続く悲劇
イェダーニスの家のすぐ近くに住んでいる、ディリッハと言う、村の外から引越してきた一人暮らしの少女がいた。明るい子で、周囲の人とも人付き合いが良いと評判だった。
行方不明が発覚した日はイェダーニス探しに積極的に加わっていた。ところがディリッハは初日しか探すのを手伝わなかった。後から分かったことだが、次の日からは誰もディリッハに会っていなかった。イェダーニスのことで頭が一杯になっていたため、深く考える人はいなかった。
数日後、さすがに不審に思った隣人が家を訪ねてみると、玄関には鍵がかかっている。呼び掛けても出てこない。家を一周回って見てみると、窓の鍵が開いていた。
更におかしなことに、庭の土には最近掘り返されたような跡があった。数人集めて掘ってみると、生気を失い腐敗したディリッハの姿がそこにあった。七日も埋められていれば微生物の働きで跡形も無く分解されてしまうような土の中で、一目で分かるほど残っていたと言うことは、ここ二、三日で埋められたに違いなかった。
一体誰がこんなことをしたのか。今まで揉め事ですら珍しかったこのナダネス村の人がした事とは、皆思えなかった。そして思いたくもなかった。だが、ここ数日は定期的に販売に来る商人すら来ていない筈だった。
**************************
この二つの事件の話は、当然ナビリの住む家にも伝わってきた。心配に思った母親がナビリに問う。
「ナビリは知らない人に会ったり、怖いことがあったりしてない?」
「無いよ、お母さん」
お人形遊びに夢中になりながらナビリは答えた。服を着せるのにやっきになっている。
「暫くはあんまり外に出ていっちゃ駄目よ。ナビリが居なくなったら、お母さん悲しいからね」
「うん、分かった」
「いい?約束よ」
「うん」
やっと服を着せるのを終えたようで、ナビリは母親の方を向いて元気良く頷いた。