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無罪放免  作者:
4/4

無罪放免〜千夏sid〜

 そもそも、私が秋人と知り合ったのはいつだろう。

 高校に入って、中学の頃の知り合いは誰もいなくて。自分らしくない自覚はあるが、最初の頃はクラスメイトにすら話しかけることすらできなくて。


「いつも一人だったよな」

「そうだったな」


 二人で商店街を抜ける。いつもの帰り道。隣を見れば私の好きな人が。


「気づいたら秋人がいてくれた」

「なんか、ほっとけなかったんだよ」


 きっと秋人だったから。秋人だったから私は今の私でいられた。

 一緒にいるのが当たり前になって、秋人の存在に感謝して。それが恋心になるのに時間はかからなかった。


「秋人……私な、秋人の事が──」

「千夏」


 私の勇気の告白を遮るかのように秋人が私の名前を呼ぶ。久しぶりにその声で呼ばれる私の名前。

 ただそれだけの事なのに、学校で流したように頬に暖かい物が流れる。関係が消えるの嫌で、勇気を振り絞って今ここにいる。


「千夏……俺な」


 もし秋人に私の気持ちを伝えたらどうなるのだろう。きっと、秋人は私を異性とは見てはいないだろう。それでも気付いて欲しかったから『重罪人』というあだ名を考えて。


「千夏のことが……」


 でも結局、私の独りよがりだったのかもしれない。

 変なあだ名を付けて、勝手に秋人の気持ちを知ろうとして結果距離があくことになってしまって。


「俺は千夏のことが好きだ」


 もし秋人が私を好きだったら……何度も考えて、何度も願って。でも、それで関係が消えてしまうのならずっと友達でよかった。

 今のこの微妙な関係になってしまったことが、何よりも辛い。だから、私の気持ちが一方通行でも……──。


「今……何て言った?」


 秋人は今何を言った。

 私の問いに顔を赤める秋人。その表情で私も聞き間違いじゃなかったと知る。


「秋人……」


 それは本当なのか?嘘じゃないのか?

 言いたいことがあふれ出して、逆に口からは何も出ない。


「変なこと言ってごめんな。千夏に好きな人がいるのは知ってるから、さ」

「え……何を言って……」


 私の好きな人?そんなのお前に決まってるだろ。

 朝も昼も帰る時も一緒なのに、なんで気が付かないんだ。むしろ、ずっと一緒だったのにお前は私に興味を全く持ってくれなかったから『重罪人』なんてあだ名まで考えて。


「俺のせいなんだけどさ……変に距離ができちゃっただろ?今の俺のを聞かなかった事に……って言えるほど諦めがつくわけじゃないけどさ。今まで通りでいいから、俺と友達でいてくれないか」

「ま、まってくれ……」


 違う。私もお前の事が好きで。だからそんな悲しそうな顔をしないでくれ。

 そんな……自分の気持ちを抑えつける覚悟をしたかのような顔をしないでくれ……私も同じなんだ。


「違うんだ……私だって……」

「ありがとな」


 なんで私の口は、私が言いたいことを言葉にしてくれないんだ。私が一言……自分の気持ちさえ言えば、私の好きな人のその悲しい顔を変えられるのに。


「明日の朝はいつも通り、あの場所で待ってるからさ……1日だけ時間。くれるか?そしたらいつも通りになるからさ」


 笑えてない顔で手を振り私から離れていく。

 待ってくれ。今……今、私も言うから。私の気持ちを。好きだって。秋人のことが、秋人が私を想ってくれるずっとずっと前から好きだったって。


「じゃあな……ちな──!」


 私の口よ。お前の仕事は言葉は発することだろう。決して、相手の言葉を物理的に止めることじゃないだろう。なのに何で……私は、秋人とこんな至近距離で顔を合わせないといけないんだ。


「ちな……つ?」

「私の初めてだ」


 私は何を言ってるのだろう。いやまぁ、初めてではあるのだが。


「『期待させるってのは罪なんだ』だったか」

「え……あ、あぁ」


 私に散々期待させて、ずっと放置して。だからお前は『重罪人』なんだよ。


「お前は私の初めてまで奪って」

「いや、今のは千夏が……」


 私は笑顔で秋人の口を手で塞ぐ。


「お前は本当に、どうしようもなく『重罪人』だよ。けどまぁ……」


 なんでだろうな。結局、私は遠回りをしていたのだろうか。

 私がもっと早く勇気を振り絞って、私から気持ちを伝えていれば何も問題はなかったのに。


「今までのこと。今回のこと。全てを許してやろう」

「意味が分からないんだが……」


 あと1ヶ月もすれば夏休み。高校最後に夏休みは、きっと……いや絶対最高の夏休みになるだろう。

 私の横でまだ顔を赤くしている私の好きな人をみてそう確信する。私も恥ずかしいのだから、堂々として欲しいのだが……。


「重罪人、秋人よ」

「なんですか……」


 海とか花火とか……あぁ、その前に秋人の友人にもお礼しとかないとな。


「全てを許し、ここに『無罪放免』を言い渡そう」

「……さいですか」


 秋人の2歩前を歩いてから後ろを振り返る。


「ほら、早く帰るぞ」


 秋人に手を差し出す。


「エスコートは『彼氏』の役目だろ?」

「はいはい」


 よろしくな。私の大事な好きな人。


ありがとうございました!


感想・批評などお待ちしています!

特に誤字とか…(笑)

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