最初の駅 7/18/PM⇔7/19/AM
僕は、始めてきた街なのに、新鮮に感じないところにいた。
どこを見てもビルがそびえ立ち、空は遠く、闇はない。夜になっても全くさめる気配のない熱気は、僕の体からどんどん水分をぬきとり、ついでに気力も奪っていく。
夜になっても人は絶えず外を出歩いていて、僕を、その他大勢の一員にさせる。
僕をライトノベルの主人公に例えるなら、それはきっとモブキャラだろう。きっと主人公にはなれないし、関わることもない。主人公の知らないところで生きたり死んでいたり、物語の中には、描写されることのない存在。
解っているつもりだった。自分はそんな大した存在にはなれないし、そもそもそんな人間が本当に存在するわけがないことくらい。
でも、思い知らされた。あの人に。
出会ったばかりの、ほとんど赤の他人に見透かされた。
僕と言う人間を見透かされた。
僕にはそれが悔しくてならない。
いかに自分がちっぽけでありふているか思い知らされた。
そして、僕はまともな反論が出来なくて逃げ出した。そのことにも腹が立つ。
僕が今いるのは、どこにでもある街の、どこにでもある自販機の横で、壁にもたれていた。
目の前をたくさんの人が通り過ぎていく。たまにちらっとこっちを見ていく人がいるが、見るだけだ。ほとんど全員無視して通り過ぎていく。
今の僕は、背景だった。
時刻は午後11時を回った頃。
僕がなぜこんな所で一人腐っているのか。
それは、数時間前に会ったある男のせいだった。
──数時間前──
「ひなた、一応きいとくけど勝手に家出てきて大丈夫なのか?」
僕とひなたは電車を降り、駅のホームを歩いている。
「大丈夫大丈夫! 今更あの女が私になにか言ってくることなんてないって」
ひなたの家、と言うより親は、少しうちの親と似ている。子供に無関心で、愛情を持っていない。
ただ違うことは、ひなたの親は片親と言うことと、その母親が結構大きなこ起業家と言うことくらいだ。
「でも、何か言っといた方が……。と捜索願い出されるよ。だって僕らの親は普通のことは普通にする人たちなんだから。」
僕の両親にもゆえることだが、ひなたの母親は、家事をサボったりしない。炊事、洗濯、掃除。どれも家政婦を雇えばやらなくてすむし、雇うお金もあるのに、ひなたの母親はそれをしない。
なぜか、僕やひなたの親たちは、家事をさぼることはない。
朝ご飯を作るし、弁当を作るし、洗濯をして、掃除をして、仕事をする。
普通の親がすることを普通にする人たちなのだ。ただ、そこに愛情がないだけで。
多分、彼らはご飯を食べさせ、服を着せ、学校に行かせ、働かせる。それが親の『仕事』だと思っているんだろう。間違ってはいないし、そんな事も出来ないような親が当たり前にいる現代で、僕の親は優れている部類に入るのだろう。
でも、彼らのその行動はすべて、愛情から来るものではないのだ。あくまでも、親の責任として、仕事としてしているにすぎない。
だから、手作りなのに冷凍食品と変わらないし、服も親に選んでもらったとわかるようなダサさもないし、授業参観に来ても恥ずかしさなんて感じない。
僕とひなたはそんな親に育てられた。
「だーいじょーぶだって! それに一応メールは送ったし、キャッシュカードももってきてるから心配ない!」
それでも、ひなたはよく笑い、よく怒り、よく泣く。同じような親に育てられた僕もだ。
僕はひなたのことが好きだし、ひなたも僕のことが好きであってほしいと思っている。
その感情は、紛れもなく、親に教えられたものではなく、ひなたと二人で見つけたものだ。
「そうゆうあんたはどうなの? 親に黙ってきたんでしょ?」
ひなたが聞き返してくる。でも、僕も、そこらへんは抜かりなくすましている。
「うん。大丈夫だよ。今から会う人に色々協力してもらったから」
「それって、電車で言ってたネットで募集した協力者? 危なくない? ネットで知り合った人なんて…」
ひなたが、警戒しているように聞いてくるが、僕は首を横に振る。
「いや、今から会う人は、ネットじゃなく、リアルでの知り合いだから。それに、血縁関係もある」
「血縁関係ってことは……親戚かなにか?」
「うん。今から会う人は僕の母方の叔父なんだ」
読んでくださってありがとうございます!
今週は色々忙しくて、この話が書き上がったのは土曜日、つまり昨日です!
慌てて書いたので、誤字あるかもしれません。
あったら、ご指摘お願いします。
ごめんなさい……。
では、また次回会えることを祈って!