表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

乙女ゲームはノーサンキュー

作者: 須和光輝

 巷(……といっても極一部だろうが)では、異世界トリップだ転生だと創作物が流行っている昨今。まさか自分がその立場になるだなんて、誰が想像するだろう。

 俺TUEEEE!とかNAISEIとかハーレムとかチートとか傍観とか悪役とか色々あるけれど、それらは画面越しまたは紙面上で見ているだけだから楽しいのであって、自分が体験するとなると真っ平ごめんだと私は思う。

 そんな私がゲームの世界に転生しちゃうとか本当もう、ね……。


 どこぞのアクションゲーとかホラーゲーとかよりは平和なだけましだけれども、通称乙女ゲーと言われる世界に生まれ変わったなんていったい何の冗談だっつーの。いくらそのゲームが好きだったとはいっても何故?他の人にしてくれよ……。

 せめて、前世の記憶がなければまだよかったものを。幼児にいい歳した大人の意識は辛すぎる。


 そもそも、攻略キャラと言われる彼らは二次元だからいいのであって、現実にいたらちょっと引くわー。顔が良いだけの人格・性格破綻者とかないわー。そして実際引いた。我先にと主人公ちゃん(と思われる少女)に群がり、言い寄る様に。


 ナイワー、マジナイワー。


 俺様生徒会長とか、ツンデレ副会長とか、チャラ男書記とか、ヤンチャ会計とか、腹黒鬼畜風紀委員長とか、寡黙運動部長とか、はかな気美人文化部長とか、わんこ幼馴染みに、ホスト系担任。隠しで孤高の(笑)不良君もいたはず。色々盛りすぎな感が否めない。


 ワア、ヨリドリミドリー。


 何ていうか、逆ハーレムですね、わかります。




 嫌でも目立つ彼らを視界におさめる日常に異和を感じたのは、何がきっかけだったか。

 意図せずこの高校に入学して二カ月くらい経った頃。それがクラスメイトだったから、たまたま目に入ったのだろう。

 早い話が、彼女は巷では『前世の記憶持ち傍観主』と言われる存在だったようで、目立つ輩に気付かれたら瞬く間に主人公ちゃん共々気に入られたようだ。


 本人としては目立たずを心がけていたようだが、彼らに対しての意識したような徹底した無関心っぷりがかえって目を引いていた。周囲が嫌でも関心を持つ彼らを避ける様は、本人が思っていた以上に悪目立ちしていたのは周知の事実。まったくもって自業自得、御愁傷様である。


 こういう場合は、適度に彼らに関心のあるふりでもしていればいいのだ。それが偽りだろうとなんだろうと、彼らも表面しか見ないでその他大勢を判断しているんだから。気付くはずはない。

 まあそんな事はどうでもいいか。彼女の存在が気付かれた今となってはホント今更だしね。


 そんなこんなで騒がしい連中を傍目に見つつ、私は高校生活を満喫していた。基本的に、彼らには一般生徒の存在など視界に入ってはいない。周囲の様子に合わせつつ適度に距離をとっていれば、悪目立ちする事もなく日常を過ごすのには問題ないのだ。




 問題は、だ。

 私は元々この世界が『ときめきの時間の中で』という女の子向けの恋愛シミュレーションゲームの世界だと判断していた。だって受験していた学校がそのゲームの舞台である学校名だったから。


 あ、私気が付いたら高校入学前の春休みにトリップしてたんだよね。だからかかわりたくないと思っても今更行く学校を変えられるはずもなく、仕方なく通う事になった。とは言わない。

 仮にも好きだったゲームだ。わくわくしていたに決まっているだろう。だってあの声が生で聴けるのだ。ワクテカするに決まってる。うん、ごめん、私……声フェチなんだ。

 でもまあ実際は彼らの声に多少テンションは上がったものの、その行動にテンションだだ下がったわけですが。


 主人公ちゃんに恋をするのは構わないんだけどさ。何ていうか、彼女しか見ていないあまり周りをおろそかにするっていうか、周囲の迷惑を考えないっていうか。そんな所に正直幻滅しちゃったのだ。

 ゲームではわからない、脇役にもならないその他大勢としての視点。浮かれるのも程々にしろよ!と叫びたくなる事が度々あってさあ。


 今はここも現実だし、彼らだってキャラクターではなく成長途中の人間だと解ってはいる。だけどさ、自分が好意を寄せている相手に対しては特別扱いが当然というような態度が何ていうか、ね?

 周囲の反感もなんのその。彼らはきゃっきゃうふふと周りの迷惑も省みず輝いた日々を送っている。一応学校では役職持ちであるからにはそれなりに優秀だったはずなんだけど。彼らはこんなにも考えなしだったか?

 一学校という狭い社会の中では、何をやっても許されるとでも?


 っと、話がずれた。今は私の愚痴は関係ない。

 問題だ、そう問題。

 私はここは『ときめきの時間の中で』という学園恋愛シミュレーションゲーム、もしくはそれが元になった世界だと思っていたのだが。


 なのに何故、別ゲームである『愛革命狂想曲』の登場人物である彼がいるのでしょうか。




 全年齢対象である『ときめきの時間の中で』は、とある高校での三年間がゲームでの舞台になっている。念願の高校に入学した主人公が己を磨き、攻略キャラ達と交流し、きゃっきゃうふふ的な青春を謳歌する、王道の乙女ゲーである。

 そこには別に、命の危険も世界の危機もありはしない。


 しかし『恋革命狂想曲』は違う。女性向けとはいっても成人指定のゲームで、ルート次第でエロ・グロ・スプラッタがてんこ盛り、命の危機もてんこ盛りときているゲームだった。


 ストーリー的には、女性ばかりが被害に遭う連続殺人事件が起きて、その事件関連で出会う攻略キャラ達と時に命をかけて事件解決を目指すという、推理サスペンスも入ったものだ。

 そんなゲームで、メインを張るような『彼』がこの街にいるなんて。まさかゲームの事件である連続殺人とかここで起きたりするの?

 ……いやー、まさかね。あのゲームでは舞台になる街の名前は出てこなかった。ただの偶然だよね?たまたま彼がここに来ていたに違いない、よね?

 冷や汗が背筋を滑り落ちる中、私はその人の姿を見つめていた。




 もしやリンクだとかクロスオーバーとかそういった感じなのか、この世界。

 いくら元々のゲームの版元が同じだからといっても、これはちょっとカオスすぎんだろう!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ