17、頭上注意
「・・・・・おい、これって」
新築の自宅が大変な事になっていた。
遠くからでも分かるほど屋根に大穴が開いている。
俺の家は谷の入り口にあり、崖下と言っていい立地条件だ。
まぁ、間違い無く上から何かが落ちたのだろう。
この世界・・いや違うか、この国の一般住宅の屋根は殆どが巨大な魚のウロコで作られている。
屋根瓦の代わりにウロコが使われていると思えば分かりやすい。しかし ただのウロコではない。
居残りと呼ばれる育ちすぎた魚のウロコで希少品だ。欲しい時に必ず手に入るという訳では無い。
修理するのも一苦労なのだ。ちなみに新築した時は少し魚臭かった。
しかし、事前に調査して落下しそうな物は全て排除したはずなんだが・・・・。
「おう、タイジ、帰ってきたか。災難だったな」
「ただいま、フリアドスさん。現在進行形で災難だよ」
「確かになぁ・・明け方だったから飛び起きたぜ。凄い音がしたからな」
「そうです、そうです」
俺と出迎えのシリア、そして隣の職人フリアドスの三人で屋根を見ながらしみじみと会話する。
「壊れたのは俺の部屋らしい。当人は留守中で負傷者は無し。
まぁ不幸中の幸いという事だよ」
「良い事をしたから神さんが助けてくれたんだろうぜ」
「良い事?・・・・何の話だ?」
「貴族と揉めたのはマナリィを助けるためだって聞いたぜ。俺の娘のために・・すまなかったな」
オドロイタ
誰から聞いたんだ、このオッサン。
事実は確かにそうだが、あれを見て助けた事に気がついた奴が居たのか?・・だれだ!
まぁ、それはともかく・・・
オッサンはこれをネタに娘を売り込むつもりらしい。
恩を仇で返すなよ。
とりあえず話の流れを変えないと外堀が埋まる。
「なぁ、商談に失敗した俺の傷口に塩を塗りこむなんて趣味が悪いじゃないか」
「なっ、なんでぃ。その商談ってのは」
少しの殺気を込めてオッサンを睨む。それだけで巨体のオッサンがビビル。
「誰が助けたなんて美談にしたのか知らんが違うぞ。
貴族に商品を売りつけるのは美味しい商売だからな。
チャンスを生かして酒を売り込んだだけだよ。
まぁ、結果はご存知の通り大失敗。とんだ散財だったぜ」
心底不愉快な雰囲気でグチる。パフォーマンス大事。
「そいつは悪かった。
うちの奴がな喜んでたんで、てっきり・・な」
噂の犯人はビヤダルな体型の奥さんだったのか・・。
あの人の迫力で押し込まれたら俺でも負けてしまいそうだ。
レベルが高いとか問題にしないエネルギーが有るからな。
逃げよう。
「済んだ話はいいさ。
それより今は家を修理しないとな。やれやれだ」
そそくさと話を切り上げ、家のドアを空ける。
**************
「で・・落ちてきたのがコレ?」
「そう、コレ。
空の上から女の子が降ってくるなんて、さすがファンタジーな異世界だよねー」
アイさん・・家が壊されたのに嬉しそうだ。
見た目が子供だから無邪気にしてても違和感無いけどね
屋根が破壊され空が見えている。
俺の部屋は爆撃を受けた後の廃墟のようなありさまだ。
何故かベッドだけ綺麗にされて少女が寝かされている。
年齢は高校生くらい?
側には装備していたであろう鎧と剣がある。
呼吸しているようだし、無事に生きているらしい。
よく助かったな、と言うか全くの無傷にしか見えない。
顔立ちは 耳が尖っていないエルフ と言えば想像しやすいだろうか。キャラメイクに拘ったんだろうね。
ただし、美少女だが うちのシリアには負ける。
持ちキャラが一番。
淡いブロンドのストレートは腰まで届く長さだ。
戦う騎士や剣士なのにそんなヘアスタイルなのか?。
殺し合いである本当の戦いをナメているだろ。
アニメやラノベじゃああるまいし、髪の毛を捕まれて引きずり倒されたなら とんな剣豪だって負けるだろう。
ついでに言えば、下半身の装備はスカートだ。
以上の分析?の結果・・・こいつがどんな存在なのか良く分かった。
「シリア、この女は敵だ。全ての装備を解除しろ」
「死に装束にして良い?」
「それは いらない・・」
以前、魔王の城で聖女の装備をを剥いた時と同じだ。
こいつらの装備は油断ができない。
「タイジが鬼畜の所業をしている。
少女を裸にしてドSプレイなんて・・動画残したい」
「アイちゃん、こいつの着ていた服を良く見てみろ」
「女性の生下着をクンカクンカするなんて・・変態」
変態はおまえだ。
「母さまがその手にしているブラジャーにはSTR強化の付与がされています。
他の衣服にも色々とステータスブーストの付与がなされています。RMT業者のチート装備ですね」
「えっと、この下着がブースト?。
・・・・・・・・・・・・・
アイは強力なアイテムを手に入れました。
・・しかし、平らな私にはまだ装備不可なのです」
小学生体型のアイが自滅して大人しくなった。
話を戻そう。部屋を破壊した少女は「勇者」だ。
ほぼ全ての装備に最高水準であろう魔法の付与がされているから本人のレベルが低くてもとんでもないスペックになるだろう。
屋根を突き破る高さから落下したはずなのに素肌を晒している部分ですら無傷で済んでいるほどだ。
今は落ちたショックで気を失っているが この女が野田哲夫のクソガキみたいな性格だと面倒だ。
目を覚ます前に無力化しなくては尋問もできない。武装解除するのは当然の処置だよ。
しかし、装備だけで無力化したことにならない。
もしもこの女が真面目にレベル上げしていたら基本のステータスも一般人の何倍もあるだろう.
今の少女の姿はパンツ一枚で手首を縛り、むき出しの梁から吊るして立たせている状態だ。
ふんばりの利かないベッドの上に立たせているので気がついても自慢の怪力を使いようが無いと思う。
・・・確かに見た目は変態貴族が娘をいたぶる場面そのものだ。このままムチでビシバシ叩けば完璧だな。
はははは・・・・はぁ。
「シリア、こいつにシーツでも巻き付けてくれ。目のやり場に困る」
別に今さらオッパイ見て興奮する歳でも無いが アレが何気に男の目を引き付けるのは確かだ。
以前テレビで学者先生が「女性のオッパイはオスの気を引く為にお尻の形を目の高さに近い胸に再現した・・」とか言ってたのを憶えている。
そこまで学術的な理屈を言うまでも無く、アレは男にスケベ心が無くてもついつい目が行ってしまう。
珍獣をマジマジと見てしまうのと同じなのだ。
見せ付けているくせに男の目が行くと「スケベ」だとか「イヤラシイ」とか言われるとムカっとくる。
今から尋問するのにそんな下らない会話は御免だ。
などと回想していると気がついたようだ。
「ん・・手首が痛い・・。何処?」
「お前が屋根を突き破って破壊したオレの部屋だ」
「!」
少女の顔に緊張が爆走する。
やっと本当に目が覚めて現状に気がついたのだろう。
「えっ、何で?」
「言って置くが魔法は使えないぞ。打ち消す拘束がしてある」
「くっ、最低ね」
「ふん。違法な能力を身に付けてこの世界の人たちに迷惑をかけている勇者に言われたくないな」
フィクションやエンタメなら良いが、現実の生活でそんなものが存在するなどたまったものではない。
以前の地球で例えるなら、幼稚園の子供が大リーグ選手と同じ能力があったり、生まれたての赤ちゃんが一流大学に合格するようなものだ。モブな人々からしたら「ふざけんなー」と言いたくなるだろう。
「・・今はそんな議論する気は無いわ。早く放して、時間が無いの」
「この状況で自分の都合だけ語るのか。時間がどうした、ちなみにお前の仲間だろう 爆炎の勇者テツヤ とか言ってたバカは死んだ。お供の軍隊はほぼ全滅して敗走していった。お前も国に突き出せば侵略者として処刑されるだろうな。特に この国は勇者に苦しめられたから大嫌いだろうし」
「そんな・・もう負けたの。シアニスが死んじゃう・・」
何か調子狂うな、この女。
とりあえず、ここに来たのは自分の欲望では無いみたいだ。
「タイジくん・・女の子にそんな言い方したら余計に何も言えなくなるよ。こんな時は北風と太陽だよ」
寒くて悪かったな




