16、グレゴンスキー?
まぁ、あれです。
世の中 何が起こるか予測が付かない、という奴です。
トラブル回避の為に貴族に酒を振舞ったらその酒が訳有りの一品だった。
しかも それを見破ったのが鎧を身に纏った小さな姫様。
多くの騎士や男共の前でその件に関して追求されています。
「えっと・・お初に御目に掛かります。もしかして この国の姫様でございますか?」
「ふふっ。いかにも、リスティルティクス王国第二王女ジュリアナ・メシス・リスティルである。
まだ姫君扱いされると照れるがな」
「「「「「「おおーっ」」」」」」
ざざっ
野次馬の男共がざわめき、一斉に跪く。
当然 俺も跪き頭を下げる。
平民らしい行動だが別にへりくだっている訳では無い。
この僅かな時間に対応策を考えなくては・・・。
「して、どうなのだ?。この酒を知らぬようだし、そなたが酒商人とも思えぬが」
「そんなに凄い酒だったのですか・・」
「んん?。我の言葉を疑うのか」
騎士達から殺気が降り注ぐからそんな言い方するなよ。
まぁ、そういう話の流れを作っているから文句も言えんが
「そうと知っていればもっと買っていたのに残念です」はぁぁ
「買ったとな。誰からじゃ!。王家以外の者に売れば重罪であるぞ」
「自分は他の国から逃げて来たm「こやつをひっ捕らえろ」ので・・ええーーっ、ちょっとまって・・」
他の国で買った事を説明する前に逮捕されてしまった。
言う順番間違えたよ。とほほ
この姫さんメチャ短気な人だな。
そんでもって今は牢屋に入れられている。
牢屋に宿泊 初体験です。
シリアとアイが心配しているかな・・。
勿論この程度の場所から脱出するのは簡単なんだけど。
それをすると当然 混乱の続く外世界に逃げるしか無い。
せっかく落ち着ける国に来たからそれは遠慮したい。
なので 少しだけ様子を見る事にした。
牢屋の作りは簡単に言えば石の部屋だ。
イメージに有るような鉄格子など無い。
金属は総じて高価なので囚人に対して使うはずも無いのだ。
なので四方の壁は巨大な石材を積み上げただけの作り。
ドアも分厚い板にのぞき窓が付いただけの単純なもの。
天井近くの壁に5センチくらいの細長い窓?が付いていて日中はかろうじて手元が見える程度の明かりがとれる。
当然 夜は真っ暗闇。
トイレの甕も手探りで探す親切設計だ。
食事?・・メニューは想像にお任せする。
ただし、俺はこっそりとアイテムボックスから食べ物を取り出していたので飢える事は無かった。
腹が減ってイライラして暴れたらまずいからね。
最初はムショ生活をゲーム感覚で楽しんでいたが飽きた。
そろそろ忍耐の限界に近づいてムカムカしてきたよ。
まだ一日目だけど・・・。忍耐力?何それ
まるで、その限界を知っていたかのように足音が近づいて来た。
「なんじゃ、美味い酒を持っていた罪人とはお前さんか」
「あれっ、徴税官様?」
軋むドアを開けて入って来たのは以前 店に来た徴税官の爺さんだった。勿論護衛の騎士も数名同行している。
「まだ国になったばかりでのぅ、色々と仕事を掛け持ちしとるんじゃよ。ふほほ、なるほど。他の国から逃げて来たか・・それは間違いないのう」
「別に悪い事をしたから逃げて来た訳じゃ無いですよ。あの酒は知り合いだった酒屋が『店を畳むから買ってくれ』と売りつけていった物で、次の日にお城が消えてるのを知ってその理由が分かったんですから」
「ふむ・・お前さんの言い分は分かった。
知らずに買ったというのも認めよう。しかしのぅ、
世の中には知らなくても罪になる事は多い。
商人ならそのくらい回避出来るだけの知識を身に付けねば危ないのぅ」ほっほっほ
まぁ以前の地球でも麻薬なんかは自分に非が無くても所持していただけで罪になったからな。
酒を所持するのが麻薬扱いとは異世界恐るべし。
これは いよいよ牢破りして脱獄も考えないと・・。
顔見知りだからか、爺さんも少し悩んでいるみたいだ。
「今は他の国々が乱れとるでな、今回は特例として買った酒を全て献上するという形で情状酌量とするかの」
「宰相閣下・・よろしいので?」
「この者は商人じゃからの、献上する目的で買ったのなら罪に問う必要も無くなるじゃろうて」
「ええっ!。宰相・・様?」
「ふほほほ、驚いたじゃろう。宰相も兼任しておるのじゃ。優秀な人材は以前の国に流れていたのでな、色々と人材不足で困る。
だれぞ優秀な者は居らぬかのぅ」ちらっ
意味深な言葉を並べて俺の様子を見ている宰相さん。
よもや、こんな仕打ちをしといてスカウトする気じゃ無いよな。
とりあえず、表面上は残念なふりを見せながら所持していた王家御用達らしい酒を取り出していく。
全部で5本。何の未練も無いので提出する。
破壊した城からガメてきた酒はこれで全部だ。
ん?、いや もう1本有るけど銘柄が違うな。
「違うのが一本だけ有るのですが・・コレ何か知ってますでしょうか?」
・・・・・・・・・・・!
「ぬおおおおおおおーーーっ、それは!」
びっくりした。
老人とは思えないほどの大絶叫。
護衛の騎士達ですら飛び退いたほどだ。
「これは・・まれにダンジョンから見つかるという酒。グレゴンスキーじゃ。久しぶりに見たのぅ」
なんか・・ウイスキーの名前を厳しくしたような酒だな。
それにしても、またレアな酒でしたか。
さすがRMT業者が絡んでいた国の城だ。
どんな手口で激レアの酒を集めていたのやら。
「はぁ・・もういいです。
それも献上しますので良きに計らってください」
「おお、そうか そうか。
国を興して早くもこのような物が献上されれば王も喜ばれるじゃろう」
大喜びの宰相様の鶴の一声により その後は見事に対応が違っていた。犯罪者から客人に変身だ。
帰り際には王国からの正式な営業許可書が手渡された。
これは何と王都に商館を立ち上げる許可書でもある。
真面目に商売する気など無いのに商人の基盤が出来て困る。
城の門まで騎士さんが見送ってくれたけど・・
帰りは歩きですか?。
馬車で運ばれたから家まで遠いんですが・・。
そして無常に門は閉じられた。
「おっ、本当に出てきた。おーい、ヨロズヤの若旦那」
「あれっ、親方のとこの若衆の人・・タクラさんか」
「かーっ。さん付けはよせや。タクラで良いぜ」
「あはは。それより、どうしてこんな所に?」
「シリアちゃんに頼まれたんだよ。そろそろ出てくるだろうってな。まぁ、親方からもきつく言われてるから迎えに来たわけよ。船で海を渡ればそんなに時間もかからねぇからな」
「なるほど、そいつは助かる」
さすがシリアだ。
俺が一日で音を上げるのを読んでいたらしい。
今回の教訓は「タイジ危うきに近寄らず」とする。
貴族に近寄るのダメ、絶対。という事だ。
とは言え・・何気にフラグを建てまくった気がするけど。
とりあえずこれで普通の生活に戻れるし良かった。
俺とタクラは城から坂道を下り、近くの桟橋にとめていた彼の小船に乗って港町カフスレディアに帰ってきた。
桟橋には既にシリアが待っていた。何故分かった?
「ありがとう、タクラ。今度また酒でも持って挨拶に行くよ」
「いいって。気にするねぇ。大事なお得意さんだからな」
テレながらも期待に満ちた目はキラキラしている。
感情が分かりやすくて心配に成るほど純粋な男だ。
「タイジー、急いで。大変なの」
シリアの一声は「お帰りなさい」にしてほしかった。
何か有ったらしい・・。
平和な日常はいずこに




