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¥1:鈍色の成金生活(朝)


「………太様、憂太(ゆうた)様。」

「ん………。」


深い微睡みの中にいた俺を誰かの声が連れ戻した。懐かしい夢を見た気がする………。


「憂太様、朝です。起きて下さい。」

「………。」


あれはいつだったっけ………?駄目だ。眠くて考え………


「憂太様ー………よし、今なら………!」


囁かれた何やら不穏な言葉に、俺の意識は一気に覚醒した。


()った!」


目を開けて最初に見たものは、振り下ろされる腕と手に握られている鋭い何か。


「させるかっ!!!」


咄嗟に枕の下から週刊誌を引っ張り出し、顔の前に突き出す。『ドスッ』という鈍い音と突き刺さる感触、貫通して姿を現した鋭い刃先。


「………おい。」

「あら、憂太様おはようございます。いい朝ですね♪」


そう言ってにこやかに微笑むのは我が家に仕えているメイド、草壁瑠璃(くさかべ るり)。若冠20歳にしてなぜか我が家でメイドをしている。………目の前にサバイバルナイフ突きつけられていい朝なわけあるか。


「何してんだ。」

「なにって、憂太様があまりにも起きないので………いっそ永遠に寝かせてあげようかと。」


アホか!そんなんで殺されてたまるか!


「丁重に断る。」

「そうですか、それは残念です。」


そう言ってようやく俺の目の前にからサバイバルナイフを引っ込めた。残念ってどういうコトだこのやろう。


「それでは旦那様がお待ちですので、食堂の方へお越しください。」


珍しいな。親父が早いなんて。


「ああ、わかった。」


瑠璃はお辞儀をして俺の部屋から出ていく。ドアの向こうから『仕留めそこなった』とか聞こえてきたがいつもの事なので放っておくことにした。










部屋を出て、やたら広い我が家の廊下を渡り食堂へと向かう。俺の斜め後ろでは瑠璃が一定の間隔で着いて来ている。


「憂太様、今後はナイフを使う前に起きて下さいね。私だって憂太様を傷つけたくはないんですから。」

「いや、ナイフ使うなよ………」


あんなん、傷つける程度じゃ済まねえよ。だいたいサバイバルナイフ持ったメイドなんて聞いたことねえ。


「ところで、今日は何か予定入ってるのか?」

「あら、デートのお誘いですか?残念ながら今日もお仕事が………」

「お前じゃねえよ、俺の予定だ!」


瑠璃は不機嫌そうな顔で舌打ちしながら手帳を確認しだし――…


「今日の予定は在りません。存分に遊んできたらいいじゃないですか。………私が仕事してる間に!」


…――そう吐き捨てた。


「長い休暇(クビ)をくれてやろうか?」

「さあ、旦那様がお待ちですよ!行きましょう!」


慌て取り繕う瑠璃。あぁ、なんでコイツ雇ってんだろ………?まあいいか。


頭に浮かぶ考えを一時放棄。取り敢えず、親父の待つ食堂に向かうことにした。












さて、なんで俺が専属のメイドなんか持っているのかというと(正直、思春期の少年としてはいろいろと困る)、無駄に敷地面積の広い我が『朝比奈(あさひな)家』は、今となっては 有名な『(株)朝比奈システムネットワーク』の社長宅であり、つまり俺は社長の息子である。


あれは8年前のコトだ。

親父が宝くじで一発(3億)当てた。それだけでも十分なのだが、それをもとにしてに自分で事業を立ち上げた。それが見事に成功、急成長し順調に傘下を増やして今では『朝比奈グループ』と言えば知らぬ者はいない程になってしまった。お陰で俺も不本意ながら金持ち社会にデビューする事になったわけだ。


「憂太か、おはよう。」


そして俺の目の前にいるのが(株)朝比奈システムネットワークの社長、朝比奈憂一(あさひな ゆういち)


「………ああ。てか、珍しく早いな。」

「まあ、徹夜でオンラインゲームやってたからなぁ。」


――残念ながら俺の父親だ。親父のバカな話は聞き流す事にして俺は親父の向かいに座り並べられている朝食を食べ始めた。


我が家の食堂は、『食堂』と名前はついているが、普通のダイニングキッチンである。立派な厨房や、バカみたいに広いパーティー会場などもあるにはあるが、普段は使わない。貧乏サラリーマン生活が長かったせいか、親父は庶民的な料理や、空間を好む。それなら普通の家で良いじゃねえか!という話だが、そこは見栄やら世間体やらがあるのだとか。


「瑠璃ちゃんも一緒に食べる?」


さっきまでオンラインゲームについて熱く語っていた親父はいつの間にか瑠璃に朝食をとるように促している。


「いえ、結構です。使用人の私が主である旦那様や憂太様と同じ食卓を囲むなどあってはなりません。」

「……とか言いながら何座ってんだ。」

「旦那様が一緒にと仰るのですから仕方ありませんよ♪」


とか言いつつ俺のおかずをつまみやがった。ホントにコイツだけは………!


「ときに憂太。」


瑠璃と視線で火花を散らしていると、唐突に親父が話しかけてきた。視線は瑠璃に合わせたままぶっきらぼうに返事を返す。この勝負、先に目を逸らしたほうの敗けだ………!


「なんだよ。」

「彼女はいるのか?」

「はあ………!?」


唐突な質問に思わず親父の方を向く。しまった、目を逸らしてしまった!隣で瑠璃が見下すような顔で見つめてくる。………このやろう!


「何言い出すんだよ、唐突に。」

「いるのか?いないのか?」

「いないけど………」

「まあ、憂太様のような甲斐性なしに女がいるはずないですからね♪」


くっ、瑠璃のやつ、さらっと毒を吐きやがる。減給するぞこのやろう!


「いないのなら問題ないな。よし、今日は早く帰ってこいよ。大事な話があるから。」

「大事な話?なんだそりゃ。」

「内緒♪」


何が『内緒♪』だよ、気持ち悪い。それにしても一体何の話だろうか………まあいい、帰ってくれば分かる事だ。


「さてと………」


そろそろ学校に行かないと遅刻してしまう。鞄を手に取り立ち上がる。


「それじゃあ、行ってくる。」

「ああ、行ってこい。」

「いってらっしゃいませ。」


………普通、使用人って玄関まで来るもんじゃないの?座って俺のおかず食ってるし。まあいいか。

そんなこんなで俺は割りといつも通りに、この無駄に広い我が家を後にしたのだった。




...

どうも、ぺたです。というわけで一話です。なんだか設定紹介的な話です。


では裏話というかキャラ紹介。

今回は主人公、朝比奈憂太くんです。


名前/朝比奈 憂太

ヨミ/アサヒナ ユウタ

歳/18

性別/♂

身長/182cm

体重/67kg

血液型/A

誕生日/4月25日

髪/淡い茶髪のミディアム

瞳/淡い茶色

職業/高校生


とまあ、こんな感じです。彼は基本的に面倒臭がりで、楽観的な人です。自分に振りかかる出来事も『めんどくせー』とか思いながら『何とかなるだろ』と考えています。


一話はかれの家庭環境メインですね。父親は朝比奈グループの会長で彼は社長子息です(笑)

では、今回はこの辺で。


最後にここまで読んで下さった貴方に最大の感謝を。できれば感想・評価の方、お願いします。


【2008/02/18】

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