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6歳のわたしがマンモスの化石を拾った話

作者: 中村ゆい

小学校1年生のとある日、田舎の小学校の昼休み。

校庭で遊んでいたわたしは石を拾った。

ヘンな形の石だった。

500円玉くらいの大きさの黒っぽい石で、茶色の不思議な模様がついていた。


「ねえ見て。変な石、拾ったー」


近くにいた友だちに見せると、その友だちはどれどれとわたしが手に持つ石を眺め、突然驚愕の表情を見せた。


「ゆいちゃん! こ、これは……マンモスの化石だよ!」

「マンモス!?」


この友だちの言葉が騒ぎの始まりだった。




マンモス(?)の化石と思われる石を手にして驚いているわたしをよそに、その友だちは教室に戻って来るなり、クラスメイトたちに告げて回った。

……ゆいちゃんがマンモスの化石を拾った、と。

子どもというのはどういうわけか化石というものが好きみたいだ。

わたしは一躍、クラスの注目の的となった。


「見せて!」

「見せて見せて!」


わたしに大量のクラスメイトが押し寄せてきた。

わたしもこれがマンモスの化石だと信じ込んでいて、得意げにみんなに見せびらかしていた。


「おお~、ほんとだ。たぶんツノの部分だねえ」


誰かが感心したようにそう言った。

ツノってどこだよ。なんでわかるんだよと今なら思うけど。



そのうち、とんでもないことを言ってくる子が現れ始めた。


「その化石、わたしにちょうだい!」

「は? おれにくれよ!」

「わたしのほうがゆいちゃんと仲いいから、わたしにくれるでしょっ?」


化石をめぐっての争奪戦が始まった。

しかし、せっかくわたしが拾ったマンモスの化石なのだ。

誰にも渡してはならない。

だってわたしの化石なのだから……!


「あげないよ!」


とわたしは宣言し、ゆずってほしいというすべての申し出を振り切って昼休みは終わった。




ところが化石を狙うヤツらとの戦いはまだ終わっていなかった。

放課後、ひとりの男子がわたしのもとへやって来て、取り引きを持ちかけてきた。


「ゆい……おまえの化石と、おれの大事なこれを交換しないか」


そう言って大事そうに差し出されたのは……





バトルえんぴつだった。





男の子たちにとっては宝物かもしれないが、そもそもえんぴつでバトる文化のない女子のわたしには申し訳ないがまったく無用のものである。

しかも、新品ではなく使いかけ。

芯がバッキボキに折れているのは想像に難くない。

こんなものとわたしの化石を同じ価値だと思われては困る。

私はソッコーお断りして、急いで家に帰った。




ちなみに学校からの帰り道、わたしはこれから化石をどうするかという妄想にふけっていた。

わたしのお父さんは中学校の先生だ。

ふだんからすっごく物知りだから、きっとマンモスのことにも化石のことにも詳しいに違いない。

まず、お父さんがお仕事から帰ってきたらこの化石を見せて、鑑定してもらおう。

きっとお父さんも「すごいものを拾ったな!」と褒めてくれるだろう。

それから、どこかの博物館に持っていって買い取ってもらうのだ。

いくらになるかわからないけれど、きっといっぱいお金がもらえるはず!

そしたらわたしは大金持ち!

お金は何に使おうか。まず、お菓子でしょー、それからリカちゃんの新しいお洋服でしょー、etc.

わたしは一等の宝くじでも持っているかのような慎重さでその化石を持って帰った。




家に帰っても母には化石の件は黙っておいて、とにかく父の帰宅を待った。

夜になって父が帰ってくる音が玄関から聞こえると、わたしは化石を手に父のもとへすっ飛んでいった。

さあ、いざ、わたしの化石を見てもらおう!


わたしの手の中にある化石を見た父の反応は、こうだった。


「化石なわけあるか。ただの石やん、これ」

「えっ、でも同じクラスの子がこれは化石って……」

「石やで。拾ったん? 汚いから捨てたほうがええぞ」


父はそう言ってわたしの手から化石をつまみあげ、玄関の外に投げ捨てた。


「あーっっ!!!!」


わたしの化石が夜闇へと消えていく。

人生最大級の絶望を感じた瞬間だった。

こうしてわたしが拾った化石(だと勘違いしていた石)は、家の庭の砂利と同化した。

今も庭のどこかに眠っていることだろう。





大学生活も終わろうとしている22歳の今、なんとなくこれを思い出して家族に話したところ、母には「なぜそのとき私に言わなかった! 私ならそんなお父さんみたいにひどいことはしなかった! すごーい、化石だねってノってあげたのに!」と爆笑しながら責められた。

父には「そんなことあったっけ? もう覚えてない。だけど真実は早めに教えてあげたほうがいい。僕は間違った対応はしてない」とぶっきらぼうに言われた。

大学の友人にも何人か話してみたところ、笑い話として結構ウケた。

「でもさ、国宝の金印だって田んぼから出てきたんじゃん? もしかしたら本物だったかもよそれ」と言われたけど、今ならわかる。あれは絶対にただの石だ。

わりと笑ってもらえる評判がいい思い出話だったので、この場にも記してみたまでである。

おわり。


自分の記憶に忠実に書いていますが、なにぶん10年以上前の話なので多少事実と違う部分があるかもしれません。万が一、当時のクラスメイトの方などがこのページにたどりつき、この文章を読んで「事実と違う」と思われた場合には多めに見ていただくか、「間違ってるから修正しろ」とお知らせください。直せる範囲で直します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです! 笑いました。 子どもの世界って楽しいですね。お友達もご家族も個性的でうらやましいです。 あと、バトル鉛筆が懐かしかったです。 [一言] 自分にも面白い出来事の一つや二つは…
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