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18、やれやれ・・出張ですよ

「次っ、通行許可書は有るか?」


「えっと・・こちらで大丈夫と聞いたのですが」


「ほぅ・・国の営業許可書?。

その若さでこれを手にしたのか。凄いな」


二日前に戦いが有った為に国境である谷の衛兵は今もピリピリしていて検問にも力が入っている。

オレは日本のほぼブラックな会社の海外出張で何度もこんな場を経験していたので慣れたものだ。


「相応に苦労もしてますよ。

こんな時でも仕入れに出ないとならないですし」


「なるほど。良い装備の護衛も付けているな。だが、外は無法地帯と言ってもいい。気をつけるようにな」


「はい。ありがとうございます。生きて帰って来ますよ」


「よし、通れ」


無事に谷の国境を通過した馬車は先日巨大な鳥が敵兵を惨殺した戦場後の荒野を進み始めた。


同乗者はオレとシリアとアイちゃん。そして、屋根を突き破って部屋を破壊した勇者の少女。

まぁ、要するに全員だ。


あの後、北風のオレは追い出され、アイちゃんによる太陽のごとき尋問がなされた。


勇者の名前はセセリィミント。

めんどくさいのでセセリィと呼ぶ。

日本で遊んでいたゲームキャラの名前らしい。

容姿は裏課金キャラ(笑)なので転移の段階でキャラメイクされ、本人の理想のままに美化されている。

リアルな作りのオンラインRPGの美形キャラのように整ってはいるが・・整いすぎてツマラナイ顔だ。

勿論、この評価は口には出さない・・


あの戦いの日。

勇者セセリィに課せられた役目は前日から切り立った断崖をよじ登り、戦いのタイミングをみて上から岩を落とし国境の砦を攻撃、破壊する事だった。


ところが、開戦直後にもう1人の勇者テツヤが死亡。

攻撃の指示が出る前に今度は巨大な鳥の衝撃波によって彼女も岩場に叩き付けられ、次の日の朝まで気を失う破目になったそうな。

そう、攻撃計画を全てぶち壊したのはオレたちだ。


彼女が目覚めたのは明け方。

戦いの気配など全く無い。

なので戦況を知る為に谷を降りようとした。

高い所は登るよりも降りる方が大変だと言われる。

彼女も降りる途中に滑落しオレの家の屋根を破壊した。

要するに本来ならこの勇者も敵である。


オレが尋問していたならばこの時点で有罪決定、勇者という付加価値もつけて衛兵に突き出していただろう。

当然だ。

それくらい勇者という存在に嫌悪していたからな。


で、ここからがアイちゃんの手柄なのだが、勇者とはいえ女性が何故戦争に参加したのか聞き出した。


その話によると・・


セセリィたち勇者一行が街に立ち寄り宿に宿泊したのだが領主が真夜中に彼女等を急襲し拘束した。

多少強くなったとはいえ安心しきって寝ている時に襲われては流石の勇者と言えども何もできなかったらしい。


「領主は勇者たちを擁護する国は無くなったから生き延びたければ自分に従えと言っていた」


と、悔しそうに言うセセリィ。


今まで自分たちを抑圧していた勇者という戦力がフリーになった事を知った領主が今度は自分がその力を手に入れ周辺を制圧しようと野心を滾らせたのだろう。


当然お互いに主従の信頼など皆無である。

領主はチームメンバーを人質にして勇者だけ今回の戦いに参加させた。

そんな態度で勇者達の忠誠心を得られるはずが無いのにセコイ話であるが別の意味で有効な手である。


今回の戦いで勝利したなら領主は大々的に勇者の存在と功績を周辺国に宣伝できる。

作戦の後で勇者達が逃げたとしても周辺国は恐れて入国すら許可されないだろう。


もし他国に受け入れられても同じように兵器としての人生が待っているだけなのだ。逃げ場は無かった。

ちなみに 同じように拘束されていたのが先日亡くなられた勇者テツヤのパーティだ。



荷馬車なのでゴトゴトとのんびり進んでいく。


「ドリエスタ領まで半日ほどか・・隣同士の領土なんだし仲良く繁栄すればいいのに」


「隣が建国して独立宣言した事にかなり怒っていたから・・羨ましくて妬んだという事だと思うわ」


オレのぼやきに解説を入れたのは荷馬車の隣を騎馬で護衛しているセセリィ。

彼女の目的である人質奪還に賛同していらい(とりあえず)険悪な間柄では無くなっている。

今もお互いに多大な警戒しているのは当然の事だ。



ドリエスタの領主は 自分も国王になりたかった。

だが、周囲を多くの貴族に取り囲まれているため『建国なんてしたらそれを理由に袋叩きにあう』のが目に見えていた。


多くの国の中央が消滅したことで生き残った各々の貴族たちが独立国家のような立場であり、群雄割拠の戦国時代の世界情勢だからだ。

織田信長のように思い切った戦略をとれる領主がいれば平定できるのかも知れない。


「そんな理由で戦争を仕掛けて兵力が壊滅してれば世話ないな。それこそ周りから侵略されるだろうに」


「っ、その可能性も有ったのか・・急がないと」


「この世界は情報伝達に時間がかかる。そう焦らなくても大丈夫だ。もう少し行けば農家が在るはずだから馬車をそこに預かってもらって、その後は全力で走る。遅れるなよ」


「勇者の私より足が速いとは本当なのか?

・・嘘だったらぶっとばすぞ」


「勇者様、鍛えて無ければただの人、ってね」


「・・・・・」


前世のオンラインゲームだって勇者のレベルが低いうちは魔物に負けてポコポコ死ぬ。

この現実世界もゲームらしいが蘇生が出来ない仕様だから死ねばそれでゲームオーバーだ。

強くなるまで敵が待っててくれるはずもない。

もし、オレが魔王だったら弱いうちに勇者を探し出して自ら全力で殺すだろう。


まぁ・・レベル爆上げしたとしても戦闘経験が無ければ衰弱した魔王にも勝てないのが勇者の実態だったけどね。生死を賭けた戦いをナメてたのだろう。

何も出来ずにゲームオーバーした勇者のプレイヤーはログアウトした後で無駄に散財したことを後悔すればいいだけだ。


「それにしても、勇者の恋人を人質にするなんて貴族って恐いんだねぇ」


景色を見るのに飽きたのかアイちゃんが話に参入してくる。

日本にいた時の彼女は大人だったが今のロリな姿ではどうしてもアイちゃんと呼んでしまう。


何故そんな年齢にしたのかと聞いたら転移準備の段階で受け入れ側が消滅したため緊急処置で肉体生成を早めた為と説明されたらしい。・・・うん。俺達のせいだね。

オレとシリアの2人でRMTの拠点と召喚陣を破壊しつくした影響だ。


「貴族ね・・昔のフランスやロシアではわざわざ革命まで起きただろう。普通に生活できれば荒事を嫌う一般市民が武器を取り、命がけで戦うほど貴族たちの横暴が酷い有様だったんだろうな」


「ラノベに出てくる良い貴族って幻なのね・・」


「だよね・・物語を楽しんでいるうちが華だった。

・・・勇者なんて現実に成ってしまえば殺戮者だったし」


「1人殺せば人殺し、戦いで百人殺せば英雄ってやつだね」


「まさにそんな感じだわ」


アイちゃんとセセリィはすっかり仲良しだ。


「ラノベ・・かぁ。また読みたいね、オンラインで磨かれた質のイイ小説限定で」


「あー・・それ、私も賛成するよ」


ラノベ談義が始まってしまった。

オレも少しは読んでいるけどマニアの話には付いていけないのでノーコメント。



「ネットの小説もピンキリだけど良いのに当たると何度でも読みたくなるもんね。そういう作品ってさ一度読んだあとでも書籍化されると買いたくなる」


「私も沢山買ったぞ、ついでにコミカライズされたのもな」


あ・・、この会話の流れは知っている。

日本に居た時に大人の愛子さんにずいぶん愚痴を聞かされたものだ。


「ならさ、セセリィも思ってたでしょ。何でプロになったら駄作になるのーー?って」


「アイも感じてたか。わかるよ・・今まで何度も読めるほど面白かった作品が二度と読む気にならないクソラノベに変わっていく悲しさと腹立たしさ」


「以前のラノベブームの時も最初のうちは読めたけど、そのうち読む価値すら無いのが出て来てさ、少ないお小遣いで買った本なのに読んでる途中で何度ゴミ箱に叩き込んだことか」


「私もずいぶんと表紙の美しい絵に騙されたよ」


なるほど・・オレが借りて面白いと思った本は厳選された作品だったのか。そう言えば、続きが読みたくて買ったやつにはガッカリさせられた気がする。


「タイジにもいっぱい本を貸したし、面白いネット小説教えたよね。感想は無いの?」


そこでオレに振るか。


「まぁ、概ね賛成するけど・・

プロになってもマイペースな作家も居ただろ」


「そりゃあ全てが駄作に変った訳じゃ無いけど」


あまり彼女達に同調すると際限無しの愚痴になるから適当に方向を変える。


「アマチュアの時は日々の満員電車や苦しい仕事から逃れてプロの作家に為る事を夢見る。小説家に成ってPCの前に座って優雅にコーヒーを飲みながらお仕事・・なんて夢見るだろうけど、夢が適ってじっとパソコンの前に座ると何もアイデアが思い浮かばない、なんて良く有る話さ」


「どうしてよ」


「アマチュアの時に湯水のように湧いていたアイデアはな、苦しい生活の中で受けていた膨大な刺激の中で夢見てたから生まれていたからだよ。その刺激が消えたんだ、そりゃあアイデアも無くなるだろう」


昔から「小説の締め切りになっても作家が逃げ回って作品を書かない」なんてエピソードは多々有るけど、その姿勢は一般で働く人から見れば仕事をしない不真面目そのものだ。特に働きアリの日本人感覚からすれば許しがたい行為に見えるかも知れない。困っている出版社が正義で作家が悪者に見えるだろう。


だが、それは違うのだ。


クソ真面目に執筆を続けていてはアイデアと才能が枯渇するから刺激を求めているのである。

音楽もマンガもその他の芸術も、何も無い所から何かを生み出す作業とは機械的な仕事とは違うのだ。

商社に働いていた時にオレは客であるその手の人たちから胸の内を聞いている。


「なるほど・・。自分のアイデアが浮かばないから他人の物語を猿真似する自称売れっ子の恥知らずプロ作家が出てくる訳だな」


おっ、勇者するどいな。


ちなみに シリアはウトウトと寝ているので静かだ。






「じゃあ、お前の書いた小説はナンなんだ?」と熱烈な批判が聞こえるようですが、

自分の楽しみで創作しているアマチュア作品ですし駄作なのは承知しています。

本来は読み手の立場なので愚痴の一つもでるのでした。

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