、そう呼び掛ける。
ダケド奈子は笑ってばっかり。
あぁ…あ、奈子。狂っちゃった、壊れチャッタ。どうすればイイノ?
…今は、今は…パーツを探さないと。
ココって何階だろう、きっと戻るにも大変な位な所に来てしまったんだロウ。
奈子を連れて行かないといけない、俺は奈子の手をしっかりと繋いだ。
そして、俺たちはよく分からない階層の廊下を歩く。
壊れた奈子と、壊れてる俺で。
俺たちはよく分からない階層を歩き続けた。
ここはどんな階層なのか全く分からない、分からない、分からないんだ。
機械じみた物がたくさんある、ハイテクってやつじゃないかな?
奈子は笑い続けている、なんかだんだんどうでも良くなって来た。
もう奈子と一緒に笑えば良いんじゃなイ?
そしたら楽になれる気がしてきた。
…そう思った時、奴が目の前にいた。
ダメ、ただでさえ狂ってるのにこれ以上俺が狂ったら…
何か、目が覚めた気がした。長い長い悪夢の様な、何かが。
俺は奈子の手を引っ張る。
「奈子、逃げよう!俺たちだったら大丈夫そうだろう?
だから奈子、逃げよう」
しっかりと手を繋ぎ、廊下を駆け抜ける。
もちろん追いかけてきている、俺は中に入れておいた荷物を漁る。
何か良い物が入ってるはず。手に取ったのは煙玉。
ここだったら大丈夫、使える。
煙がモクモクと出る、そろそろ曲がり角、逃げれる。
しばらく走り続ける。もう追ってこないけど走った。
「…奈子、もう大丈夫だよ。もう奴らは追ってこない。
…そこの部屋に入ろう、もしかしたらあのパーツがあるかもしれないからね」
奈子はまだ笑ったままだった、少し心が苦しくなる。
奈子、元に戻ってほしいな。大切なお友達。
俺たちは部屋に入っていった。
機械だらけの部屋、コンピューターがたくさんある部屋だ。
もしかしたらここにあるかもしれない。
この部屋を漁る、奈子の手を繋いだまま。
「…見つけた」
ようやく見つけた、最後のパーツ。
これでここを破壊出来る爆弾を作れる。皆を救える…!
「やったよ奈子!見つけた、見つけたよ!これで皆を救えるよ!!」
「……救える、やったね…!」
奈子はそう言った、以前よりカタコトな言葉だけど、
完全に壊れてはなかった。なんか涙が出そうだった、なんでか分からなかったけど。
後は元の階層に戻って作るだけだ、奈子の手をぎゅっと握る。
俺たちは大丈夫だ、ここまで来れた。
部屋を出て階段に向かう。
階段に向かう途中、奴と目が合ってしまった。
絶対に目を合わせちゃいけない奴と目があってしまった。
あまりに急だから反応が遅れた。
階段まで行ければ、階段まで…そんなときだった。
足がもつれてしまって転んだ。
…起き上がろうとしても今転んだ時に足をひねったから起き上がれない。
凶器を持って近づいてくる。俺は反射的に両手を広げ、奈子を守る。
死ぬのはもう怖くはない、ただただ、奈子を守りたい一心だった。
でも、もう…ダメだ。俺は目を堅く閉じた。
…
……
………何者かの声が聞こえた。
「私の階層の実験体なんだ、手を出さないでいただきたいね。
彼らの事は私がどうにかする」
おそるおそる目を開ける…
その何者かは…
「…ジャック…」




