叔父 7/18/PM
「おじさん?」
訝ったようにひなたが呟く。
その声には、あんたの親って親戚付き合いとかしてるんだ、と言うニュアンスが含まれているように聞こえた。
「言いたいことは解るよ。うちの家庭で親戚付き合いがあることが不思議なんだろ?」
ひなたなら、僕の親を《子供の立場から》知っている人なら、そういう反応を示すだろう。
「まあね。あんたのとこの家庭もまともな親戚付き合いなんてしてないって思ってた」
あたしのとこと同じように─と、最後にひなたは付けたした。
「いや僕も無いと思ってたんだよ最近までは」
ひなたの口調に突き放したような、失望したような響きを感じた僕は、慌てて取り繕うように言う。
「この前、学校三日間ほど休んでたことあるでしょ?」
「そうだっけ」
忘れている訳ないだろうに、惚けるひなたに、なぜか僕は焦ってしまう。
「あったんだよ。そのときは、祖母──もちろん母方のだけど、葬式があったから休んで母の地元まで行ったんだけど」
『やあ。君、姉さんの息子さんだろ?』
『……姉さん?』
『あぁ、ごめんごめん。君のお母さんの×××のことだよ』
『………あぁ、母の』
『そうそう。僕はあの人の弟、それもうんと年の離れたね。十歳以上違うよ。僕のところは兄姉が多くてね。一応僕が最後で末っ子になってるけど、その僕と十歳以上も離れてる姉さんですら長女じゃない。たしか三女じゃなかったかな? 長女と次女……君って叔母にあたるって人に会ったことある?』
『ないです。そもそも、今日初めて親戚にあたる人たちに会いました』
『だよねー。うちの家族って、そうゆうのが希薄だから。僕もいるらしい従兄弟や甥っ子姪っ子に会ったこと無いよ。あ、甥っ子はたった今会えたね。どうぞよろしく』
『よろしくお願いします』
『僕のことは………。うーん。なんて呼びたい?』
『…普通に、叔父さんじゃだめなんですか?』
『おいおい、言ったろ? 僕は姉さんとは十歳以上年下なんだ。ってことは僕はまだ二十代。しかも前半だ。まだまだ《おじさん》なんて呼ばれる年齢じゃない』
『じゃあ、なんて呼んでほしいんですか?』
『……そーだなー。言ったよね? 僕末っ子って』
『言いました』
『うんうん、それなんだよ』
『?』
『お兄ちゃん、お姉ちゃん、お兄さん、お姉さん、兄さん、姉さん、兄貴、姉貴。僕はいつでも呼ぶ側でさー。ずっと下の役割だったんだよねー。あと末っ子って甘やかされてるイメージとかあるかもしれないけどさー。僕とこみたいに、子供が多くて、短いスパンで生まれてきた兄姉の末っ子なんて良いとこなしだよ。服は絶えず受け継がれてきたお古だし、玩具は共有だし、お小遣いも少ない。そのくせ、上が大学に行ったりしたら、僕みたいな下の奴らが進学出来なかったりする。末っ子なんていいもんじゃないよまったく』
『はぁ…』
『まあ、そうゆう分けで僕は一番下にいることにもう大変飽きてきてしまった。だから、君にはぜひこう呼んでもらいたいね…… 』
「《劔兄》ってよんでる」
「ふぅん」
興味なさげな反応だが、さっきまでの雰囲気は消えた。
しばらく二人で歩いていると、ふとひなたが言った。
「その人」
「なに?」
「全くあんたの母親に似てないのね」
「……そうだね」
そうだ。だから僕は《彼》を気に入っている。
ギリギリ完成!
読んでくれてありがとうございます!
変な叔父さん登場です!
次回、波乱(笑)の予感!
是非読んでください!
ではまた次回会えることをいのって!