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10話 五番目の夢

 五度目の夢は、今まで一度も見たことがなかった。それは四度目の夢が怖すぎたからであり、そのために私はそれ以上寝られなくなってしまうことを何度も繰り返してきていたからだった。

 けれど、それも今回で終わりにしようと思う。

 その夜、四度目の、あのただ怖いだけの夢を見て、汗びっしょりで目を覚まして、私はとにかく着替えをすることにした。汗に濡れたままでは寒かったのだ。時計を確認すると、まだ二時半を少し回ったくらいだった。

 今宵の夢は回転率が高い。

 いつもなら、四つの夢を見終わると、ちょうど朝日が差し込んでくるくらいなのだ。だから五つ目の夢なんて、その存在すら考えたことはほとんどなかった。今夜の私は異常なまでの早さと期間で、夢の中を進み続けている。

 さすがに、このまま起きているようなことはしたくなかった。明日は平日だし、もちろんそんなわけだから学校へ行かなければならない。母さんはいないし、貯金をやりくりしながら何とかいつも通り生活し続けてきたのだ、できるなら母さんが帰ってくるまでこのままの生活を維持し続けたかった。

 それは突然いなくなった母さんに対する、ちょっとした、でもこれしかできない反抗でもあるのだと思う。

 ミルクパンに牛乳を温めて、静かなリビングで飲み干した。じんわりとお腹に染み込むホットミルクの温かさは、どこか母性の優しさを彷彿とさせる。少しだけ怖い気持ちから回復して幸せになった私は、仕方がないので眠ることにした。

 夢は、また必ず見るような気がした。それも、今まで一度も見たことのない五度目の夢。それが一体どんな夢なのか、まったく私には想像できないのだけれど、来るなら来ればいいと思った。もうそれなりに歳は重ねてきたのだ。確かに、まだ子供と呼ばれるような年頃だけれど、心だけは対等だと思っていた。

 そもそも、そうじゃないと不平等だと思う。

 私は目を閉じた。暗くて静かでひとりぼっちの夜。じっとしていると、沈み込むようにして眠りの深みに落ちていった。


 そして目覚めた私は、その日学校を休むことにした。


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