表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/22

20、力は何を望む

誰も居ない村で休んでいた俺たちの許に近づく騎士の一群。


統一された装備を身に着け全員が馬に騎乗し整然と進む姿は映画の1シーンを見ているかのようだ。


50メートルほどの距離を置いて停止し 一騎だけが進んでくる。


その動きは 自然であり殺意は勿論、敵意も警戒心も無い。


この時期に対戦国から出て来た いかにも怪しい俺達を連行しに来たのかと思ったが意外な対応である。




「領主様の命によりお迎えに上がりました。

解放者殿。これよりは我らドリエスタ近衛騎士団が領都までご案内いたします」


おもむろに馬から降り立った騎士は流れるような動きで跪くと王様に対して奏上するかの如く礼節を崩さない。


「ひとつ聞きたいが・・解放者とは何かな?」


「はっ、勇者という絶対の暴力を擁して 我々を奴隷のごとく・・いや、家畜以下の扱いをしていた悪辣な支配者から解放してくださった貴殿は我らにとって最大の恩人。しかしながら その偉業を称えるべき呼称が存在しないため暫定的に解放者殿と呼ばせていただいております」


「・・・」


おいおい、俺とシリアが周辺国のRMT業者を壊滅した事がバレてるよ。


「えっと・・人違いじゃないかな?私たちは商人ですよ」


「了解しました、世を忍ぶ仮の姿なのですね」


「そもそも、こんな貧弱な自分がその解放者なのですか?」


「御冗談を・・・。私は立場上 最強の勇者を名乗るゴロツキ共と面識があります。

恥ずかしながら、戦う以前に勝てないと感じる圧倒的な何かを受けて動く事すらままなりませんでした。そんな奴らですら今目の前におられる貴殿と比べれば赤子のようなものでしかないと感じますれば」


「はぁ・・なるほど。隠してもムダですか。この地の騎士殿も油断できませんね」


警戒している、と言った意味なのだが対する騎士は何故か嬉しそうにしている。


そんな経緯もあって、彼らの先導で領主の元まで案内される事となった。


途中に有ったいくつかの村も誰も居ない廃村のようになっていたが道中は特に変わったことも無く 領の中心地である領都にたどり着いた。




----------------




「私はな勇者とか呼ばれている奴らが大嫌いだ、恨んでいると言っても良い。

奴らの力を利用するどころか見たくも無いのが本音なのだ」


と豪華な応接室で俺達を歓迎したドリエスタ領の領主ゲルテスタ・アァスト・ドリエスタは俺たちの質問に真顔で返答をしてきた。


その答えには何の裏も表も無い本心であることがうかがえる。


勇者がこの場に居なくて良かったな。

この場に居るのは俺とアイちゃんだけで勇者のセセリィは別室に控えている。

セセリィが聖女を求めて暴走しないようにシリアを監視として付けてある。


今の言葉が真実なら 領主が勇者を覇権の為に利用しようとしたのでは無い、と言えるだろう。

では、なぜ隣の国と関係が悪化することを知りながら出兵したのか?


「ふむ、まだ警戒しておるのか?無理も無いな。今のところ表向きは敵の領主だからのぅ」


「表向き?」


「順番に話すとしようか。

まず、戦いに送り出した兵たちは領軍ではなく 国が監視目的に我が領地に派遣していた駐留軍だ。」


領主の話を要約すると

過剰な軍隊は居るだけでも食料を食いつぶすだけの存在だ。

その過剰な駐留軍名義の兵たちを脅迫同然で押し付けられた。

しかも兵たちは領民に対して盗み、恐喝、婦女暴行など殺人以外 好き放題の悪事を働いていた。

駐留軍はこの地に於いては憎むべき寄生虫のごとき存在だったらしい。


領主としては排除したいが部隊の後ろには勇者を擁する国が存在していた。


いかに守りを固めようとレベル上げをした勇者はたった一人で領主を惨殺するなど簡単に行うだろう。


それほどに勇者という存在は脅威であった。


支配国に反抗する手立てなど有り得なかった。



「ところが ある日、その武力を振り翳していた国がいきなり亡びたのだ。

最初はその情報自体が罠ではないのかと色々な手を尽くして調べさせた。

情報が真実と知った時の喜びは最高であったぞ。

思わずセセルゲイツの奴と肩を組んで祝杯をあげたものだ」


「セセルゲイツ?どこかで聞いたような・・」


「何言ってるのよ。うちの国の国王様でしょ」


アイちゃんのツッコミで思い出した。そして今回の戦いの理由も推測できた。


「国王と仲が良いのに兵を差し向けた・・やはり今回の戦いは最初から仕組まれたものなのですね」


「ほほう、気が付いていたか。そうで無くては開戦間もないこの時に国を出るはずもないからな。

しかも、敵の主軸であるはずの勇者を引き連れてだ」


「まぁ、気が付いたのは途中の農村を見てからですけどね」


「途中の村か・・廃村だったであろう」


「そりゃあ村人は誰一人居ないので廃村に見えましたが捨てられた村ではなかったからですよ。家々の戸締りは厳重に板を打ち付けていましたし帰ってくる前提で村を離れた感じでしたね」


「そうだ。大事な領民だからな私の指示で疎開させていたのだ。通過する兵共に荒らされないようにの」


簡単に疎開させたと言うが膨大な金がかかっただろうに・・・

他からの支援が有るな。共謀するほど仲が良いなら支援者は俺が住む国かな。


要するに今回の戦いは迷惑な軍隊と勇者を消すために仕組まれた茶番だった、と言う事だ。

最も被害の少ない形で皆殺しにするべく仕組まれたものだ。それほどに憎まれていた存在なのだろう。


そして、この領主は敵の力が弱くなった機を見て ためらいなく血を流すことを決断できる傑物なのだ。


これだけ気骨のある領主が他にも居るなら今後は小さな独立国が台頭して群雄割拠の時代が来るかも知れないな。


それは俺が今暮らしている国でも同じだ。


上に立っている者たちは世襲で地位を得ただけの腑抜けでは無い。

命ギリギリの舵取りをして生き抜いてきた生還者なのだ。

たとえ戦乱の時代だろうと生き抜いていく王なのだろう。


それにしても・・あの国でも俺の素性はとっくにバレていたのだな。むしろ納得だ


わざわざ場末の小さな店に宰相が調査に来た。

酒の事で逮捕された時も来たのは宰相だ、小国とは言え明らかに変だろう。

酒で逮捕されたのは恐らく国側でも予想外のアクシデントだったと思う。

宰相さんが機転を利かせて国に酒を献上する形で釈放されたが、考えればこの時も不自然だ。

宰相が驚くほど希少な酒だったらしいからあれだけの数を献上したなら爵位とまではいかなくとも何らかの褒美が有っても不思議では無い。だが、上から目線の対応は危険だし下手に中央との接触は悪手だと考えられたのだろう。

あくまで予測でしか無いが、俺と言う最大の危険物相手に国側はさぞ対応に苦悩した事だろうな。


やれやれ、一般人としてのんびり暮らすのは無理なのかな・・・。



それはともかく、


「ところで俺達を手厚くご招待してくれた理由を知りたいのですが」


「率直に言えば貴公の本音が聞きたい。我らを苦しめていた勇者どもが何も出来ずに消し飛ばされていくのを諜報達が確認している。難攻不落と言われた宮殿も一夜で廃墟と成った。その力は何を望むのか」


なるほど。俺のした事を知ってるなら警戒するか・・。


「それは、俺が住んでいるリスティルティクス王国が聞きたい事でもありそうだな」


「察しておったか。だが 少し違うな。

この問いは近隣の全ての国家、全ての領主の最重要課題なのだよ」


なるほど、魔王を倒した勇者が次の恐るべき魔王、というパターンだな。

そして今度は勇者が討伐対象になる・・いわゆる勇者の末路というやつだ。


まあ・・気持ちは良く分かるけどね俺は勇者じゃないよ。さて、どう答えるべきか。



「自分は今、一人の商人として静かに暮らしています。それ以上でもそれ以下でもありませんよ」


「その言葉、信じて良いのかな?」


「不思議な事でも無いでしょう。それこそ、かの魔族の国々の魔王だって勇者よりも強いのに侵略なんてして来ないじゃないですか。中途半端に強いから力を誇示したがるのです」


「中途半端に強いのが勇者か。これは、ははは、聞けば皆が喜ぶじゃろう」


あの時の魔王は本当に強かったよ。

シリアが倒してしまったけど、それが無ければ復讐に燃えた魔王が人間界を滅ぼしいてたかもな。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ