奇跡は…
誰かの叫びが私達の耳に届いた。
「…この叫びは…」
「行ってみるか、もしかしたら白羽達かもしれない」
私達はその叫び声が聞こえた所に向かった。
声の大きさ的にはそこそこ近い所にいるハズ…
廊下の曲がり角を曲がった先、その声の主がいた。
…白羽だ、白羽が泣き叫んでいた。
その傍らにはななしの姿が見えた。
私達は白羽に駆け寄る。
「白羽、一体何…が…」
彼が泣き叫んでいた理由が分かった。
ななしは血を流して倒れている。
鎌都は絶望的な表情でななしを抱きしめる。
「…ななし…!目を覚ましてくれよっ!!また笑顔を見せておくれよっ!!
お願いだから…お願いだから…!」
「鎌都、助かるかもしれないんだ。手当をしよう」
私はななしの手当てをする。
きっと助かると信じて。
…結果的にななしは助からなかった。
また…大切な仲間を失ってしまったんだ…
どうしようも出来ない悲しさに打ちひしがれる。
「ななしを…守る事……出来なかったから…」
「…元々は僕のせいなんだ、白羽のせいじゃない…
だから、そんなに気にしないで…?」
皆、泣き崩れている。責任が強いんだ…
するとトランシーバーから声が聞こえてきた。
『光乃結花、二人を助ける方法を見つけたヨ!』
「…懐器…悪いがもう、手遅れなんだよ」
私は今まで起こった事を全て話した。
もちろん、ななしが手遅れだという事を…
『…それは、ホントウ?君達と別れた後、死んでただなんテ…
冗談って言ってほしいナ…』
「冗談じゃ無いんだ、本当の事だ…」
『それは…残念だ…その子の親も悲しむだろう…』
完全にお葬式ムードと言うやつだ。
…もう私達、脱出出来ないんじゃ無いか…?
仲間の死を見たくない、現実逃避。
そこに一人の駒がやってきた。
今の私達に抵抗なんてこれっぽっちもなかった。
駒が持ってる凶器は死神が持っているような大きな鎌。
死んだ目で駒を見上げる。睨む気なんて無くなった。
鎌を振り上げる。これで私の一生は終わってしまうんだ。
…振り下げる直前何かが起こった。
考えられない何かが起こった。
それは…
「…ななし?」
死んだはずのななしは駒に飛びついてその駒の首を絞めていた。
強く首を絞めていたので駒は倒れた。恐らく死んだらろう…
そしてななしはふらふらの足取りでこちらに向かった。
倒れそうになったのを鎌都は優しく受け止めた。
「…おにーちゃん…守れたよ…命……守れた…」
「…ななし…」
「おにーちゃん…諦めたら…ダメだよ…約束、お願い…」
「うん、約束する。もう諦めないよ…!」
「よかった…絶対、だからね……おにーちゃん…」
ななしはニコって笑ってこう言った。
「おにーちゃん…大好き…」
それが最期の言葉。ななしが言った、最期の言葉。
本当に死んでしまったんだ。鎌都の腕の中で冷たくなっていく。
鎌都は大粒の涙を零す。そして優しくななしの頭を撫でながらこう言った。
「僕も、大好きだよ…」




