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第3話 三冠馬

 レースの映像を見終え、貞樹の興奮は一際強まったようだった。


「ふふふ、ふふふふふふ。どうですか桜花さん! これが日本競馬史上、最強と呼び声高い日本近代競馬の結晶! ディープインパクトです!」


 どうやら貞樹のスイッチは完全にオンのようだ。これでは聞かざる終えない。

 

 あー、始まる。


 桜花の予感は見事に的中。

 そして今日も貞樹の競馬トークが始まった。


「ディープインパクト、深い衝撃。まさにその名になるべくして生まれてきたように、その走りは多くの人々に深い衝撃をあたえたのです!!」


「へ、へぇ〜」


 苦笑いしつつ桜花は近くの椅子に座った。ここからは大分長くなるだろう。

 なおも貞樹のトークは続く。


「多少気性は荒く、スタートで出遅れたりすることはあったものの、なぜかいつも直線では弾けたように疾走する。その姿に、人々は多くの夢を見ました。」


 なんかもう私に理解が難しい内容が混ざってきたよ。こんなことをいつも一人で? それとも誰かに話すのがうれしくて?


 桜花はとうとう馬鹿馬鹿しく思えてくる。

 そんな桜花に気づくこともなく、なおも貞樹は馬鹿馬鹿しい話(あくまで桜花の見解です)を続ける。


「道中は最後方で足をため、最後の直線でごぼう抜きというレーススタイル。デビューから負けなしの3連勝で一気にG1の舞台へ」


「前に話した、最高峰のレースだよね?」


「その通り、しかもそのG1は皐月賞という3歳でしか出走できないクラシック。前に少し話しましたよね?」


「うん、うっすらだけど覚えてるよ」


 桜花はもう面倒くさい貞樹に普通に接するようになっていた。


 ………これは私の中の貞樹の評価が下がったってこと?


「多くの3歳馬はそこを目標にするレベルの高いレース。しかし! ディープインパクトはそのレースで2歳王者やその他実績馬をまるで子供扱いするように圧勝!! その強さに実況者も思わず『三冠』という単語を――」


 うん、そのようだ。納得。


 桜花が一つの結論を導き出したとき、貞樹はモニターの画面をキーボードで変え、


「その時の実況が! これです!!」


 貞樹に見せられ、細い目で桜花はモニターをみる。

 ちょうど、そのディープインパクトという馬が他を子供扱いしてゴールした瞬間。


『武豊、三冠馬との廻り合い! まずは皐月、第一関門突破です!』


 …………えっ? どう反応すればいいの? なにか聞いた方がいいのかな?


「え、えっと、三冠馬って何?」


 聞くと貞樹は、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりにニヤリと笑い。


「よくぞ聞いてくれました!!」


 本当にいった。


「三冠馬とはクラシックの中で、牡馬が主軸の3つのレース、皐月賞、日本ダービー、菊花賞をすべて勝った馬のことです。そして、ディープインパクトもその圧倒的強さでその後、三冠馬になりました」


「それって、凄いことなの――?」


「すごいことなのです!!」


 凄い勢いで桜花に顔を近づけ宣言する。


「ふ〜ん」


 前、というか昨日まではこんなことされたら心臓ばくばくだったのに。

 人はこんなにも早く改心できるものなのだ。


 貞樹の顔を見ながら、人の凄さを知った桜花だった。




 では桜花さん。


 はい。


 これから三冠馬講座を始めたいと思います。


 ねぇ、「」は? 語り手はどこに?


 ここからはマニアックかつ、話すことが多くなるのでその点は省かせていただきます。


 ねぇ貞樹君。


 なんでしょう。


 この部屋寒いからストーブつけていいかな?


 あ、はい、どうぞ。

 う、うん! では始めたいと思います。


 教えてください貞樹君。


 あの、もう少し、興味をもっていただきたいのですが。

 ……まあいいでしょう。

 では、まず三冠馬を三冠馬たらしめる三冠レースについて。


 3つのレース、それぞれ特徴が違うの?


 その通りです!

 まずは皐月賞。皐月賞とは、4月に中山競馬場、芝2000mで行われるレースで三冠最初のレース。最も速い馬が勝つと言われています。


 へー。


 次に日本ダービー。このレースはすべてのホースマンの夢でありほとんどの人がこのレースを目標にしている、まさに日本の一番価値のあるレースです。5月に東京競馬場、芝2400mで行われ、三冠レースの第二関門です。このレースは最も運の良い馬が勝つと言われています。


 ほー。


 あの、桜花さん聞いてますか?


 大丈夫、しっかり聞いてるよ。つまり、この二つのレースは速くて運も良い馬が手にできるってことでしょ?


 おおおぉー! しっかり聞いていただいて感謝です!


 う、うん!


 では最後に、菊花賞! 菊花賞とは、10月に京都競馬場の芝3000mで行われる三冠最終レース。3000mという過酷で長い距離に多くの馬が苦戦し、皐月賞、日本ダービーを勝った馬もここで負けることが多いです。


 いくら速くて運があっても、距離を克服できなければ三冠馬にはなれないってことだね。


 そう! それゆえに、菊花賞は最も強い馬が勝つと言われます。一番速くて、一番運が良くて、そして一番強い馬が三冠馬になれるのです!


 もうそうなると奇跡に等しいね。


 そうなのです! 三冠馬とは! 奇跡なのです!


 ち、近いよ。





「ところで?」


 はい、講座は終了、語り手ただいま戻りました。


「その奇跡の馬はこれまでにどれくらいいたの?」


 桜花が聞くと貞樹はにやりと笑う。


「ど、どうしたの?」


「いえ、桜花さんに競馬に関して興味をもっていただいてうれしくて、つい」


 貞樹がにやにやしながらこたえる。


「へ、別に、興味をもったわけじゃないし!」


「桜花さん、私はツンデレはそこまで―」


「だから! ちがうし!」


「ずいぶんキャラ変わりましたね」


 キャラが変わった桜花がアイコンタクトで教えを請う。

 それを貞樹は察して、棚から資料を出した。


「今までの競馬史上、三冠を達成した馬は7頭、うち2頭が無敗で三冠を達成しています」


 そういって二枚の資料を桜花に渡した。

 桜花はその二枚に目を通す。


 一枚目には、古い白黒写真から最近の写真まで7枚の馬の写真が載っていた。


「これ、貞樹君が作ったの?」


「そうです。これも競馬研究部の活動の一貫ですから」


 それを聞きつつ、2枚目を見る。そこには、7頭の馬の名前ともう一つ異名のようなものが書かれていた。




・セントライト『日本史上初の三冠馬』 戦前の活躍馬。三冠達成後すぐに戦場に出された悲しい名馬。


・シンザン『ナタの切れ味』 戦後初の三冠馬で史上初の五冠も達成。


・ミスターシービー『天馬二世』 天馬と呼ばれた父を持ち、その末脚は競馬のジンクスさえも覆した。


・シンボリルドルフ『皇帝』 史上初の無敗の三冠馬。史上初の七冠も達成。その強さに史上最強馬との呼び声も高い。


・ナリタブライアン『シャドーロールの怪物』 シャドーロールがトレードマークの五冠馬。ダービーでのレースぶりは多くのファンを熱くさせた。


・ディープインパクト『英雄』 無敗の三冠馬で人々に多くの衝撃をあたえ、空飛ぶサラブレッドと称された。


・オルフェーヴル『金色の暴君』 破天荒な栗毛の三冠馬。凱旋門賞2年連続2着と世界に最も近づいた名馬。




「どの馬も個性が強いというか」


「そういう馬の方が天性の才能とかをもっていたりするのですよ」


 どの馬も、競馬界ではとても有名なのだろうと桜花は思った。そのうえで桜花は貞樹に質問する。


「ねぇ、今までで一番強かった馬は結局どの馬なの? やっぱりこの三冠馬の中のどれかなの?」


 それを聞いて貞樹の動きが止まる。しばらく沈黙が続き。


「……桜花さん。それは、競馬ファンの中で長年争われてきた議題です」


「そうなの?」


「ええ、三冠をとったから一番強いという訳ではありません。年をとってから強くなる晩成型の馬もいますし。またはその逆もある。それが馬という生き物です」


「馬にもいろんな個性があるんだね〜」


「その通り。そしてもう一つ、競馬史上最強馬の議題になればファンは自分が一番強いと思う馬をあげます。しかし別の馬をあげる人が現れ言い争いになる。そもそも、最強馬なんて決めることは無理なのです。馬にはその馬の適正がある。短距離が得意な馬がいれば長距離が得意な馬もいる」


 すごい語るなー。本当に競馬が好きなんだ。

 でもやっぱり面倒くさいかも。自分で聞いておいてなんだけど。


「(それに、ダートだって障害だってある)」


「えっ?」


「あーいえなんでも。それより最強馬の話ですが」


「うん」


「決めることは無理ですが、候補くらいは何頭かあげられます」


「じゃ、じゃあおしえて! 聞いてみたい」


 桜花は競馬に少しずつ興味を持ち始め、貞樹によって惹かれていく。

 貞樹はそれに喜びを覚えた。しかしこれが目的ではない。


「条件があります」


「条件?」


「競馬研究部に入ってください」


 そう、部への勧誘。より競馬を詳しく理解したい。それが貞樹の目的。しかし、部員がいなければ廃部。一人でやればいいことだが、そうではなく。形として残したかったのだ。

 それほど競馬が好きなのだ。


「私が? 競馬研究部に?」


「どうかおねがいします!」


 桜花は考えた。

 もともとなにかやりたいことを探していた。そして可能性を見つけた。これを断れば何も始まらない。だが貞樹の手助けも面倒くさそう。しかし、桜花は決めていた。

 

「うん! おねがいします」


 貞樹は満面の笑みで、


「ありがとうございます!」


「よろしくお願いします」


「はい、お願いします」


 こうして、競馬研究部の部員が二人になったのであった。






「それで、最強馬の話は?」


「今日はもう帰りましょう。候補馬を明日までにまとめてきます」


 外は夕方でオレンジに染まっていた。


「それでは、桜花さんまた明日」


「うんまた明日」


 手を振り部活棟の前で二人は別れた。






「てえええええ!!!!!」


 桜花は叫んだ。


「なんでたった一日で貞樹君とこんなに仲良くなってるの?! しかも二人で部活?!」


 明日からの学校の不安と、貞樹の競馬に関しての面倒くささの不安を抱えながら、帰路につく桜花であった。




 

疲れたんで寝ます。


次は、幽霊の方の投稿になると思います。

明日か1ヶ月後かはわかりませんが気長に待っていただければと思います。


誤字あったらすいません。感想、気軽にどうぞ。

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