表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

きみはいってしまうけれども

作者: 瀬川潮

 夜の砂漠は満天の星で明るい。

 踝まで水が張った石造りの街にきみはいつも一人立っている。生きた女性が石化したように精巧だ。星明かりの中、石の長髪や肌が映える。

 キスを。

 と寄ると、姿を消す。どこかにある排水口に水が引き始め、きみも街も水と一緒に引きずられ小さくなりながら吸いこまれるのだ。

 夜はいつも明るい。

 砂漠を彷徨っていると、やがてまたオアシスの街にたどり着く。昼間にたどり着けないのは蜃気楼のせい。孤独な住人たるきみは、いつもの場所にいつもの格好。

 きみは、美しい。空とそれを鏡のように映す足元の星明かりの中、神秘的だ。瞳は何かを求め焦れている。見とれているとキスしたくなる。

 ゆっくり、ゆっくりと唇を近付けた。まだ水は引かない。

 あとは目蓋をそっと閉じれば触れてしまう所まで近付いたところでだっと走った。

 水が引き始めたのだ。急げ。排水口の場所は分かる。きみと別れたくない。わが身を栓とせん。

 その場所に立ったとき、きみはつんのめった。長髪と服がなびく。私の方を見るとぺこりと一礼し立ち去った。肌が、瑞々しかった。

 私は、どうしたわけか動けない。空と水の星明かりの中、私は、それでも。



   おしまい

 ふらっと、瀨川です。


 他サイトのタイトル企画に出展した旧作品です。瀨川潮♭名義。2008年作品。

 気温の問題がありますが、まあ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ